社会人になると、アルバイトでの収入や親からの仕送りよりも、多い金額の給与が振り込まれます。手持ちのお金が増えると、ついつい使ってしまいたくなるものです。

しかしながら、手取り収入のすべてを使ってしまう癖がついてしまうと、今後の人生の選択肢が狭まるかもしれません。転職や独立、結婚、出産、子どもの進学など、ライフイベントを迎えるたびにまとまった資金が必要となるためです。

では、入社1年目の方は、どのようにお金を貯めれば良いのでしょうか? 今回は、入社1年目から始めると良い貯蓄や投資の方法について解説します。

FPとは: 一人ひとりの将来の夢や目標に対して、お金の面でさまざまな悩みをサポートし、その解決策をアドバイスする専門家。貯蓄や税制、保険、投資、不動産、相続など、お金に関する幅広い知識を有している。

■貯蓄や投資をする目的を考える

貯蓄や投資をする目的を考えずに始めても、きっと長続きしません。また目的もなく漠然と貯蓄や投資を続けても「もっと旅行しておけば良かった」「あの車を所有してみたかった」と、年齢を重ねてから後悔するおそれがあります。 そこで、貯蓄や投資を始めるときは、以下のような目的を考えると良いでしょう。

1.病気・ケガで働けなくなったときや、失業したときの生活費を準備する
2.自動車や不動産(マイホーム、投資用物件)の頭金・購入資金を準備する
3.将来の転職や独立に備えて資金を貯める
4.結婚資金を準備する など

どうしても目的が決まらない方は、【1.】を目的にして、収入が途絶えても半年〜1年間は生活できる金額を貯めてみてはいかがでしょうか。半年〜1年間生活できる貯蓄があれば、不測の事態が起こったとしても、すぐにお金に困ることはないでしょう。

ちなみに、病気やケガで働けなくなったときは健康保険の「傷病手当金」、失業した場合は雇用保険の「基本手当」などの社会保障制度を申請できます。ご自身が利用できる社会保障制度の理解も、少しずつ深めていくと良いでしょう。

なお以下の記事に、若者が貯蓄・投資をすべき理由や、貯蓄に回すお金を確保する方法を解説してありますので、あわせてご一読ください。

こちらもチェック! : 貯蓄が苦手な人は必見!若者が貯蓄を始めるべき理由

■入社1年目の人におすすめの貯蓄・投資

2021年現在、私が入社1年目の方におすすめしたいのは、以下の3種類です。

社内預金
財形貯蓄
つみたてNISA

ひとつずつ解説していきます。

▼社内預金

社内預金とは、簡単に言うと勤務先が従業員の代わりに貯蓄をしてくれる制度です。社内預金がおすすめなのは、給与天引きでお金が貯められるためです。 たとえば、積立額を5万円に設定したとしましょう。額面の給与から社会保険料や税金などと合わせて5万円が天引きされ、残りが口座に振り込まれます。よって社内預金を利用するだけで、収入から貯蓄分を先に差し引き、残りで生活をする「先取り貯蓄」ができるため、貯蓄が苦手な人でもお金を貯まりやすいです。

ただし、すべての企業が社内預金を導入しているわけではありません。また企業を退職すると、社内預金は解約となる点に注意が必要です。

預けたお金には、企業が定める金利をもとに計算された「利息」がつきます。ただし利息には、20.315%の税金が課せられるため、すべて自分のものになるわけではありません。

▼財形貯蓄

財形貯蓄も、社内預金と同じく給与天引きでお金を積み立てていく制度であるため「先取り貯蓄」が可能です。

一方で、社内預金は企業が積立金を管理するのに対し、財形貯蓄は銀行をはじめとした金融機関が積立金を管理する点が異なります。また財形貯蓄で積み立てたお金を引き出すには、申請が必要であり簡単には引き出せないため、お金が貯まっていきやすいです。

財形貯蓄には以下の3種類があり、お金を積み立てる目的に応じたものを選べます。

一般財形貯蓄:利用目的に制限がない財形貯蓄
財形住宅貯蓄:住宅の購入や新築、リフォーム資金を積み立てるための財形貯蓄
財形年金貯蓄:老後の年金を積み立てるための財形貯蓄

財形貯蓄も、預けたお金に利息がついて殖えていきます。また財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は、合算して元利合計で550万円までの利息に対して税金がかかりません。

なお、一般財形貯蓄は原則として3年以上、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は原則として5年以上、積み立てる必要があります。

▼つみたてNISA

つみたてNISAとは、年間40万円(毎月33,333円)までの投資で得た利益が、最長20年にわたって非課税となる制度です。

投資で得た利益は、預貯金や社内預金などの利息と同じく、20.315%の税金が課税されます。つみたてNISAであれば、40万円×20=800万円までの投資で得た利益については、税金がかからないのです。

つみたてNISAで選べるのは、金融庁の審査に通過した投資信託やETFなどの金融商品。原則として購入時の手数料が無料であり、保有しているあいだに支払う手数料(信託報酬)も安価なものがそろっているため、投資の初心者でも運用先を選びやすいです。

また、運用の成果次第では投資した金額よりも大きく増やせるのも、つみたてNISA のメリットです。10年や20年など、長期的に資産形成をしていきたい方はつみたてNISA から始めると良いでしょう。

ただし厳選された商品に投資できるとはいえ、元本割れするリスクはあります。「3年後に転職するための資金を貯める」や「5年後に独立・開業するための資金を貯める」など、支出のタイミングがある程度決まっている資金を準備するのには不向きでしょう。

つみたてNISAを始めるには、証券会社や銀行などの金融機関で証券口座を開く必要があります。金融商品のラインナップや手数料などは金融機関によって異なるため、複数を比較したうえで口座の開設先を選びましょう。

投資信託の選び方やつみたてNISAの内容については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご一読ください。

こちらもチェック! : 初心者におすすめの投資方法とは? 投資信託の始め方とポイントを解説

■自己投資に充てるのも方法のひとつ

口座にお金を積み立てたり、金融商品を購入したりするだけでなく、自分自身を高めるために自己投資をするのも方法のひとつです。

「世界旅行をして知見を深める」「セミナーに参加する」「書籍や教材を購入する」「尊敬する経営者・ビジネスパーソンと食事をする」など、自己投資の方法は人それぞれです。

これから人生100年時代に突入するとも言われているなか、自己投資をして稼ぐ能力を高める必要性は高いと考えられます。口座にお金を積み立てるだけではなく、効果的にお金を使って自分自身を高めてみてはいかがでしょうか。