「お金持ちになりたい」と願った経験を持つ人間は多いはずだ。必ずしも、お金があれば精神的充足が得られるわけではないが、少なくとも物質的充足を得られる可能性は高まる。貨幣制度が通用している現代社会においては、お金はあるにこしたことはないのだ。
ではズバリ、どうしたら「お金持ち」になれるのだろうか。やるべき行動、学ぶべき知識、持っておくべきビジョン……。お金持ちに必要となる要素を数えていったら枚挙にいとまがない。ということで、「お金のプロ」であるFPに「お金持ちになれる人となれない人の差」を考えてもらった。本特集では5人のFPの見解を紹介していく。
いくらの資産を持っていればお金持ちと言えるのか、明確な金額を述べるのは難しいものです。ただ、筆者がこれまでお会いした人たちを見つめてみると、お金に余裕のある人とそうでない人とでは行動や意識に違いをいくつか見受けることができます。今回はそのポイントを3つ挙げていきたいと思います。
明確な支出基準を持っている
お金に余裕のある人とそうでない人を見ていて一番違いを感じる点が、「お金の使い方」です。こう言うと、お金のある人は湯水のようにお金を使って、お金のない人は節約のため1円でも安いものを選ぶように考える人もいるかもしれません。
そうではなく、お金に余裕がある人は自分なりの支出基準を持っていて、「必要なものには支出を惜しまず、不要なものには1円たりとも使わない」というメリハリをつけている傾向にあります。日常の支出にも投資基準で考える習慣ができているのでしょう。
たとえば、銀行のATM手数料にも言えることです。仮に普通預金に1,000万円預けても、税引き後の手取り利子は100円に満ちませんが、お金を引き出すごとに数百円の手数料を徴収されることがあります。これはマイナスのほうが大きいですから、まったくムダな支出です。
対策として現金払いではなくキャッシュレス払いをします。キャッシュレスにすると、お金を使いすぎると考える人もいますが、キャッシュレスにすることで銀行のムダな手数料を払わなくてすむだけでなく、ポイントがつくことやカード会員優待などのプラスの特典も得られます。そもそも不要なもの、ムダなものにはお金を使いませんから、キャッシュレス払いにしても使いすぎる心配もないのでしょう。
時間を大切にする
「時は金なり」というのは古くから世界中で伝わっているフレーズです。筆者の知る限り、お金に余裕のある人は皆さん時間を大切にされており、時間の使い方が上手な人ばかりです。
時間の使い方と言えば、まだ多くの人が寝ている朝早くに起きる「朝活」や通勤中のスキマ時間の活用などを思い浮かべる人も多いようです。それもありますが、限られた時間を有効活用するため、物事をスムーズに進める仕組み作りが上手です。
たとえば貯金で言えば「先取り貯金」です。給与天引きでも自動振替でも、一度申し込みをしておけば、その後は自動的に貯金されますから、自分が行動する時間も動力も省けます。
また、キャッシュレス決済について前述しましたが、最近では買い物するとポイントがついたり、クーポン提供やキャッシュバックをしてくれるサービス業者も出てきています。一旦アプリを入れてしまえば、あとは支出と還元が繰り返され、自動的にお金が回っていきます。お金に余裕のある人は、このようなお得な仕組みも利用するのが上手です。
お金に余裕がある人が最も時間を有効利用しているなと思えるのが、複利効果を活かして資産運用をしている人が多いことです。複利効果とは運用で得た利益を再投資して、さらなる利益を得ることで、ざっくり言うとお金がお金を生み出す効果です。投資でお金を増やすための基本ですが、複利効果の大小は「利回り」と「期間」の大きさで決まります。
資産運用では何%といった利回りばかりを気にする人が多いですが、実は時間を味方につけることは、とても大切です。デイトレーダーのように短期で売買を繰り返す人もいるのは確かですが、時間を味方につけた長期運用をすることがお金持ちへの近道だと思います。
何でも楽しむ、前向きである
お金、仕事、対人関係など、何においても物事をポジティブに考えられる人が多いことも挙げられます。ポジティブだからお金に余裕が出てくるのか、お金に余裕があるからポジティブになれるのかはわかりませんが、お金に余裕のある人を見ていると、ポジティブマインドの人が多いのは確かです。
言葉の使い方ひとつを見ても感じます。たとえば「節約をする」のではなく「節約を楽しむ」、「○円節約する」ではなく「○円得をする」という具合です。このような言葉の使い方は、実は筆者も昔会社員をしていた頃に、ある上司から教えていただいたことがあります。たとえば何かを選ぶときには、「これでいい」ではなく「これがいい」と1文字違うだけで、相手の受け取り方も自分の気持ちも大きく変わるそうです。お金持ちになれる人は、このようなちょっとした言葉遣いからも前向きになっていくようですね。
貯金は仕組みを作るということを前述しましたが、最近人気の365日貯金といった遊び心のある貯金法も楽しんでやる人が多いようです。お金がある人にとっては細かな金額とも言えますが、貯金を楽しむこと自体が好きなのかもしれません。
前向きと言えば、「リスクを恐れない」というのがお金持ちになれそうにない人との最も大きな違いかもしれません。お金に余裕がある人であっても、できれば投資で損失は出したくないものです。しかし、株や投資信託への投資は値上がりするだけではなく、値下がりするときがあることも知っている。値下がりすれば、下がり続けるわけではなく、また上がるときが来る。その繰り返しの中で、自分にとって良いタイミングを待てるのでしょう。これも長期運用の一つですね。
このように見ていくと、お金持ちになれる人は、「仕組み」と「時間」と「ポジティブマインド」の3つを三つ編みのように絡ませながら1本のロープにし、自分が決めた目標と自分自身をしっかりつなぐことができる人であるように思います。お金持ちを目指すには、投資などの特別なテクニックよりも、こうした意思が大切なのだと思います。