筆者はJRの駅員として働いていた経験があるため、きっぷについて色々な質問を頻繁にされる。そういう質問のひとつに、「金券ショップのきっぷはお得なのか」ということがある。今回は、その実情を紹介したい。
JRの窓口で発売されるきっぷは2種類
まず、金券ショップで販売されているきっぷのことを説明する前に、JRの駅窓口で発売されているきっぷについて少し触れておきたい。窓口では、大きく分けて2種類のきっぷが販売されている。ひとつは、みなさんが日頃よく目にする「乗車券類」だ。少し難しい話になるが、旅客営業規則というものに則り、あらかじめ定められた正規の金額を支払い、購入するものである。駅の券売機で購入する東京駅から新宿駅の200円のきっぷであっても、乗車券類だ。
もうひとつは「特別企画乗車券」というもの。「トクトクきっぷ」とも呼ばれている。これは、通常の旅客営業規則(ルール)の体系とは切り離して作られたもので、正規の金額より安くに購入できるきっぷである。ただ、ルールが商品ごとに設けられているため制約はあるが、活用すれば安く旅ができる。
「特別企画乗車券」はどのぐらいお得?
そんな特別企画乗車券のひとつに「新幹線回数券」がある。例えば、東京=新大阪間の新幹線回数券(普通車指定席用)は、1冊6枚綴りで8万2,140円で販売されている。つまり、片道あたり1万3,690円の計算になる。
通常、東京=新大阪間は片道1万4,450円(通常期・のぞみ利用)なので、6枚を全て使いきれれば、総額で4,560円も安く旅をすることができるのだ。3カ月の間に頻繁に新幹線に乗るビジネスマンや、家族連れやグループにはうれしいきっぷだ。大人3人で新幹線に乗れば、1往復するだけでも使いきれる。
ただし、新幹線回数券にもルールがある。有効期限は3カ月であり、旧盆(8月11日~20日)をはじめ、年末年始(12月28日~1月6日)、ゴールデンウィーク(4月27日~5月6日)には利用できない。
この「特別企画乗車券」には様々な商品があるため、知られていないことも実は多い。東海道新幹線以外にも、もちろん、割安に旅ができるきっぷがあるので、JR各社のホームページや時刻表をあらかじめ確認するのがいいだろう。
金券ショップ=回数券のバラ売り
そして、「金券ショップのきっぷ」というのは、新幹線回数券など、JRが発売している回数券がバラ売りされているものだ。金券ショップでは基本、新幹線回数券などを使いきれなかった人からきっぷを買い取り、必要な人に売っている。つまり、バラ売りされているため、1枚から購入できる。
店により異なるが、駅窓口で購入する新幹線回数券の1枚あたりの値段よりも、少し安い値段に設定されていることが多い。例えば、定価の95%で買い取り、98%で売るという具合にして、差額を店の利益にしている。
JR新橋駅前の「ニュー新橋ビル」などに固まっている金券ショップの相場では、東京=新大阪間は1万3,000円前後というところ。JRの窓口での販売価格が1枚あたり1万3,690円であることを念頭に置いておけば、「このぐらいの値段なら、安いと言えるかな」と目安をつけることができる。
しかし、金券ショップも自宅から近いところにあればいいが、出向く時間や手間、交通費のことを考えると、近くのJR駅の窓口で購入する方が便利なことも多い。また、金券ショップで購入したものは、万が一使わなくなったとしても、駅窓口では払い戻しができない。それらを踏まえた上で、その時々の都合に合わせて、どちらで購入するか考えるといい。インターネット通販で販売している金券ショップもあるので、利用するのも手だ。
「交通機関だけの旅行ツアー」にも注目を
乗車券類・特別企画乗車券と金券ショップの話をしたが、選択肢は他にもある。旅行代理店でのきっぷ購入だ。もちろん大手を中心に、JRやその他の鉄道の乗車券類や特別企画乗車券を扱っている旅行代理店も多いが、「交通機関だけの旅行ツアー」にも着目したい。JR東海ツアーズや、JTBの窓口で取り扱っている「ぷらっとこだま」がその例。大変人気のある商品だ。
「ぷらっとこだま」は、東海道新幹線「こだま」利用で東京=新大阪間の片道が1万500円。相当な金額が割り引かれることになる。また、ワンドリンクサービスや、1,500円プラスすれば、グリーン車に乗ることもできる。通常の乗車券類とは別のルールでつくられており、利用者は「添乗員なしの片道ツアーに参加している」という形になる。ただし、必ず東海道新幹線の改札口を通って乗り降りしなければならない(他社との連絡改札口は通れない)などの制約はあるのでご注意を。
出張や旅行の際はきっぷをどこで買うのか? その答えは「駅の窓口だけではない」と知っておくと、便利かつお得な旅&出張ができることだろう。
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