新幹線をお得に便利に利用する方法を紹介する当連載。今回は、これから年末年始にかけて気になる、繁忙期の新幹線や在来線特急列車の指定席を確保する方法について紹介したい。基本的な決まりはJR各社共通で、新幹線と在来線の区別もない。

  • 年末年始など、新幹線はどの列車も大いに混雑する(写真はイメージ)

基本的なJRの指定席特急券の確保方法

まず、最も基本的な指定席確保方法は「発売日に窓口で購入する」ということだ。指定席の発売日は、利用する列車が始発駅を発車する日の1カ月前(前月の同じ日)の午前10時から。駅の窓口や旅行会社の窓口で一斉に発売となる。1月1日の指定席の発売日は12月1日の朝10時だ。

1カ月前に同一日がない場合もある。たとえば12月31日の指定席を購入したい場合、11月は30日までしかない。この場合は列車が出発する日と同月の1日に発売となる。つまり、12月1日の朝10時に発売される。

筆者がJRの駅員だった頃、1カ月前の朝10時ちょうどに発券することを、社内では「10時打ち」と呼んでおり、時報を聞きながら発券作業を行っていた。駅員が操作するのは、マルスと呼ばれる座席指定システムの端末だ。これに列車の区間や日付などの情報を入力し、最後に発信ボタンを押せば発券されるしくみになっている。この、発信ボタンを押すタイミングが重要なのだ。人気の列車などは、数秒で満席になってしまうため、10時の時報の音とともに発信ボタンを押しても満席になってしまうことがあった。

  • 繁忙期になると、新幹線の列車は軒並み満席となる(写真はイメージ)

ということは、駅員の入力作業があるため、10時から窓口に並んでも出遅れる。10時より前に窓口に行き、並ぶことが大切になる。年末年始の指定席の発売日など、朝7時頃からすでに窓口に数人が並んでいるという光景を何度も目にした。

インターネット予約の事前受付サービス

そうは言っても、発売日が平日で、朝から窓口に並べないという人も多いと思う。そういった場合は、インターネット予約を活用するのが一番だろう。近年では、エクスプレス予約などのインターネット予約サービスが普及している。JR東海の「エクスプレス予約」、JR東日本の「えきねっと」はともに窓口と同じ1カ月前の10時から予約開始。駅員が行っている「10時打ち」を自ら行うのである。ただし、時報を聞きながらパソコンを操作しなくても良い方法がある。

筆者の駅員時代には、年末年始やお盆の指定席の発売日が近づくと、指定席の事前申込みを受け付けていた。あらかじめ申込み用紙に希望の列車を記入し、発売日より前に駅で申し込む。駅員は申込み順に発売日の朝10時から順番に端末を操作し、発券していく。その場で予約できるわけではないし、申込み順が後だと操作が10時を大きく回り、希望の指定席が取れないこともある。それでも窓口に並ぶ必要がないため、人気のサービスだった。しかしこのサービスは現在、インターネットに移行したこともあり、実施していない駅が大半となってしまった。

  • 指定席を確保するなら乗車日1カ月前の発売日にみどりの窓口へ出向くか、インターネット予約に取り組むのが基本(写真はイメージ)

そのインターネット予約での事前受付について、JR東日本の「えきねっと」を例に紹介したい。「えきねっと」の事前受付サービスは、指定席発売日のさらに1週間前(同じ曜日)の午前5時30分から乗車日1カ月前の午前9時54分まで、パソコンやスマートフォンから申込みを行える。たとえば12月29日の指定席なら、11月29日のさらに1週間前、11月22日から申込みが可能だ。なお、受付終了時刻などに若干の差があるが、「エクスプレス予約」にも同種のサービスがある。

こちらも紙の申込書があったアナログ時代と同様、予約自体は発売日の朝10時から一斉に始まるため、指定席が取れないこともあるのだが、このサービスを使うことで発売日に駅窓口などで並ぶ必要がなくなる。予約できたかどうか、結果はメールでも通知されるし、もちろんサイト上でも確認できる。

指定席が取れないときは根気強く再挑戦

これまで紹介した方法を実践しても、希望の指定席が確保できないこともある。12月も半ばにさしかかった。年末年始の指定席が取れず、焦っている人もいるだろう。しかし、諦めるのはまだ早い。

キャンセルが出て指定席が取れることも、よくあること。列車の指定席は、コンサートなどと違って、払戻しも変更も可能だからだ。予定が変わった人の席がコンピュータへ戻され、次の買い手を待つのである。

発売日に早朝から並んだが指定席が取れず、嘆き悲しむ人も見てきたが、出発の1週間前に「もう遅いよね、指定席取れないかなぁ」と言いながら、ふらっと駅に来て運良く取れてしまう人もたくさん見てきた。こればかりは運としか言いようがないが、根気強く窓口に通えば、キャンセルが出て取れることがある。諦めないでほしい。

  • 繁忙期はJR各社も新幹線を最大限増発して対応する(写真はイメージ)

そんなに窓口に何度も通えないという人も多いだろう。そういう場合こそ、時間があるときに、インターネット予約を何度でも試みることだ。新幹線は列車の本数も多いため、繁忙期のピークであっても1~2席なら必ず空席が出てくると思っていて間違いない。希望の時間帯から少しずらすことで、指定席が取れることもある。

最終手段!? 自由席を確保する方法も

最後に、それでも指定席が取れなかったときのことを紹介したい。これは始発駅から乗車する場合のみできる、座れる可能性の高い方法だが、自由席に並ぶのだ。もちろん列車が入線してくる前にホームに並ぶこと。新幹線などは、数本見送れば席を確保できることが多いだろう。ホームの状況を見て、どの列車に並ぶかを決めよう。東海道・山陽新幹線だと、自由席の両数が多い「ひかり」「こだま」を最初から狙うのも手だ。

  • 指定席が取れなかった場合は、自由席に並ぶことになる(写真はイメージ)

  • 自由席が多い「ひかり」などを最初から狙うのもいい(写真はイメージ)

  • 新幹線の先頭車は、座席数が少ないので注意(写真はイメージ)

なお、新幹線の座席数は、1両あたり80~100席ある。並んでいる人数を慎重に数えれば、座れるかどうかは大体見当がつく。ただし、1号車などの先頭車は避けること。運転台がある分、座席の数が少ないからだ。東海道・山陽新幹線の主力車両N700系の場合で65~75席。東北・北海道新幹線E5・H5系の1号車などは29席しかない。大まかな傾向としてだが、各新幹線とも奇数号車にトイレ・洗面所といった設備があるため、座席の数が少ない。編成中間の、偶数号車の列に並ぼう。

さまざまな方法で、指定席を確保する方法を紹介してきたが、やはり最後は「根気」が勝つのかもしれない。年末年始はぜひ座って出かけてほしい。

※写真はイメージ。本文とは関係ありません。

筆者プロフィール: 古谷あつみ(鉄道タレント・松竹芸能所属)

小学生の頃、社会見学で近くにある車両基地へ行き、特急電車の運転台に上げてもらったことがきっかけで、根っからの鉄道好きとなる。学校卒業後は新幹線の車内販売員、JR西日本の駅員として働く。その経験から、きっぷのルールや窓口業務には精通している。現在はタレント活動のほか、公立高校などで講師も務めている。2015年には「東洋経済オンライン」でライター・デビューし、旅行サイト「ぐるたび」などでも執筆活動中。泉佐野市PR大使。