2018年の春に高知県室戸市にオープンし、「廃校」と「水族館」の斬新な組み合わせが話題を呼び、多くの観光客に支持されている「むろと廃校水族館」。
前編では施設の成り立ちや背景を館長の若月さんに設立の経緯を伺いましたが、後編では今後施設が目指すものや、館内でのお勧めポイントを紹介します。
施設が今後目指すものについて
オープンから2年、最近では地域と協力してのイベントなども行われるように。2020年の2月には「サバらしい日々」という、「サバを見て食べること」をコンセプトにした地元の飲食店と連携したイベントが開催されました。
室戸はサバを使った料理が豊富で、他では聞きなれない「サバのすき焼き」も伝統料理の一つ。サバの旬である冬に目を付けた若月さんが、サバのすき焼きやサバフライ定食などのランチメニューを飲食店に提案し10店鋪が参加。そして、水族館は餌やり体験などの特典付き「お食事券」を販売してイベントを盛り上げたのです。
室戸のご当地グルメ食材では金目鯛が有名ですが、サバはより安く、おいしく、しかも地域ならではの食事を味わえる、という良いことずくめ。水族館と地域をセットで楽しめる、素晴らしい、いやまさにサバらしい企画となりました。この着眼点は外からの目線+室戸の良さを全面的に出す、という姿勢だからこそ生まれたものでしょう。
このように、スタッフの「楽しそう!」と思えることが外の世界も巻き込み始めています。リノベーションした施設へ全国から人が来るようになるということ以上に、地域の活性化が見える形でどんどん成し遂げられていることが分かります。
施設のお勧めポイント
ここまでは、施設と地域の関わりをご紹介してきましたが、もちろん館内の魅力なしには語れません。「学校と水族館、どちらの良さも推し出せる」と語る若月さんの言葉通り、学校が好きな人も水族館が好きな人もどちらも満足できる施設となっています。
さまざまな人々に利用されていることは、来館者の年齢層や利用シチュエーションからも分かります。ファミリー利用は当然多いですが、カップルや夫婦、友達同士など本当にいろんな人の支持を得ているようです。
人によっては好きになるポイントがバラバラなのも「むろと廃校水族館」の面白いところで、若月さんに人気のある所やお勧めの展示を尋ねましたが「見る人次第ですね」と即答されてしまいました。
一般的に動物園や水族館には目玉となる生き物がいることが多いですが、ここではそんな常識も通用しないのです。しかしながら、一度中を回ってみればその言葉には納得せざるを得ません。
子供にとってはワクワクして新しい発見がある場所、大人にとっては懐かしさやノスタルジーを感じるなどなど、人それぞれが思い思いの場所で立ち止まる姿がみられるのです。人によって刺さるポイントが違うからこそ、多くの人の心を掴んでいるのでしょう。
むろと廃校水族館の3つの推しポイント
若月さんは「人それぞれの気になる所を探してもらえれば」という姿勢ですが、旅ライターとして「ここだけは記事で伝えておかなければ!」と思わされるポイントも見られたので、3つに絞ってご紹介します。
屋外大水槽(25mプールと小プール)
SNSで瞬く間に拡散され、筆者もこのプールの写真で「むろと廃校水族館」のことを知りました。ただプールに魚がいるというだけでも面白いのに、さらにサメやエイといった大きな生き物が優雅に泳ぎ回っている姿は、世界中探してもここでしか見ることができない景色でしょう。小プールにはこの水族館ができるキッカケともなったウミガメたちもいるので要チェックです。
跳び箱
小学校の体育、その中でも印象に残っている物といえば、やはり跳び箱ではないでしょうか。ここでももちろん使われているのですが、当然ただの跳び箱ではありません。1段目の途中から2段目までがくりぬかれ、なんとそこにはかわいらしい金魚が泳いでいます。
これは若月さんが思い付き(館内は若月さんのひらめきによるアイデアでいっぱい)、自ら試作して完成に至った展示方法だそう。もはやアート……そのクリエイティブな発想に脱帽です。
手洗い場(タッチプール)
3つ目は、タッチプールになっている手洗い場です。子どもはみんな大好きタッチプール! と言いたい所ですが、誰しもが使ったであろう手洗い場、しかも中にはナマコやトコブシ、さらにエビと、大人も思わず手を入れたくなる生き物のバリエーション。子どもと一緒に楽しんでみましょう。(金魚が泳いでいる手洗い場もありますが、そちらは手を触れてはいけないのでご注意ください)
いかがですか。直接見てみたくなった展示はありましたか。なお、すでにご紹介したように、この水族館で見られる生き物はそのほぼすべてが室戸の海から連れてきたものばかりです。そんな点からもこの水族館の室戸という土地への強いこだわりが感じられますね。
ご紹介した3点の他にも、視力検査台や身長計、理科室そのものや廊下など、大人も思わず懐かしさを感じて立ち止まってしまう、学校ならではの魅力が館内の至るところにあふれています。
また、座高計など今の学校では使われていないようなものもあるので、今と昔の学校の違いで子供と話が盛り上がるかもしれません。ぜひ実際に足を運び、自らの足であなたの「面白い!」を探してみてください。
廃校活用は今や日本全国の抱えている問題と言えます。「むろと廃校水族館」はそんな課題の解決法を日々具現化し、さらに地域の活性化に大きな貢献を果たしています。今後も同施設の地域を巻き込む活躍に注目したいですね。