史上最年少名人・七冠という偉業を達成し、無人の荒野を進むかのように歴史を塗り替え続けている藤井聡太竜王・名人。日本将棋連盟が刊行する『令和5年版 将棋年鑑 2023年』の巻頭特集ロングインタビューの取材に際して、藤井竜王・名人の回答からにじみ出た言外のニュアンスからインタビュアーが感じた藤井像に迫ろうというのがこの記事のねらいです。インタビュアーの主観が大いに混じっていますが、どうかお許しください。
まずはインタビューのやり取りをご覧ください。
生まれ変わるとしたら
――生まれ変わるとしたら何になりたいですか?
藤井「(少し考えて)うーん。人間になりたいです」
「生まれ変わるとしたら何になりたいですか?」というのは、「人間以外に生まれ変わるとしたら」ということを前提にしている質問です。 だから、よくある回答としては「鳥になりたい」とか「ハムスターになりたい」とか「貝になりたい」みたいなものになります。そういう生き物の中で藤井先生が何を選ぶのかに興味があったわけですが・・・
まさかの「人間になりたい」。
続いて 藤井「そうですね。自然界は競争が厳しいので生き残る自信がないです(笑)」
・・・いや、現実的!!
この質問って「鳥になって空を飛んでみたい」とか「ナマケモノになってのんびり暮らしたい」とか、そういう想像の遊びみたいなものですけど、藤井先生はリアリストでした。
この話の続きはこうです。
――確かに。人間以外だと生きていくのが大変そうです。生まれてすぐに命の危険にさらされる、ということもありますし。
藤井「可能性としては少なくないですね」
「可能性が高い」じゃなくて、「可能性としては少なくない」。この2重否定がいかにも藤井調です。
ネクタイ
次のテーマは「ネクタイ」です。
――普段のネクタイ選びはご自分でされていますか?
藤井「いや、ネクタイは基本的に母に選んでもらっています。いただいたものが多いです」
この回答で気になるのは後の方の「いただいたものが多いです」というところです。インタビュー中もあれ?っと思ったんですけど、この質問ではネクタイをどうやって入手しているかというのは聞いていないんですよね。聞かれていないことに藤井先生が答えたときは、何かその意味があるはずです。
おそらくですが、これは藤井先生の強がりというか、照れ隠しのようなものだったのではないかと推察します。
つまり、お母さんに選んでもらってるけど、買うところはお母さんに頼っていませんよと。もらったものをお母さんが選んでいるだけですよと。
そんな感じじゃないかと思います。この藤井先生の気持ちは話の続きからも推量できます。
――いくつか候補を出されてその中から選ぶというより、一択で渡される形ですか?
藤井「そうですね。ただ、一択ですけど自分が差し替えを要求することもできるので(笑)」
選んでもらってるけど、チェンジする権利はあるんだぞと。
さらに話は続きます。
――なるほど(笑)。変更する権利はあるんですね。
藤井「はい。権利としては。でも基本的には行使しないで選んでもらったものをつけています」
いや結局つけるんかい(笑)
お母さんに選んでもらってる
→でも、買ってもらってはないしチェンジもできる
→でも、結局選んでもらったものをつけてる
最後に負けを認めちゃうところまで含めて、一連の流れがかわいらしいです。