財務省、MBA留学、マッキンゼーを経て、2015年にスタートアップ企業・ウェルスナビを立ち上げた柴山和久さん。お金にまつわる独自のキャリアを生かしながら、現在は、資産を自動運用するサービス、ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」の提供を通じて、誰でも手軽に資産形成ができる世の中を作ることにチャレンジしています。

Q. 証券会社の担当者から「おすすめの投資信託があります」と、とても丁寧に連絡をもらうのですが、これまでの経験から「証券会社にとって都合のいい商品を提案されているのではないか」と勘ぐってしまいます。担当者のおすすめに従うべきなのでしょうか。 (50代・女性・主婦)

■ 柴山和久さんの回答

読者の方から、かつて自分が経験したものととてもよく似た状況の質問をいただきました。ご参考になると思うので、まずは拙著『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』でも触れた、私の失敗談をご紹介させてください。

財務省時代、ボストン留学を終える直前に、私は銀行口座を解約するためある支店を訪れました。すると突然、資産運用のコンサルティングブースへ通され、投資アドバイザーから親しげな口調で投資信託を勧められたのです。とても丁寧な扱いを受け、私は舞い上がりました。

銀行口座を解約しに行ったはずが、私は言われるがままに資産運用口座を開き、書類にサインし、提案された投資信託を買いました。

そして帰国後、毎月送られてくる報告書に目を通すと、投資信託のリターンはいつもマイナスに。日本からは投資アドバイザーに連絡も取ることもままならず、損失を出したまま、数年後に解約しました。

銀行からの特別な扱いに舞い上がり、冷静な判断をできなかったことが、このとき私が失敗した最大の理由です。「親切なこの人が勧めるならきっと良いものだ」と思い込み、投資信託の中身を確認することを怠ったのです。今でも、このとき買った投資信託がどのような商品だったのか、まったく思い出せません。

さて、ご相談者のケースではどうでしょうか。担当者から「とても丁寧に連絡をもらう」のは良いことなのですが、それだけが投資信託を買う理由になっていないでしょうか。

投資信託を勧められたときは、下記の3つのポイントについてよく聞くことをおすすめします。

・どのような投資対象に投資するのか
・リターンの源泉は何か
・リスクは何か

リターンとリスクは表裏一体です。例えば、世界中の資産に分散投資する商品なら、世界経済の成長がリターンの源泉になり、国際的な金融危機があれば値下がりするリスクがあります。

これら3つのポイントについて納得できれば、勧められた投資信託を買うのもいいと思います。説明に納得できなかったり、少しでも不安を感じたりするなら、ひとまず様子を見るのがいいでしょう。


執筆者プロフィール : 柴山 和久(しばやま かずひさ)

「誰もが安心して手軽に利用できる次世代の金融インフラを築きたい」という想いから、プログラミングをイチから学び、2015年4月にウェルスナビ株式会社を設立。16年7月に世界水準の資産運用を自動化したロボアドバイザー「WealthNavi」、17年5月におつりで資産運用アプリ「マメタス」をリリース。
起業前には、日英の財務省で約10年勤務、その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤め、ウォール街に本拠を置く10兆円規模の機関投資家を1年半サポート。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。
著書に『元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法』。

元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いた これからの投資の思考法

なぜ資産運用に尻込みしてしまうのか、どこでつまずいているのか、どんな勘違いがあるのか――。2年間で約80回の資産運用セミナーを開き、参加者から募った「1000の質問」のエッセンスを詰め込んだ1冊。「資産運用」初心者の疑問を解決する。


柴山和久 著
定価:1,500円(税別)
発行年月:2018年11月15日