洗面台まわりは、家庭のリアルな生活感が出るエリアです。「理想は何も出ていない状態」と考える人は多いけれど、実際にそういう使い方ができているおうちは稀。そもそも、できるだけ収納してスッキリさせたいと言いながら、そもそも収納をうまく使えていないケース、結構多いものです。
例えば鏡の裏の収納棚。「ここをよく使うモノの定位置にしよう」と決めても、出したモノがしまえない。毎日使う化粧品やヘアケア用品、コンタクトレンズ、ヘアゴムやピンは出しっぱなしになりがちで、収納棚は結局スカスカになってしまう。
どうしてこういうことが起こってしまうのかというと、それは「出し入れのめんどくささ」に無頓着な収納の使い方だから。
毎日のことなると、ほんの些細な「めんどくささ」が片づけの強力なブレーキになってしまうんですね。家族全員が使う場所なので、なおさら「意識して、めんどくささを克服しないといけない」ようなルールはすぐに崩れてしまいます。
今回は、洗面台を「出したモノがスムーズに戻せる場所」にするためにわたしが現場で実践している方法を教えます。
開けたり閉めたりの動作を減らす
「鏡がついている扉を開けてボトルを出した後、その扉を閉めないと鏡を見てメイクができない」というのは、致命的にめんどくさいですよね。扉を開けて、ボトルを取り出して、扉を閉めて、鏡を見ながら使って、使い終わったらまた扉を開けて……。1回の身支度でいったい何度、扉を開閉することになるのでしょうか?
自分を映す鏡と、化粧品を出し入れする収納棚は、別の場所がベターです。それが難しいなら、鏡の裏の収納棚は予備の化粧品やコンタクトレンズ、歯磨き関連のストック場所と割り切って、デイリーのアイテムは、カウンターに出しておくのがおすすめです。
とにかく「出し入れのアクション数が増えるほどめんどくさいものと心得よ」ということ。毎日使う綿棒は、蓋を取って、扉を開ければ即取り出せるようにしているおうちも多いかと思います。あのイメージですね。
最近は洗面所に普段使いのアクセサリーを置く方も多いようですが、「収納扉を開けて、ケースを開いて、フックに掛けてあるアクセサリーを外す」なんて、相当マメな人でないとキープできない仕組みです。使うモノを厳選して、「トレイに乗せるだけ」くらいシンプルにすることを検討してほしいです。
「戻す動作の窮屈さ」をなくす
昔のテレビ番組で「イライラ棒」ってありましたよね。細い通り道のどこにも触らないように棒を動かすアレです。動作が窮屈、というのは日常生活の中に「イライラ棒」が仕掛けられているようなストレスがあるということで、それをなくしましょうという話です。
化粧水や乳液のボトルを、鏡の裏の棚にしまう習慣をつけたいなら、棚板の高さ設定が肝心です。いちばん背の高いボトルがギリギリ収まるくらいの高さに設定されているおうちを本当によく見かけますが、そんなケチをしてはダメです。
棚がギリギリの高さになっていると、出し入れのたびにボトルが落下防止のバーに当たったり、手が上の棚板に当たったりと窮屈な思いをすることになります。最初のうちは、「片づけ習慣をつけるぞ! 」という意識で乗り越えられるけれど、徐々に「いちいちしまわなくても、どうせまたすぐ使うし、ちょっとくらいいいか……」に流れていってしまいます。
ボトルを出し入れするときに、手やボトルがどこにも当たらないくらいの充分な余白を確保してください。ストレスなくサッと出せて、使い終わったらサッとしまえるようになっていると「片づけるぞ! 」という意識が薄くなっても、良い習慣が残りやすくなりますよ。
「あるだけで使わないモノ」を上手に始末する
「棚板設定をゆったりさせる」となると「そんなことをしたらモノが入りきらなくなる」と感じる人も多いかもしれません。確かにそうですね。
洗面台収納には、使う予定がはっきりしないモノが眠っていることが多いので、この機会にそれらを整理しましょう。と言っても、「使わないなら捨てろ」という話ではありません。「使わないなら使わないなりに、それなりのしまい方に変えましょう」ということです。
■数の多すぎるモノ
旅行先から持ち帰ったアメニティグッズや、ドラッグストアでもらった化粧品のサンプル、掃除用にストックした古歯ブラシ。これらは、たまるスピードと使うスピードが釣り合わずに量が膨らみがちなアイテムです。「手元に置いておく最大量を決め」て、今後は増えすぎないようにしましょう。透明のジッパー付き保存袋を使ってまとめるのがおすすめです。中身も見えますし、小さいものも「まとめて1つのカタマリにする」ことができます。
