連載「副業でやらかしまして。」では、大金持ちになるという野望を持ったフリーター「しんま」氏が、株や投資、せどりなどの副業でやらかした経験を語ります。果たして、しんま氏が大金持ちになる日は来るのでしょうか!?(毎週水曜更新)
「働かずに暮らしたい。」
きっと誰もが一度はそんな願望を抱いたことあるんじゃないでしょうか。少なくとも僕はあります。というか毎日そう思いながら、バイト先でレジを打ち、お客様から受け取る福澤諭吉を見て、「この金どうにかして自分のものにならないかな~」なんていうふざけた妄想をしてます。
そんな意識の低い姿勢でバイトをしていた僕ですが、ある友人がそんな僕の悩みを解決してくれるすばらしい提案をしてくれました。その友人というのは、正社員としてデザイナーの仕事をしながらFXで投資をしている人。彼が、「FXでトルコリラにスワップ投資をしよう! 」と、言ってきたのです。
「トルコリラ」ってどういう通貨?
実は新興国のトルコはとても金利が高い国として有名で、2016年8月時点の政策金利は何と7.50%という高金利でした。つまり、トルコの通貨(トルコリラ)に投資をすれば、単純計算で年間7.50%のリターンが得られるということ。日本の政策金利が0.10%ですから、トルコの金利がいかに高いかがよくわかります。
しかもFXで投資をすればレバレッジが効きますので、小資本でも大きなリターンが望めます。当時の(2015年8月)FX会社のレートだと、トルコリラを1万通貨買うと、1日当たり120円ほどのスワップがつきました。持ってるだけで1日120円の収入が得られるというのは実に魅力的な話です。しかも1万通貨を買うに当たって必要な証拠金はわずか1万8,000円程度でした。
友人は言います。
「しかも今トルコリラは歴史的低水準の価格だから、買っておくなら今しかないよ!」
彼の言う通り、確かにそのときのトルコリラはとても低水準のレートで、史上最安値の40円台よりちょっと上の41円くらいで推移していました。
なぜトルコリラがそんなに下がっていたのかというと、2015年の8月に「チャイナショック」と呼ばれた中国の景気悪化から「世界同時株安」が引き起こされ、株式や為替はそろいもそろって大暴落していたからです。そのためトルコリラも大きくレートが下がっていたのです。
普通に考えて、そんな暴落相場で、レートが史上最安値に迫るまで下落している通貨を買うこと自体ハイリスクなのですが、あろうことか僕は、「え、安! これめっちゃチャンスじゃね? 」と、逆張り思考全開の解釈をし、早速トルコリラへの投資をすることを決断してしまったのです。相変わらず脳内お花畑です(笑)。
できるだけ多くのスワップが欲しかったので、僕はいきなり4万通貨も買うという行動に出ます。4万通貨を買えば、1日480円のスワップがつき、月間にして1万4,400円のスワップが自分の元に転がり込んできます。
「ふっふっふ。今はたかが月1万4,400円程度の収入しかないけど、どんどん買い増せば、働かずにこのスワップ収入だけで生活できるぞ……!」
こんな調子で、果たしてトルコリラで働かずに暮らす作戦は無事成功するのでしょうか?
