財務省、MBA留学、マッキンゼーを経て、2015年にスタートアップ企業・ウェルスナビを立ち上げた柴山和久さん。お金にまつわる独自のキャリアを生かしながら、現在は、資産を自動運用するサービス、ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」の提供を通じて、誰でも手軽に資産形成ができる世の中を作ることにチャレンジしています。
"お金のプロ"であり多様なキャリアの経験者である柴山さんに、マイナビニュース読者の「お金」と「キャリア」についての質問にお答えいただきます。
Q. 会社の顔である新商品の営業を担当して、半年が経ちました。想像していた華やかな仕事ではなく、日々現場に足を運んだり、お客様の声を聞いたりと、チームで地道な工夫を重ねています。どうすれば要領よく成績を上げることができるでしょうか。(20代・会社員・男性)
■ 柴山和久さんの回答
分野は違いますが、私にも、ご相談者と似た経験が何度もあります。そのひとつが、マッキンゼーのニューヨーク・オフィスに移ったときのことです。
マッキンゼーのコンサルタントといえば、説得力のある見栄えのいい資料を作り、スマートにプレゼンテーションする、というイメージがあるでしょう。しかし当時、私がニューヨークで取り組んでいたのは、華やかなイメージとは真逆の仕事でした。ウォール街の機関投資家による資産運用をサポートするというプロジェクトで、リスク管理の専門家たちと一緒になり、Wordファイルで100ページ以上に及ぶガイドラインを半年かけて書き起こしたのです。
専門家たちの意見を集約して一貫性のあるガイドラインに仕上げるのは、とても地道で時間のかかる作業でした。しかし、日々さまざまな人のサポートを受けてプロジェクトが完了したとき、私はようやくチームの一員として認められたように思います。
このプロジェクトもそうですが、後になって「誇りに思える」と感じる仕事ほど、そのさなかにいるときは出口の見えないトライアルを繰り返していました。世間的に華やかに見える仕事ほど、その裏側には地道な工夫の積み重ねがあるものです。私の体験でも、トライアルを繰り返すうちに、前触れなく光が見えることが何度もありました。
ご相談者は、今まさにトライアルに挑んでいらっしゃる最中なのだと思います。新しいチャレンジの中で工夫を重ねていらっしゃることは、プロジェクトにとっても今後のキャリアにとっても決して無駄にはならないはずです(とはいえ、もし明らかに効率が悪いとわかっているプロセスがあるなら、周囲を巻き込んで改善することをおすすめします)。
私自身も今、トライアルを繰り返しているところです。私がCEOを務めるウェルスナビではこの4月で預かり資産が700億円を突破しましたが、1年半前の2016年末を振り返ってみると、預かり資産は10億円足らずで地道なサービス改善の真っ最中でした。
それは今も変わりません。「働く世代に豊かさを」というミッション、2020年に1兆円という目標の実現に向け、今も地道な工夫を重ねています。
執筆者プロフィール : 柴山 和久(しばやま かずひさ)
「誰もが安心して手軽に利用できる次世代の金融インフラを築きたい」という想いから、プログラミングをイチから学び、2015年4月にウェルスナビ株式会社を設立。16年7月に世界水準の資産運用を自動化したロボアドバイザー「WealthNavi」、17年5月におつりで資産運用アプリ「マメタス」をリリース。
起業前には、日英の財務省で約10年勤務、その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤め、ウォール街に本拠を置く10兆円規模の機関投資家を1年半サポート。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。
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