世界中からあらゆる物が集まるニューヨークでは"遺跡"巡りだって楽しめる。向かった先は、世界三大美術館の1つ、メトロポリタン美術館である。
マンハッタン島の中に、なぜかエジプトの遺跡が……。これはアトラクションでも、テーマパークでもない。エジプトから運ばれた本物の遺跡だ |
中に入るとこんな感じ。こんなでっかいものを、はるばる大西洋を横断してアメリカまで運んできて、さらに建物の中で展示しているのだから、良くも悪くもアメリカのスケールの大きさには恐れ入る |
メトロポリタン美術館は、300万点を超えるといわれる世界のお宝を集めた美術館。日本では考えられないスケールである。絵画や彫刻には興味がないって人も、ここなら1つや2つぐらいは興味を引くものが必ず見つかるはずだ。何しろ、世界中からさまざまな物が集められているので、ゆっくり見て回ると1週間あってもすべてを見切れない。僕はとりあえず、一度全部回ってみたいと思い、早足でほとんど立ち止まらずにぐるぐる回ってみたが、それでも1日では回り切れなかった。
メトロポリタン美術館の正面。なお、メトロポリタン美術館の入場料は「希望料金」で20ドル。これ、実は寄付であって強制ではない。そこで一度、1ドルだけ払ってみたのだが、ちゃんと入場できた。ま、1日しか行かないなら20ドル払ったほうがいいと思うが、数日行くならお財布と相談しながら…… |
メトロポリタン美術館は、セントラルパークの脇にある。セントラルパークは、マンハッタン島にでーんと横たわる巨大な公園。メトロポリタン美術館は再入場可能なので、見学に疲れたら一度外に出て、ここでホットドッグでも食べながら、のんびりすれば、気分はすっかりニューヨーカー(なのか?) |
さまざま国の宝を多数集めているだけに、所蔵物の入手方法に少々問題のある物もあるようだし、いつまでもアメリカに置き続けることに異論を唱える人もいる。実際、日本では戦火で消失してしまった文化遺産の数々が、メトロポリタン美術館には残っていたりする。だが、そんな難しいことは置いておいて、これだけの物を収集し、優れた状態で保存しているアメリカのスケールの大きさには驚かされる。「こんなスケールの大きな美術館、ちょっと他にはないだろう」と考えていた。
すると、あったのだ。しかも、ニューヨークから結構近くに。目指すはアメリカ合衆国の政治の中心、ワシントンD.C.である。
ニューヨークからワシントンD.C.へは、飛行機だと小1時間で行ける。ただ、マンハッタンから国内線を中心に扱うラガーディア空港までの移動、ワシントンD.C.近郊のダラス空港から市街地への移動、飛行機に乗る時のセキュリティチェックなどを考えると、飛行機って結構面倒。そこで、ニューヨークからワシントンD.C.への僕のオススメは列車だ。
意外かもしれないが、アメリカは列車のあまり発達していない国だ。列車を整備するには、広大過ぎるのだそう。しかも、アメリカの長距離列車は、ほぼすべてディーゼル車(気動車)だ。だから遅い。それでいて料金は決して安くない。結果、アメリカの移動は飛行機が一般的になる。
だが、ワシントンD.C. - ニューヨーク間は、珍しく電化(鉄道の動力を電気にすること)されており、特急列車なら3時間ほどで行ける。しかも列車は西都市の市街地を結んでいるので、もろもろの手間と時間を考えると、列車のほうがはるかに快適なのである。料金は120ドルほどなので、飛行機も列車もほとんど変わらない。ニューヨークからフィラデルフィア、ボルチモアを通過し、ワシントンD.C.へと到る東海岸の風景を眺めていると、あっという間にD.C.に到着する。
このワシントンD.C.にあるのが、スミソニアン協会である。これ、メトロポリタン美術館も真っ青、18の博物館、美術館などからなる、ものすごい規模の博物館群なのである。しかも、1つ1つの博物館、美術館の規模は、日本の博物館の比ではない。とにかく大きい。それが計18もあるのだから、その様を眺めているだけでも、ため息が出る。
広場の向こうに見えるのは、国会議事堂。で、写真に写ってなくて恐縮だが、この広場の両側にスミソニアンの博物館、美術館が並んでいる。ちなみに、国会議事堂は中を見学することができる。見学したければ早朝から並んで整理券をもらおう |
スミソニアンの博物館群は、こんな建物が広大な土地の中に並んでいる。この1つ1つが博物館だったり、美術館だったりするから驚き。イギリスの大英博物館周辺も多数の博物館、美術館が集まっているが、スミソニアンの方が土地が広大な分、スケールが大きく感じる |
(上)こちらは国立航空宇宙博物館。小型機とはいえ、飛行機が天井からぶら下がっている。規模の大きさが、少しは伝わるだろうか(右)同じく航空宇宙博物館の中。こちらはロケットやトマホーク。なお、ダラス空港の近くにある航空博物館の別館では、多数の旅客機やスペースシャトルも展示してあるそうだ |
こちらは国立アメリカ歴史博物館。同時多発テロで被害を受けたペンタゴン(国防総省)に掲げられた星条旗を展示。よく見ると、無数の焦げ跡がついている |
アメリカ史博物館。日本人の思い描く、60年代のアメリカってこんな感じかな |
(左)さらにアメリカ史博物館。本やイラストの印象しかなかったが、実物を見ると不気味な三角ずきん。アメリカの歴史が差別との戦いであったことがわかる(上)同じくアメリカ史博物館の片隅にひっそりとたたずむMacintosh Classic。昔、Mac Fan誌で僕が担当した記事内で史書作家の紀田順一郎先生が、このスミソニアンのMacについて触れていたことを思い出し、1人感慨にふける |
スミソニアンには、1億3,000点を超える所蔵物があり、毎年数万点追加されているそうだ。そのうち、一般に公開されているのは、ホンの数パーセントらしいのだが、それでも1週間ではすべてを見ることができないだろう。ちなみに、僕は1日駆け足で見て、上の3つの博物館を見るのが精一杯だった。なお、今回紹介した展示物は、筆者が訪れた時のもの。展示物は随時入れ替えられているようなので注意してほしい。
世界遺産には登録されていないが(っていうか、登録したら各国から非難を浴びるだろう)、ホント、ここ、すごいです。ありのままに置いてある物も多く、ちょっと写真でお見せするのがはばかられるような物まで、何でも置いてある。いや、すごいです。アメリカのやることはスケールが大きいっていうか、ムチャクチャです。
というわけで、世界遺産クラスの遺産、芸術、文化、まとめて満喫したければ、ニューヨークに行ったついでにワシントンD.C.に立ち寄るとかなり面白い。早起きすればニューヨークから日帰りもできる。ワシントンD.C.はそう広くないので、1泊すれば周囲の観光ポイントもざっと見て回ることができる。ワシントンD.C.は、あまり観光向けに紹介されていないが、やはり世界の盟主、アメリカの首都。アメリカが世界中に大きな影響力を持っていることを心の底から実感できるだろう。