新幹線の車内で使えるWi-Fiは?

いまや、インターネットがなければ日常生活や業務が成り立たないほどの「ネット社会」である。自宅や会社のみならず、公共施設にもWi-Fiサービスが求められている。移動の際に利用する公共交通機関もそれは同じで、鉄道の列車をはじめ、飛行機や高速バスなどにもWi-Fiサービスは広がっている。

  • これまで東海道新幹線内だけで利用できたWi-Fiサービスが、山陽・九州新幹線の車内でも利用できるようになる(写真はイメージ)

誰でも利用できるWi-Fi(公衆無線LAN)サービスといっても、大きく分けて2種類あることはすでにご存じだろう。ひとつは公衆無線LAN事業者と契約し、使用料を支払って利用するもの(以下「有料Wi-Fi」)。スマートフォンなどを契約する際、契約内容に含まれていることが多い。

もうひとつが、いわゆる「無料Wi-Fi」。駅や飲食店など不特定多数の一般消費者が訪れる場所や、あるいは自治体などがサービス充実のために設置し、メールアドレスやSNSアカウントを使って登録することで、使用料を払わずに利用できるというものだ。

駅では無料Wi-Fiが利用可能

これまでにも、駅構内ではJR各社が提供する無料Wi-Fiサービスを利用できた。「JR-EAST FREE Wi-Fi」「JR-Central Wi-Fi」「JR-WEST FREE Wi-Fi」などである。

  • 東海道新幹線の各駅では、JR東海が設置したフリーWi-Fiと、公衆無線LAN事業者の有料Wi-Fiを利用できる(写真はイメージ)

  • 山陽新幹線の各駅にも、JR西日本がフリーWi-Fiを設置(写真はイメージ)

JR東日本では、この「JR-EAST FREE Wi-Fi」の利用エリアを拡大。東北新幹線をはじめ、これまでWi-Fiを利用できなかった同社の新幹線においても、2018年5月以降、無料Wi-Fiを利用できるように車両の改修工事が進んでいる。本来は訪日外国人向けサービスであるが、メールアドレスを登録すれば誰でも利用可能だ。

このサービスは5月24日に東北・北海道新幹線E5系1編成からスタート。今後は東北・北海道新幹線をはじめ、上越・北陸・山形・秋田の各新幹線で、2019~2020年度にかけて利用可能とする計画となっている。ただし、引退が近いE4系と、E2系には取り付けられない予定である。

東海道・山陽・九州新幹線共通の無料Wi-Fi導入へ

東海道・山陽新幹線の車内はどうかというと、従来から東京~新大阪間においてのみ、N700系・N700A充当列車で有料Wi-Fiが利用できる状況であった。2018年夏から東海道・山陽・九州新幹線の全列車に無料Wi-Fiを設置する工事が始まり、さらに利便性が向上しつつある。

東海道新幹線東京~新大阪間の車内および駅で利用できる有料Wi-Fiは、NTTドコモ、ソフトバンク、UQコミュニケーションズ、NTT東日本、NTT西日本の各社。利用には、契約時に発行されるパスワードが必要となる。

ただし、有料Wi-Fiといえども超高速で走行する列車に対応した方式であるため、回線速度が限定されており(1列車あたりの理論値で最大2Mbps)、高速の回線速度を必要とする動画閲覧やファイルのダウンロードなどは一部で利用が制限される。もし接続できたとしても、他の利用者の通信を妨げることにもなるため、配慮が必要になる。メールの送受信や一般的なウェブサイトの閲覧なら問題ない。

  • 東海道・山陽・九州新幹線で無料Wi-Fiの設置が始まり、完了した編成にはステッカーを出入口脇に掲出する(写真はイメージ)

このたび導入が始まった無料Wi-Fiサービスは、「Shinkansen Free Wi-Fi」という名称で提供される。東海道・山陽・九州新幹線は相互に直通する列車が多く、JR東海、JR西日本、JR九州の各社が所有する車両が共通に運用されているため、3社共通のサービス、SSIDとなった。

Twitterアカウントで利用可能列車の案内も

利用方法は一般的な無料Wi-Fiと同じ。SSID「Shinkansen Free Wi-Fi」を選択して、メールアドレスを登録するか、SNSアカウントで認証を行えば良い。登録は21日間有効。1回の接続時間は30分だが、1日何回でも利用できる。

  • 「Shinkansen Free Wi-Fi」はメールアドレス登録の他、各種SNSのアカウントなどでもログインできる(写真はイメージ)

  • 「Shinkansen Free Wi-Fi」への接続に成功すると、この画面が出る(写真はイメージ)

2018年8月時点では、まだ設置が完了した編成は少ないが、今後は順次、東海道・山陽・九州新幹線の全編成において改修が進められる。

無料Wi-Fiを利用できる編成では、客室出入口の脇に「Shinkansen Free Wi-Fi」のステッカーが掲出される。当日または翌日に無料Wi-Fiを利用できる列車に関して、JR東海のTwitterアカウント「【公式】東海道新幹線車内無料Wi-Fi『Shinkansen Free Wi-Fi』」のツイートでも案内される。

この無料Wi-Fiは携帯電話の電波を利用して提供される。そのため、電波状況によって利用しにくくなることも考えられる。東海道・山陽新幹線ではトンネル内においても携帯電話が通じるが、九州新幹線の一部区間ではトンネル内のアンテナが未設置であるため、利用できないことには注意が必要だろう。

なお、有料Wi-Fiと同様に通信容量が限られるため、動画閲覧やファイルのダウンロードなど制限される場合がある。大規模災害時には、各社とも登録など不要で無料Wi-Fiが利用できるように、アクセスポイントが開放される。

※写真はイメージであり、本文とは関係ありません。

筆者プロフィール: 土屋武之

1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「まるまる大阪環状線めぐり」(交通新聞社)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科」(JTBパブリッシング)など。