インターネット予約&IC乗車のメリットと題して、エクスプレス予約とスマートEXの違いモバイルSuica特急券東海道・山陽新幹線を安く快適に使う方法と、お得な利用方法を紹介してきた。だが、「安いからには、理由がある」ということには、留意する必要があるだろう。

  • お得な感じがあるインターネット予約&IC乗車だが、在来線と乗り継ぐ場合は注意が必要だ

    お得な感じがあるインターネット予約&IC乗車だが、在来線と乗り継ぐ場合は注意が必要だ

基本は「新幹線区間のみ」のサービス

そもそも、「エクスプレス予約」「スマートEX」「モバイルSuica特急券」とも、新幹線の駅相互間のみで利用できるサービスである。つまり、新幹線と在来線を乗り継ぐ場合、在来線区間の運賃は別途、支払う必要があるのだ。「東京都区内発」や「大阪市内行き」といった、都区内・特定市内発着の特例も適用されない

例えば、東京から東北新幹線で仙台へ行き、在来線の東北本線に乗り換えて、仙台市内の駅である東仙台まで行く場合を考えてみよう。「モバイルSuica特急券」の値段は9,970円となるが、仙台~東仙台間の運賃185円(ICカード利用の運賃)が別途必要になる。

  • 仙台駅で接続している東北本線の列車

    仙台駅で接続している東北本線の列車

乗り換え自体は難しくない

ただ、新幹線と在来線の乗り換え改札口を通って乗り継ぐ方法自体は、仙台~東仙台間のように、在来線の乗車区間が交通系ICカードが利用できるエリア内なら、さほど難しくはない。

Suicaなどの交通系ICカードを使うサービスである「モバイルSuica特急券」「スマートEX」の場合は、在来線の改札口、新幹線と在来線の乗り換え改札口で、それぞれ自動改札機にタッチをすればいい。在来線区間の運賃は、カード内にチャージされた額から自動的に引き落とされる。

一方、「エクスプレス予約」でEX-ICカードを利用している場合は、乗り換え改札口では、他の交通系ICカードと2枚重ねてタッチする。在来線駅の改札口では、その交通系ICカードで乗り降りすれば、やはり運賃は自動的に引き落とされる。

在来線特急との乗継割引は適用されない

ただし、いずれのIC乗車サービスも、新幹線と在来線の特急列車と乗り継ぐ場合、在来線の特急料金が半額になる「乗継割引」は適用されない。

例えば、新大阪から山陽新幹線「のぞみ」に乗り、岡山で特急「やくも」に乗り継いで出雲市まで行く場合だ。紙の乗車券・特急券を買えば、運賃6,480円に新幹線「のぞみ」の特急料金3,210円(通常期)、そして、「やくも」の特急料金2,900円が乗継割引で半額の1,450円となって、旅費の合計は1万1,140円となる。

  • 岡山で山陽新幹線と接続し、出雲市まで走る在来線の特急「やくも」

    岡山で山陽新幹線と接続し、出雲市まで走る在来線の特急「やくも」

これに対し、仮に新大阪~岡山間で「エクスプレス予約」を利用したとすると、値段は5,500円となる。新幹線区間と在来線区間は別計算という原則により、岡山~出雲市間は別途、乗車券・特急券が必要になり、運賃は4,000円、特急料金も乗継割引が適用されず2,900円となる。その結果、旅費の合計は1万2,400円となって、かえって高くつく。

在来線と乗り継ぐなら「e特急券」

このように、新幹線と在来線特急を乗り継ぐと不利になることも多いインターネット予約&IC乗車だが、在来線特急と直接乗り継がない場合だと、「エクスプレス予約」では少々、話が違ってくる。「e特急券」と言い、駅で乗車前に紙の特急券と引き換える必要があるが、特急料金だけの割引サービスがあるのだ。

例えば、東京~広島間では、通常期7,420円の特急料金が「e特急券」利用だと6,000円と、1,420円安くなる。これに乗車区間の乗車券を別途購入し、組み合わせてから新幹線に乗ればいい。

これがどうお得かと言うと、東京都区内の駅、例えば新宿から在来線で東京へ行き、新幹線で広島まで行くとしよう。さらに、在来線に乗り換えて、広島市内の、例えば可部まで行くなどというケースでは、在来線区間の運賃を別途支払う必要がなくなる。新宿~可部間は、東京都区内から広島市内行きの乗車券(1万1,660円)で乗車できるのだ。

  • 広島駅に停車中の在来線の普通列車。「e特急券」利用で新幹線と在来線を乗り継ぐと、安くなる場合もある

    広島駅に停車中の在来線の普通列車。「e特急券」利用で新幹線と在来線を乗り継ぐと、安くなる場合もある

運賃1万1,660円+e特急券6,000円=1万7,660円という額は、東京~広島間を「エクスプレス予約」で乗車した場合の値段1万7,660円と全く同額。新宿~東京間がICカードで194円、広島~可部間が同じく320円だから、e特急券の方が514円安い。在来線の利用距離や区間によっては、もっとお得になる場合もある。一度、計算してみる価値はあるだろう。

※写真はイメージであり、本文とは関係ありません。

筆者プロフィール: 土屋武之

1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「まるまる大阪環状線めぐり」(交通新聞社)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科」(JTBパブリッシング)など。