今回紹介するのは、港区・白金にある「アクアガーデン 三越湯」。港区には現在、銭湯はわずか5軒。ほか4軒を簡単に紹介すると、こちらの連載でも取り上げた表参道の「南青山 清水湯」、麻布十番の黒湯銭湯「麻布黒美水温泉 竹の湯」、区営銭湯・浜松町の「ふれあいの湯」、火曜日のみ営業の白金「玉菊湯」と、文字通り数えるほどしかない。
三田にあった「万才湯」も2016年廃業してしまった(現在は居酒屋に形を変えて営業)。やはり、環境としては銭湯が不似合いな印象も否めないが、清水湯や竹の湯、そして三越湯もメディアでよく取り上げられており、たくさんのお客さんでにぎわう人気銭湯の側面もある。今回の訪問は平日の16時前。カラン16基に対して、実に15人の相客がいるほどの盛況ぶりだった。
料亭風の入り口をくぐるとバーカウンターも
場所は白金北里通り商店会の中、北里大学のほぼお隣と言っていい。JR恵比寿駅から白金高輪駅方面にまっすぐ伸びる道沿いだ。どちらの駅からも徒歩では少し遠く、15~20分はかかってしまうと思う。それでいてこのにぎわいというわけなのだから、地元の人からの需要が相当高いともとれる。
入り口は全く銭湯らしくなく、一見どこかの料亭のような佇まい。入るとおなじみ、松竹錠板鍵の下足箱。左手突き当たりがフロント。途中、バーカウンターがあり、こちらではビール等も販売しているそう。湯上がりに即、一杯ができるうれしい銭湯だ。
ロビーには他にも血圧計や体重計、マンガ本なども。年季の入った柱時計も飾られていて、レトロな雰囲気を醸し出している。三越湯の湯は週替わり。露天風呂がある方と、そうでない方がある。今回は、ない方の湯(左手側)が男湯の週だった。三越湯、4~5回は来ているのだが、毎回こちらに当たる……。
脱衣所は小さめ。ロッカーは2面あり、サウナを利用しない客のものは100円玉返却式になっている。中央に腰掛け。洗面台、自販機、デジタル体重計など。ひっきりなしにお客さんが出たり入ったりしている。
奇をてらわず快適なサービスを
いざ、浴室へ。カランにはそれぞれイスと洗面器がセット済み。天井は高くなく、装飾も目立ったものはない。男女の境も完全に壁でふさがれている。壁側に浴槽、大きな窓があるので、湯気はあまりこもっていない。
奥側ジェットバスがややぬるめ、手前浅風呂がやや熱めになっている。奥にはサウナ(別料金)と水風呂が。サウナの中にはテレビがあるなどなかなかの広さでファンも多い。また、三越湯の目玉のひとつ、足湯。都内でもなかなか見ない設備のひとつ。サウナ上がりにこちらでクールダウンする客も多い。
三越湯は、外観から想像されるような奇をてらったようなスーパー銭湯タイプではないものの、細かい部分で客のニーズに応える、かゆいところに手が届く系の銭湯だと思う。是非次回こそは、露天風呂を味わってみたい。
※イメージ図は筆者の調査に基づくもので正確なものではございません
筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)
1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。