青梅街道と山手通りが交差する、東京メトロ丸ノ内線「中野坂上」駅の3番出口を降りれば、1分足らずでそこに「クラブ湯」はある。幹線道路から見れば再開発しつくされたような印象のある中野坂上も、一歩路地に踏み入ればこうした銭湯が残る住宅地が広がっている。

  • 「クラブ湯」へは、東京メトロ丸ノ内線「中野坂上」駅から徒歩1分

    「クラブ湯」へは、東京メトロ丸ノ内線「中野坂上」駅から徒歩1分

昔ながらの番台式銭湯に若い人の姿も

細い路地に口を開ける玄関には短いのれんがかかる。正面は傘箱。左右が板鍵の下足箱になっていて、男湯右、女湯左へと進む。昔ながらの番台式だが、番台は高くなく目線の位置に女将さんが腰を下ろしている。

ロッカーは壁側と中央にあり、中央のがそれとなく衝立の役割を担っている。境目側の壁に沿って、洗面台やマッサージチェア、ドリンクケース、ショーケースが並ぶ。天井を見上げると、折上格天井。三枚羽の天井扇が吊り下がっている。

中央にはテーブルとイス、背側の方にも腰掛けがある。テレビもあったが消灯中で、店内に流れているのはラジオ。浴室入口の脇に、HOKUTOW製のはかりがある。開店は15時。うかがったのはその直後だったが、すでに相客は7~8人。若い人の姿も見られたのは、近隣に大学のキャンパスがあるからだろうか。

高い天井と富士山の優雅さよ

男湯のイメージ(S=シャワー)

男湯のイメージ(S=シャワー)

浴室に入ると、まず目に入る富士山のペンキ絵。丸山清人絵師による西伊豆から見た作品で、日付は「27.9.15」とあった。空色に塗られた天井も十二分に高く、込み入った住宅街からは想像できないほど日が差し込んでいる。

ケロリン桶。ボディソープ、リンスインシャンプーあり。湯の温度は少し高めで、43~4度くらいだったと思うが、常連客の「今日は熱いな」という声も聞こえてきたので、普段はもう少し低いのかもしれない。

そのためか、ぬるめの湯を使った小さなバイブラバスには4人くらいが同時に肩を沈めていた。ボタン式のエステバスの奥にはオリがあって「備長炭」のプレートがあったが、こちらには特に何も入っていなかったように見える。

外から見ればコンパクトなマンション銭湯のように見えるが、脱衣所も浴室も昔ながらの広々とした東京銭湯スタイルとなっているクラブ湯。もちろん、こちらも例に漏れず常連客の多くは地元住民と察するが、西新宿のオフィス街から徒歩圏内と言えなくもないので、仕事帰りのリラックススポットとして覚えておいて損はないだろう。都心の穴場スポットのひとつと言っていい銭湯だ。

※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。