気をつけてほしいのは「細かく分けすぎないこと」。アメニティなら「使い捨て歯ブラシ」「シャワーキャップ」「綿棒とコットンのセット」などをすべてひとつの保存袋にまとめれば充分です。細かく分けると、しまうのがめんどくさくなるだけなので気をつけてくださいね。
■使う見込みが薄いモノ
マイブームが過ぎた美容家電や、ひとつ前の代のドライヤーなど「使えるけど今は使わない、かつ捨てるには忍びないモノ」や、ドレスアップしたときに使うホットカーラーのような「出番のごくごく限られたモノ」。これらは、捨てなくていい代わりに「できるだけ今使うモノの邪魔にならないようにしまう」のがマストです。
洗面台収納が引き出しタイプでも、棚タイプでも、いちばん奥のエリアにこうしたモノを逃します。大事なのは「できるだけコンパクトにしまうこと」と「それが何なのか、しばらく放置しても忘れない状態にしておくこと」。中の見えない袋は絶対忘れるのでNG。透明のジッパー付き保存袋はここでも活躍してくれます。
「パッと見」でわかるようにしまう
スペースがグッと空いたら、今使っているモノからしまっていきます。しまい方で意識してほしいポイントは2つ。
■カテゴリーごとのまとまり感
ストックがたくさんあって、在庫管理が難しいと感じている人は、これらのまとまり感を意識してみてください。
・洗濯用洗剤
・掃除用洗剤
・ボディケア/歯磨き
特に補充用パックは形状が似ているので、同じ場所にごちゃ混ぜで置いてあると、見分けがつかずに重複買いの原因になります。カテゴリー別にしまう場所やケースを分けることで、迷いにくくなり、ムダを省けます。
■覗き込まなくても見えること
「動作の窮屈さ」の話をしましたが、「目線の窮屈さ」も同じくらい侮れません。
洗面台下が開き戸の場合、つっぱり棚やコの字ラック、収納ケースを駆使すればたくさんのモノを収めることができますが、空間を埋め切ってケースしか見えなくなると「何が入っていたんだっけ」「どこに入れればいいんだっけ」と迷いやすくなります。家族が、買ってきたモノをおかしなところに入れてしまう、と感じている人は、ケースの中にも目線が届くようにすると良いでしょう。
収納グッズ選びの際には、こういう点に気をつけてください。
・できるだけ透明のケースを選ぶ
・入れたモノの上半分が見えるくらいの、低めのケースを選ぶ
・しゃがんで覗き込まなくても目線が通るくらい、モノの上に余白を設ける
ラックを入れる場合、3段だと使いこなすのが難しいので、2段程度でゆったり使うのがおすすめです。
洗面台下が引き出しの場合、書類ケースなどで区切れば上から見えるようになるのでラクですね。「小さなモノが埋もれないように、ジッパー付き保存袋などでカタマリ感を出す」テクニックを併用すると、無敵です。
洗面台が散らかる理由・意外な盲点
洗面台カウンターに置きっぱなしになりがちなのは、個人や家族で使うモノのほか「ゴミ」です。使い切りコンタクトのケースや使い終わった美容液のチューブ、フロスピックがカウンターに放置されがちなおうちは、充分な大きさのゴミ箱が近くにないことも多々。簡単にできるアクションとして、「ゴミ箱を置く」も実は効果的です。
今回は「出したモノがスムーズに戻せる洗面台収納」というテーマで解説しました。いかがでしたでしょうか? 自分も家族も片づけが苦手、という方は、まずあなた自身が「これなら戻すのがラクだ! 」という手応えを掴んでください。それがわかると、家族の使い勝手に寄り添った仕組みづくりも想像しやすくなりますよ。
次回は、玄関の整理収納について解説します。
新刊『家じゅうの「めんどくさい」をなくす。いちばんシンプルな「片づけ」の方法』
(ダイヤモンド社刊/1,430円)散らかる原因の9割は、「めんどくさい」が放置された結果! 必要なのは、努力ではなくて「正しいしくみ」です。6000軒を片づけた“予約の取れない家政婦”が、「めんどくさい」の一番簡単ななくし方を教えます! いままで何度もリバウンドしていた人、ズボラな人にこそ向いている、一生、家事がラクになる本です。Amazonなどで発売中。
家族の片づけコンサルタント:sea(しー)
大学卒業後に始めた家事代行サービスの仕事にどっぷりはまり、20年以上にわたって個人宅の片づけや掃除を行ってきた。いままでに片づけた家は6000軒以上。家事代行マッチングサービス 「タスカジ」では「seaさんが片づけてくれると、なぜか家族の仲までよくなる」と口コミで評判になり、「予約の取れない家政婦」と呼ばれるようになった。メディア出演や執筆、片づけ講座の企画・開発など幅広く活動を行う。