JR東海とJR西日本がサービス展開する、新幹線のインターネット予約とIC乗車サービス、チケットレスサービスである「エクスプレス予約」などに対して、東北、上越、北陸などの新幹線を持つJR東日本も、同種のサービスを実施している。インターネット経由で新幹線の座席を予約し、きっぷを購入することなく乗車できるという点では同じだが、利用方法などはかなり異なる。今回は、そのJR東日本のサービス「モバイルSuica特急券」を紹介してみよう。

  • 「モバイルSuica特急券」は東北、上越、北陸などの各新幹線の停車駅相互間で利用できる

    「モバイルSuica特急券」は東北、上越、北陸などの各新幹線の停車駅相互間で利用できる

「モバイルSuica」のサービスのひとつ

まず前提として、モバイルSuica特急券はモバイルSuicaのサービスのうちのひとつだ。モバイルSuicaは、スマートフォンやフィーチャーフォンなどの携帯情報端末をSuicaとして利用できるサービス。アプリをダウンロードした上で、会員登録する。チャージはクレジットカード、もしくは銀行口座からできる。モバイルSuicaとしての会費は、年1,030円(税込)必要である。

モバイルSuica特急券は、モバイルSuica入会後に無料の利用登録をすれば使えるようになる。新幹線が利用できる区間は、JR東日本の東北、上越、北陸、秋田、山形の各新幹線の他、JR北海道の北海道新幹線、JR西日本の北陸新幹線上越妙高~金沢間だ。新幹線の各停車駅相互間に限って使え、在来線とまたがって乗車する場合は、在来線区間は別途、乗車券の購入や精算が必要となる。

無割引の自由席より指定席が割安

モバイルSuica特急券の大きなメリットが、大きな割引だ。割引のない通常の運賃+自由席特急券の額より安く、普通車の指定席が利用できる。モバイルSuica特急券の値段は、乗車券と特急券をセットにしたもの。年間を通じて変動はない。

例えば、東京~仙台間だと運賃・自由席特急料金の合計額は1万370円だが、モバイルSuica特急券を利用すると指定席でも9,970円と400円安い。また、全車指定席で所要時間が短いが、特急料金が割高な「はやぶさ」「こまち」に乗車する場合でも、モバイルSuica特急券では同額。そのため、東京~仙台間1万1,200円(通常期)と比べれば、1,230円もお得になる。つまり、年会費を払っても、東京~仙台間で「はやぶさ」に片道1回乗れば元は取れる。

  • 北陸新幹線の普通車車内。利用内容を確認して、自席につく

    北陸新幹線の普通車車内。利用内容を確認して、自席につく

購入したモバイルSuica特急券の代金は、登録したクレジットカードへ別途請求される。モバイルSuicaにチャージされた金額からの引き落としではない。

予約の変更は何度でも可能

モバイルSuica特急券の購入は、携帯情報端末からのみで可能。パソコンからは購入できない。また、購入できるのは、携帯情報端末1台(モバイルSuica1枚)に対して、大人ひとり分だけである。ふたり以上での利用や、小児の利用はできない。予約の変更は、予約した列車の発車時刻前なら、何度でも手数料なしで可能だ。

  • モバイルSuica特急券の利用の際は、携帯情報端末に利用内容が表示される

    モバイルSuica特急券の利用の際は、携帯情報端末に利用内容が表示される

なお、乗車する際に注意が必要なのは、購入したモバイルSuica特急券を乗車駅の改札口を通る前に、「受け取り(ダウンロード)」しなければならないこと。携帯情報端末にダウンロードできるモバイルSuica特急券は1枚だけで、それ以外のものは全て、センターのモバイルSuicaのサーバー内に保存されている。

モバイルSuica特急券を携帯情報端末内に受け取ると、その端末内にあったモバイルSuica特急券は、使用前、使用済みを問わず、自動的にサーバーへ預け入れられてしまう(上書きされて消えるわけではない)。使用済みならいいが、例えば往復新幹線を利用するとして、行きのモバイルSuica特急券をまだ使わない内に、帰りのモバイルSuica特急券を受け取ってしまうと、そのままでは行きのモバイルSuica特急券は利用できない。行きの分を再度、受け取る操作をしなければならなくなるのだ。

  • JR東日本の新幹線駅にある自動改札機。これに携帯情報端末をタッチして乗車する

    JR東日本の新幹線駅にある自動改札機。これに携帯情報端末をタッチして乗車する

新幹線に乗車する際は、駅の自動改札機にタッチすればいい。列車名や発車時刻、席番などは、携帯情報端末にダウンロードされた情報を見て確認することになる。購入、変更をした場合は、登録したアドレス宛にその都度、案内のeメールが送られてきて、それが予約・購入の控えになるので、それを見ても確認することができる。現在、各新幹線では自動改札機を通れば、車内改札は省略されるので、列車内で情報端末内を操作する必要はない。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

筆者プロフィール: 土屋武之

1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「まるまる大阪環状線めぐり」(交通新聞社)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科」(JTBパブリッシング)など。