廃業する銭湯が後を絶たない一方で、今、新たにうまれかわろうとしている銭湯もある。そのひとつが、今回紹介する江戸川区小岩「武蔵湯」だ。こちらは、10月15日にリニューアルオープンしたばかりである。

「武蔵湯」へはJR中央・総武線「小岩」駅から徒歩7~8分ほど

九谷焼絵付けタイルに真新しい板鍵の下足箱

先日、台東区入谷の「快哉湯」が休業してしまった。創業は明治、戦前の建物がそのまま残る立派な銭湯で、この連載でも紹介させていただいただけに残念だった。東京銭湯のピークは昭和40年代。快哉湯は例外だが、多くの銭湯がこの時期に生まれており、それから約50年。人も建物も難しい時期に差し掛かっている。廃業する銭湯が後を絶たない一方で、リニューアルする銭湯も目につくのはいくつかここでご紹介した通り。そういった意味で東京銭湯は転換期を迎えているのかもしれない。

さて、今回はそのリニューアルを果たした武蔵湯である。最寄り駅はJR中央・総武線「小岩」駅。北口を出て、左手、新中川方面に線路沿いを歩いていくと見つかる。駅からは徒歩7~8分だろうか。改装休業期間は2カ月と少しだったと思う。

外観はほとんど変わっていなかったが、玄関の間口がやや狭くなっており、その代わりに章仙画の見事な九谷焼絵付けタイルが入り口に張り替えられた。暖簾をくぐると真新しい板鍵の下足箱。自動ドアから中に入るとすぐ右手にフロント。左手側にはテレビとドリンクケースがあるミニロビーがあった。男湯は右、女湯は左へ進む。

脱衣所の暖簾の先には緩やかなスロープ。その先にこちらも取り換えられたロッカーが2面。中段の物置スペースを挟んで、下段はやや大きめのサイズになっている。背側には腰掛けがあるのみの休憩スペースらしき小部屋。ほか、洗面台や家庭用サイズの小ぶりな体重計など。天井は格天井になっている。訪問時は平日15時頃。相客は4~5人程いた。

マスコット「お湯の富士」も待っている!?

男湯のイメージ(S=シャワー)

元々きれいにされていたお風呂だったが、リニューアルでもちろんピカピカ、明るい浴室だ。カラン数は減ったがそのぶんゆったりスペース。カランの上はやや広めにとられており、湯道具を置くのにも便利。ボディソープ、シャンプー、コンディショナーは備え付けがある。

湯はぬるめ(41度くらい)の浅風呂とジェットバス、もうひとつ「熱湯」と書かれた薬湯の浅風呂(43度くらい)がある。どちらも入りやすい温度で快適だ。浅風呂には奥に段差があり、半身を出しながらゆっくり長湯もできる。ちなみに水は軟水で、ヌルヌルスベスベ、石けんの泡立ちもいい。

正面の富士山のペンキ絵はもちろん塗り替えられており、田中みずき絵師が手がけられている。江戸川区浴場組合マスコットキャラクターの「お湯の富士」も小さく描かれているのでぜひ探してみよう。

武蔵湯のリニューアルは、話題が殺到するはやりのデザイナーズタイプではないものの、堅実で、老若男女にやさしい銭湯に生まれ変わるものだった。消える銭湯あれば、変わる銭湯あり。近くに立ち寄った際はぜひ訪れてみてほしい。

※記事中の情報は2016年11月時点のもの。イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。