今日向かった銭湯は江戸川区の「鶴の湯」。江戸川区に「鶴の湯」は2軒あり、船堀の方の「鶴の湯」は2年くらい前に紹介したが、今回訪れたのは小岩の方。江戸川河川敷の方向に向かって、住宅街を進んでいったところにある。

「鶴の湯」へは、京成線「京成小岩」駅より徒歩10分

銭湯の香りをとどめつつ利便性にも配慮

この鶴の湯、銭湯ファンの間でも非常に人気が高い、知る人ぞ知る銭湯だ。2016年に放送されていたドラマ『昼のセント酒』でも記念すべき第1話で登場しており、それで知った人もいるかもしれない。早速、詳しく見ていきたい。

鶴の湯と言えばまずはその外観だ。千鳥破風の屋根は几帳面なまでにシンメトリー。そのちょうど中心線から左右に分かれて、朱色と紺色ののれんが垂れ下がる。東京銭湯にしては珍しい、ちょっと長めのサイズである。くぐって、下足場。SAKURA Gのプラ製の鍵。番台式で、男湯右、女湯左へ進む。

高い天井は、折上格天井。そこから3枚羽の天井扇がある。ロッカーは、中央、壁側の他、背側の引き戸を開けたところに、庇のついた半露天の脱衣スペースもある。中央にはソファとローテーブルが組まれていて6人くらいがくつろげる。テレビとドリンクケースも近くにある。

浴室側にはデジタル体重計とマッサージチェアが。入った瞬間は、古典的な銭湯の香りを感じるのだが、一つひとつの設備は使いやすく、決して"レトロ"だけで終わってはいない。平日15時頃の訪問で相客は7~8人と、もちろん地元住民中心の客層である。

男湯限定の圧巻風景も

浴室に入る。正面に広がるのは田中みずき絵師による富士山のペンキ絵。よく見れば、江戸川区浴場組合のマスコットキャラクター「お湯の富士」が描かれているのは、区内銭湯の定番だ。内風呂は、奥に深風呂・浅風呂(それぞれジェットバス付き)と、薬風呂のベーシックな構成。湯は適温で、体感で42~3度くらいだろうか。手前と奥側2カ所に、ボディソープとリンスインシャンプーが備え付けられている。

男湯のイメージ(S=シャワー)

こちらのもうひとつの目玉と言えば、露天風呂だ。最近はリニューアルした銭湯で大きな露天風呂が増えてきたが、それでも鶴の湯の露天の大きさはトップクラス。何よりも、屋根がなく広い空を仰ぎ見ながら、ぬるめのお湯をゆったり味わえるぜいたく感は他にない。

さらにこれは男湯側だけの特権だが、太く高くそびえ立つ煙突を間近で見ることもできる。この迫力はまさに圧巻。ちなみに、露天風呂エリアには庇のついた腰掛けと傘があり、小雨程度の日なら気にせず楽しむことができる。

アクセスは、京成線「京成小岩」駅より徒歩10分。JR総武線の「小岩」駅の方とは逆の方向なので注意したい。千葉県との県境に近く、多くの人にとってはアクセスはよくないが、都内銭湯では絶対外せない一軒である。

※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません

筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。