財務省、MBA留学、マッキンゼーを経て、2015年にスタートアップ企業・ウェルスナビを立ち上げた柴山和久さん。お金にまつわる独自のキャリアを生かしながら、現在は、資産を自動運用するサービス、ロボアドバイザー「WealthNavi(ウェルスナビ)」の提供を通じて、誰でも手軽に資産形成ができる世の中を作ることにチャレンジしています。
Q. 以前のコラムを読んで、「長期・積立・分散」の資産運用が大事だということはわかりました。ただ、なぜ「世界経済の成長を上回るリターン」を期待できるのかわかりません。納得してから資産運用を始めたいと思っています。 (20代・男性・会社員)
■ 柴山和久さんの回答
ご質問ありがとうございます。
以前のコラムでお伝えしたとおり、「長期・積立・分散」の資産運用は、
長期間(少なくとも10年以上)
決まった間隔(例えば毎月)で一定額を
世界のさまざまな金融商品に分散して
投資する方法のことです。
世界的なベストセラーとなった『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著)をご存知でしょうか。この本には、
「r>g」
という数式が紹介されています。
この数式は、「資産運用をすることによるリターン(r)は、世界経済の成長(g)よりも大きい」ことを意味しています。
「r>g」となる理由は、2つあります。
(1)投資をするということは、損をするかもしれない、つまりリスクを取っているということになります。リスクを取ると、それに対する見返りが期待できます。これは「リスク・プレミアム」とも呼ばれます。文字通り、リスクを取ったことで得られる特別な見返り(プレミアム)です(※1)。
(2)税金も優遇されます。日本などの先進国では、投資によって得られた利益に20%ほどの税金がかかります。それに対し、経済活動によって得られた利益には、税金が30~60%ほどかかります(給与にかかる所得税もその一つです)。同じ金額なら、投資で得られた利益のほうが、給与など経済活動で得られた利益よりも、手元に残る分が多くなります。
世界経済は、年3~4%程度で成長していくと言われています(※2)。これを前提とすれば、「長期・積立・分散」の資産運用で、世界経済の成長を上回る4~6%のリターンを目指せるということになります。
(※1)すべての投資で利益が得られるわけではありませんが、さまざまな投資を全体としてひとまとめにしてみると、損失が発生するリスクを取ったことに対する見返り(プレミアム)が得られます
(※2)世界銀行や国際通貨基金(IMF)のデータに基づく
執筆者プロフィール : 柴山 和久(しばやま かずひさ)
「誰もが安心して手軽に利用できる次世代の金融インフラを築きたい」という想いから、プログラミングをイチから学び、2015年4月にウェルスナビ株式会社を設立。16年7月に世界水準の資産運用を自動化したロボアドバイザー「WealthNavi」、17年5月におつりで資産運用アプリ「マメタス」をリリース。
起業前には、日英の財務省で約10年勤務、その後マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤め、ウォール街に本拠を置く10兆円規模の機関投資家を1年半サポート。東京大学法学部、ハーバード・ロースクール、INSEAD卒業。
ロボアドバイザー「WealthNavi」の概要はこちら→https://www.wealthnavi.com/