4万通貨の投資で1万4,400円のスワップを手にするも大暴落
そんなこんなでトルコリラに投資をして1カ月が経過。待ち望んでいた1万4,400円のスワップもきちんともらいました。働かずに1万円以上の不労所得収入です。普通ならここで喜びをあらわにするものかもしれませんが、しかし僕は全くそのことに喜べませんでした。なぜなら投資してから、いきなりのトルコリラ暴落に見舞われたからです。
当時の為替相場は、チャイナショックの影響で激しい乱高下を見せていました。40円台後半で推移していたトルコリラはもろにその余波を食らい、一時39円台まで下落。よって、トルコリラに投資していきなり4万3,000円の含み損です。これにはかなりへこみました。
トルコ自体もともと情勢が不安定な国ですし、ただでさえチャイナショックの影響で経済が荒れてるときに、トルコリラが暴落しないわけがありませんよね。こんなときに新興国のトルコの通貨を買うなんて、まさに無謀以外の何物でもありません。
僕は、そんな目の前の苦しい状況から逃れるために、「今が底だしそのうち下落も止まるっしょ」と、開き直りともとれる決意を固めて必死に暴落に耐えることにしたのです。
「大丈夫、ここまで下落したんだからそろそろ上がるはずだ!」
必死にそう言い聞かせる毎日でしたが、そんな願いもむなしくトルコリラは毎日下落していきました。自分の他にトルコリラに投資していた投資家たちも次々と損切りをしていきました。「トルコリラに投資をしたのが人生最大の失敗だった」と、書き残し、そこでブログ更新が途絶えた人もいたぐらいです。いくら為替差損は気にしないと言っても、さすがに含み損が数十万円に近づけば冷静ではいられないし、何より他のトルコリラの投資家たちが次々と撤退をしていく姿を見ると、精神的にかなり追い詰められるものです。
それでも暴落は止まりません。とうとうトルコリラは39円すら割り込み38円台後半まで暴落しました。このときの含み損は8万円を超え、あともうちょっとで含み損が10万円を超えるかどうかという瀬戸際でした。さすがにここまでの下げは想定しておらず、「含み損が10万円を超えたら損切りしよう」と、心に誓いました。
バイト先の後輩たちに、「いいか、金持ちになるためには不労所得収入を増やさなきゃいけないんだ。え、僕? ああ、僕は今ちょっとトルコに投資していて毎月何もせずに1万4400円の収入を得ているよ。〇〇君もお金が欲しかったらこういう風に賢く資産を運用していかないとね」と、偉そうに講釈を垂れていたことを、ただただ猛反省しました。
40円台に回復したところで損切り決断
それからトルコリラは38円後半から39円前半をうろうろしており、ちょっとでも下落しようものならあっという間に損切りゾーンに到達してしまうという状況でした。もう毎日気が気じゃありませんでしたね。
「神様本当にすいませんでした! 高金利に引かれて何も考えずにトルコリラを買った僕がバカでした! もう、もうこんな無謀な投資はしないので今回ばかりはどうか助けてください!」
もう僕にはただ祈ることしかできなかったのです。しかしそんな祈りが神様に通じたのか、徐々にトルコリラの下落は止まり始めました。一時は38円まで暴落していたのに、とうとう40円台まで回復したのです。
「よ、よかった!」
一刻も早くこんな恐ろしい通貨から逃げ出したかった僕は、迷うことなくそこで損切りを決断。1万7,000円の損失を確定させました。一時は含み損が9万円を超えており、もう駄目だと思っていたところ、1万7,000円程度の損失で済んだのはまさに幸運だと思います。手にしたスワップ収入を考えれば、プラマイ0の収支です。
毎日暴落するトルコリラに胃をキリキリさせていたものですから、負け惜しみではなく、損切りしたときは心底ホッとしたものです。
「トルコリラへの投資」で学んだこと
なぜ僕がこんな暴落に見舞われたのか理由は明白です。それは、もともとトルコという国自体が、政治不安や地学的リスクがあり不安定であったということ。トルコみたいな不安定な新興国の通貨は、チャイナショックなど経済が荒れる要因が発生すると、真っ先に売られるので暴落しやすいのです。
つまり僕は、暴落する条件が整いまくってるトルコリラに対して、「安いから」という理由だけでいきなり4万円通貨も投資したために、地獄の恐怖を味わったのです。こんな無鉄砲な投資手法で、よくもまあプラマイ0で逃げられたものだと我ながら感心します(笑)。
ちなみにですが、僕にトルコリラを勧めた友人はどうなったかというと、僕よりはるかに悲惨な目に遭っていました。
トルコリラが38円台に到達したとき、友人は強制ロスカットに遭ったらしく、何と90万円以上の損失を負っていたのです。しかも資産の一部は消費者金融からの借金で成り立っているらしく、まさに人生の窮地に立たされていると言っても過言ではない状況でした。
自分自身もトルコリラで地獄の恐怖を味わい、友人は借金までして投資した結果90万円の損失を計上。何というか、もう二度とトルコリラには手を出さないという決意が固まりました(笑)。
執筆者プロフィール
しんま
3つのバイトを掛け持ちするフリーター。お金持ちになるためにFXやせどりなど様々な副業に手を出すが全て失敗。年収の半分は副業に消えているんだとか。ブログ「しんまは今日も損切りっ」、Twitterはコチラ。
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