今回は「暗号資産」と「お金」の違いについて解説していきます。2019年の法改正により「仮想通貨」は「暗号資産」と呼ばれるようになりました。仮想「通貨」と呼ばれていたことから、お金の一種と思っている人もいるかもしれませんが、暗号資産はお金ではありません。
「暗号資産」と「お金」の違い
1万円札や500円玉のような「お金」は法定通貨と呼ばれ、日本銀行が国に代わって発行し、その価値は政府や中央銀行によって保証されています。そのように価値が保証されているおかげで皆が「お金」を信頼し、商品やサービスとの交換が成立します。
一方で、暗号資産はそのような保証がなく、需給によって価格が決まるため、さまざまな理由により価値が大きく変動しやすい点に注意が必要です。これは大きく価格が上がる可能性だけでなく、極端な場合、価値がほぼ「ゼロ」になってしまう可能性もあるということです。
暗号資産に欠かせないブロックチェーン技術とは?
それでも暗号資産に期待が集まる理由は、その画期的な仕組みにあります。それが「ブロックチェーン」と呼ばれる技術です。
まず、多くの暗号資産は政府や中央銀行のような発行元や管理者を持ちません。これは「非中央集権」という暗号資産のアイデンティティともいえる考え方で、意思決定を一部の人間ではなく、集合知や多数決など「みんな」でしていこうというものです。
お金は政府や中央銀行が偽造防止の取り組み、価値を保証することによって、信頼され利用されてきました。管理者を持たない暗号資産にも、安定した流通のためには、データを複製、改ざんされない仕組みが必要です。
それらを実現しているのがブロックチェーンです。ブロックチェーンとはいくつかの取引を一つのブロックにまとめて記録し、それを鎖のようにつないでいく技術で、すべての取引が世界中の多くのコンピューターで記録されかつ暗号化して公開されることで、不正取引を防止することが可能になります。
具体的には「P2Pネットワーク」「ハッシュ」「電子署名」「コンセンサスアルゴリズム」という4つの技術が組み合わされています。「P2Pネットワーク」は、複数のシステムをつなぐことで、一つのシステムに問題があっても全体は安定して稼働できるという技術です。「ハッシュ」は、データを暗号化して固有の値を持たせる技術で、データが改ざんされるとハッシュも異なる値となり、改ざんを検出することができます。「電子署名」も、なりすましや改ざんの防止に役立ちます。また同じデータを複数のコンピューターで持つことにより、一つに改ざんがあっても全体としては改ざんされない仕組みが「コンセンサスアルゴリズム」です。このように記録が改ざんできないよう、高度な技術が用いられているのです。
今回は暗号資産とお金の違い、暗号資産の特徴であるブロックチェーン技術について紹介しました。「お金」は政府や中央銀行が価値を保証することで安定して流通すると書きましたが、政情が安定しないことにより、お金の価値も不安定になる国もあります。そのような国では逆に暗号資産の方がよく利用されるケースもあります。次回は暗号資産が具体的に何に使えるのか、どのような場面で利用されるのか、解説していきます。