今回もまたリニューアルした銭湯を案内する。大田区「はすぬま温泉」、2017年12月16日に新しくなって開店したばかりのお風呂屋さんだ。場所は、東急池上線「蓮沼」駅から徒歩2分の好立地。五反田駅から揺られるのもいいが、お隣は蒲田駅なのでこちらから歩くという手もある(徒歩12分ほど)。
余談だが、こちらのご主人は東京浴場組合の理事長をされており、その意味ではこれからの東京銭湯のフラグシップモデルになるかもしれない。外観は大久保の「万年湯」や町田の「大蔵湯」を想起する、木の温かみを感じるデザインに。まさに今回も、おなじみ銭湯建築家・今井健太郎氏によって手がけられているのだ。
デジタルな鯉と大正ロマンなグラス
玄関の「わ」板は「湯が沸(わ)いた」の意味で、営業中を表す看板。短いのれんをくぐり、下足場へ。真新しい下足箱はおしどり錠の板鍵。錠の部分が黒く塗られているのは珍しい。
ロビーはややこぢんまりとしており、すぐ左手にフロント。座るところと、ドリンクケース、テレビ、タオル等の販売のほか、床には円形のデジタルサイネージで鯉が泳いだり、丸山絵師による富士山のペンキ絵が飾られていたりする。奥左手が脱衣所入口、男湯は左、女湯は右となっている。
木製のロッカーは大中小でサイズ違いがあり、使いやすい。小さな体重計、腰掛け、飲料水を兼ねた洗面台、壁側にはコインドライヤー付きの鏡台が2基。脱衣所出入口のセンサーバーはロッカーキー持ち帰り防止のものか。
天井には幾何学的に梁が張り巡らされており、周囲にはステンドグラスが。まさに「大正ロマン」といったところだ。訪れたのはオープン3日目の平日16時頃で、客足は上々で相客は15人以上。小さな子連れのお客さんも2組いた。
"今井風"な間接照明は健在
浴室はガラリとフルリメイク。中央に浴槽、その両側にカランが並ぶ。間接照明を巧みに使う落ち着いた雰囲気づくりは、今井氏の十八番。今井風と呼んでしまおう。境目の壁にはペインティングアーティスト「Gravityfree」による、四季折々の花や富士山などを描いた円形の絵が5点並ぶ。
湯はぬるめで42度くらい。これなら子どもも入りやすそうだ。鯉が浮き彫りにされた石柱が湯口になっている天然温泉はうっすら色づいている程度だが、広く、5~6人が一緒に温まっていた。ちなみに水風呂も温泉である。
正面の滝と、脱衣所側の立山連峰風のタイル絵は、リニューアル前から引き続きあるものだ。ケロリン桶使用、ボディソープ・リンスインシャンプーは泡の出るタイプが完備。カラン、鏡の脇に取り付けられている斜めの棒はタオルフックに便利である。
いやはや、なんとも豪華な変身だった。東京はやはり新陳代謝が活発なのだろう。これだけ改築が立て続けに行われるのは全国的に珍しい。だが、銭湯の魅力を引き出すのには何もリニューアルだけが手段ではない。この活力自体が他県にも広がっていけばと思う。
※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません