今回も、リニューアルした銭湯を紹介したい。板橋区にある「クアパレス藤」は、この12月1日に新装開店したばかりだ。東京メトロ有楽町線「要町」駅から歩くと12分ほど。池袋駅からバスに乗れば、1~2分のところまで連れていってくれる。

  • 「クアパレス藤」へは、東京メトロ有楽町線「要町」駅から徒歩12分

    「クアパレス藤」へは、東京メトロ有楽町線「要町」駅から徒歩12分

リニューアル感を大きくするちょっとした工夫

首都高や国道も遠くないが付近は完全に住宅地。ふらっと立ち寄る銭湯というよりも、地元住民の割合が高い風呂屋だろうと察する。訪れたのはまさに12月1日。しばらくの休業明けということもあってか、小脇に湯道具を抱えた人が続々と集まってきていた。玄関右手にコインランドリー併設。短い黄緑色ののれんの奥に下足箱がある。

左手にフロントカウンター、その隣にドリンクケース。こちらで入浴料を支払うが、なんと行列中。右手、下足箱裏側がロビースペースになっていて、座るところがある。壁面には大型の水槽が設置されており、魚が泳いでいる。

脱衣所は、男湯右、女湯左。以前は男女で左右が逆だった。実はこちらのリニューアルも銭湯建築家・今井健太郎氏によるものだが、予算の兼ね合いで、浴室のレイアウトにはほぼ手をつけられなかったらしい。そこで、シンプルに男女を入れ替えてしまうことで、以前のままでも新鮮な印象を感じられる工夫がなされているようだ。

脱衣所内はさほど広くないが、物は少なくすっきりしている。ロッカーは2面。中央に腰掛けと観葉植物。浴室側に洗面台1基とデジタル体重計がある。相客は14~5人いただろうか、次々とロッカーが埋まっていく。

ナノ湯も露天風呂も快適仕様

男湯のイメージ(S=シャワー)

男湯のイメージ(S=シャワー)

浴室内、大きく曲線を描いた主浴槽と、内側に食い込むような形になった奥の露天風呂は、なるほど見覚えがある。反対側、旧男湯にも同じ湯船があったはずだ。ナノ湯は微細な泡に包まれる炭酸泉に近い湯なのだが、これは記憶にない。新しく作られたか、元々女湯にはあったのか。中は段差があって、半身浴で長湯できるようなつくりになっている。

湯は42度くらいで、どれも入りやすい。露天エリアにはイスと扇風機が設置。夏場やサウナ客はこちらで一休みできるようになっている。男女境目壁には温かみを感じる木製の壁材が。その上にはグリーンが並べられていて、天井からのぼんやりした灯りを受けている。

にぎわうお客さんも口々に「随分変わったな」「きれいになっちゃって」とご満悦の様子を耳にした。さすが今井氏の仕事、相変わらず質の高さには敬服するしかないが、このところ同氏によるリニューアルが続いているのも事実。いつか第二、第三の現代銭湯建築家の登場を楽しみにするのは少しぜいたくか。

※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作。