今回訪れたのは、目黒区の「文化浴泉」だ。目黒区の銭湯は以前、祐天寺の「寿湯」を紹介したが、寿湯が昔ながらの東京銭湯の姿を色濃く残すのに対し、文化浴泉は「和モダン」な今風の銭湯である。アクセスは東急田園都市線「池尻大橋」駅から徒歩5分。目黒川沿いのお散歩ロードにも近く、都心銭湯のひとつと言っていいだろう。
銭湯らしからぬ暖簾にジャズ調のBGM
入り口はマンションの1階部分で、階段を数段下りたところにある。辛子色の暖簾には紋がデザインされており、あまり銭湯に見えないかもしれない。暖簾をくぐれば、正面に板鍵の下足箱。左手側の自動扉からロビーへ入る。
ロビーはゆったりと広く、リビング風。テレビやドリンクケース、マッサージチェアなどが設置されているほか、壁には有名人のサインが貼られていたりなどする。一見隠れ家風ではあるが、場所柄人気の高い銭湯で、雑誌などで紹介される頻度も高い。ロビーの奥にフロント。こちらで入浴料を払い、下足板と交換にロッカーの鍵をもらう。男湯は右、女湯は左に進む。
ロッカーはダークブラウンの木目調。脱衣所、浴室ともに間接照明が用いられており、落ち着いた雰囲気になっている。天井の丸い木枠の中には鳳凰(?)のような鳥が描かれている。
BGMはジャズ調で渋い。中央に腰掛け。壁側に洗面台とコインドライヤー。ほか、自販機にコートハンガー、湯道具棚、冷水機、HOKUTOWのはかりなど。平日の16時前、客足は上々で、10人近い相客がいた。背中全面に入れ墨をまとったオヤジさんから外国人まで幅広い客層である。
ナノバブル粒子と軟水の湯でツルツル肌に
この銭湯のウリはいくつかある。そのうちのひとつは、(文化浴泉のホームページによれば)日本初となる円形の富士山のペンキ絵。まるで丸い小窓から富士山をのぞいているような、不思議なデザインである。ちなみに、男湯は真っ赤な赤富士。中島絵師によるもので、サインも入っている。
湯は大きく2曹。ジェットバス+浅風呂と、nano湯と呼ばれる微細な気泡で真っ白になっている浴槽だ。この微細な気泡はナノバブル粒子と呼ばれ、温熱効果やダイエット効果などが期待できるとのことだが、そんなことは置いておいて、単純になめらかで気持ちがいい。文化浴泉の水は軟水でもあるので、肌もツルツルだ。
このほか、別料金のサウナと水風呂が。客の半分以上はサウナ利用客でもあった。湯桶はオリジナルロゴ入り。シャワーは手元ダイヤル式。カランの数は少なめでコンパクトだが、ユニークな銭湯であることは疑いの余地がない。
あとひと月と少しすれば、目黒川沿いに桜が咲く。湯上がりに花見さんぽ、何ていう休日も楽しみだ。
※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。