さて翌朝、迎えにきてくれたガイドさんと「昨日はよく眠れました? 」なんて話しながら車を走らせてもらっていると、5分も経たないうちに車はスルスルと脇道に入っていった。

まだ、スコータイ歴史公園には入ってないのだが、なぜだろう……。実は、このあたりは道の脇などいたるところに遺跡が残っているのである。アユタヤ遺跡をご覧になった人ならわかるだろうが、アユタヤの遺跡はその後の戦乱などでほとんどが焦げ跡だらけで、仏像なども盗難にあって ほとんど形跡を残していない。だが、このあたりは戦乱や盗難にも免れ、というか、森の中に埋まっていたおかげで、当時のままの姿が残っているのだ。遺跡たちを前に、まだ歴史公園に入っていないというのにもう僕は興奮気味だった。

スコータイ郊外には、まだ発掘が進んでいない遺跡が点在する。民家のすぐ横に遺跡があったりもする。もっとも遺跡とはいえ寺院。敬けんな仏教徒が多いタイだけに、粗末な扱いは受けていない

そして、いよいよスコータイ歴史公園(スコータイ遺跡)へ。歴史公園内はさすがに世界遺産に指定されているだけあって、非常に整備されている。スコータイ遺跡は約2km四方の城壁の内外に200以上の遺跡が点在する、文字通り「遺跡の街」。数日、ぶらぶらしても遺跡好きなら飽きずに過ごせそうだが、夕方にはバンコクに戻らないといけない僕は、早速遺跡巡りを開始した。

まず、スコータイ遺跡の中心にあるのが、ワット・マハタート。同名のお寺がアユタヤにもあるが、これは王朝の菩提寺。つまり、アユタヤにあるのは、現在の王朝の菩提寺で、スコータイにあるのはスコータイ王朝の菩提寺である

ワット・マハタートはスコータイ王朝の菩提寺なので、もちろんスコータイ様式。だが、その後の増築、修繕などでアユタヤ様式、クメール様式、サンスクリット様式など、さまざまな建築様式が混在する、いわばアジア宗教の縮図のような遺跡

スコータイ遺跡でよく見かけるのが、この「遊行仏」。座像、立像、寝像は他でもよく見られるが、この歩いているブッタ(正確に言うと、この写真の石像はブッダではないらしいのだが)を見られるのは、スコータイの特徴

クメール様式のワット・シーサワーイは、スコータイ王朝以前に建てられた寺院。ナライ像やシバリンガ(シバ神のシンボル)などが出土しており、ヒンズー教の影響を強く受けた寺院らしい

こちらはスリランカ様式のワット・サシー。同じようで、1つ1つ違うスコータイの遺跡。やはり最初はガイド付きでいろいろ教えてもらうのが楽しい

スコータイ王朝の祖、ラームカムヘーン大王の記念碑。タイの文字を発明し、現在も、ラームカムヘーン王が書いたとされる石碑がタイの教科書に使われているそうだ。なお、その石碑はスコータイ遺跡で発掘され、現在バンコクの王立博物館に展示されている

高さ約15mの仏像の四方を囲んだワット・シーチュム。ガイドさんは色んなところから見えるとありがたみが薄れるから囲ったと言っていたが、本当だろうか?

このように、さまざまな遺跡がところ狭しと並んでいるスコータイ遺跡。規模ではカンボジアのアンコール・ワットにはかなわないが、種類の豊富さ、数では上回るといわれるだけあって、見ていて非常に楽しい。とにかく昼食もそっちのけで、飛行機の時間ギリギリまで遺跡巡りを楽しみ、帰りはスコールに降られながらも、スコータイ空港からバンコク・スワンナプーム国際空港へ。

すごいスコールに遭ってしまったが、これも南の国ならでは。ちょっと楽しい。帰りはあの小さな飛行機が無事に飛ぶのか、かなり不安だったが

雲の上では、きれいな夕焼けが見えて、最後にもう1度感動。ただしこの後、この雲の下にあるバンコクは豪雨だった

というわけで、私的世界遺産旅行、スコータイ遺跡編はおしまいです。3泊4日とか4泊5日のバンコクツアーで、1日自由行動の時間がとれるのなら、是非ともスコータイまで足を伸ばしてみよう。ちょっと早起きになるが、1日観光ツアーでも充分に楽しめる。ASEAN最大級の経済都市バンコク、そして古都アユタヤとスコータイ。日本ともつながりの深いこれら各所を巡れば、一味違った旅を満喫できるはずだ。