前回の記事では、積み立て投資のメリットやデメリットを解説しました。今回は、どういう人が積み立て投資を始めるべきなのか、投資を始めるときに何に注意すれば良いのか解説します。
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■積み立て投資がおすすめな人
結論からいえば積み立て投資は、すべての人におすすめであると言っても過言ではありません。
日本は、これから少子高齢化社会が進展するといわれているため、老後の年金や公的医療保険制度(健康保険)などの社会保障制度が、見直される可能性は高いと考えられます。
また2021年現在の日本は、歴史的な低金利の状態が続いているため、ひと昔前のように預貯金や貯蓄型保険だけでは効果的な資産形成が難しいです。これからの時代は、預貯金や保険でなく投資も活用し、自分自身で資産を形成することが大切であるといえます。
しかしながら、準備ができていないにもかかわらず積み立て投資を始めると、生活が苦しくなったり資産がマイナスになったりするリスクが高くなります。そこで積み立て投資は、以下3つに当てはまってから始めると良いでしょう。
1.家計が黒字であり貯蓄をする習慣がある
2.投資で資産を殖やすには勉強が必要だと理解している
3.積み立て投資は長期的に資産を形成する投資であると理解している
それぞれの特徴について、ひとつずつ確認していきましょう。
▼家計が黒字であり貯蓄をする習慣がある
積み立て投資は、余剰資金で行うのが大前提です。家計が赤字にもかかわらず積み立て投資を始めても、生活が苦しくなって積み立てた資産を取り崩さなければならなくなるかもしれません。
また生活に余裕がない状態で積み立て投資を始めると、運用結果が気になって本業の仕事に支障がでる恐れもあります。
家計が赤字である人は、毎月の収支を把握し、無駄遣いを減らして、貯蓄に回すお金を確保するところから始めましょう。
家計が黒字で毎月一定額を貯蓄できている人は、積み立て投資を始めても問題ないといえます。投資信託であれば、毎月100〜1,000円程度から購入できるため、貯蓄に回しているお金の中で無理のない範囲を投資に回しましょう。
▼投資で資産を殖やすには勉強が必要だと理解している
積み立て投資は、短期的な売買によって利益を狙う投資ではありませんが、定期的に購入する投資商品を最初に選ばなければなりません。投資先を選ぶためには、商品に対する知識と理解が求められます。
投資信託では、日本国内だけでなく先進国や新興国の株式・債券・不動産などに投資が可能です。投資先によってリスクとリターンが異なるため、商品の特性を理解したうえで投資先を選ぶ必要があります。
ファイナンシャルプランナーやIFA(資産アドバイザー)に相談して、投資先を選定するのも有効です。しかし、最終的に判断するのは自分自身ですので、投資に対する知識はある程度必要といえます。
また、投資の規模を拡大するときは、新たに投資先を選ばなければなりません。状況に応じた適切な判断ができるよう、継続的に投資について学んでいくことが大切です。
▼積み立て投資は長期的に資産を形成する投資であると理解している
積み立て投資は、20年や30年などの長い期間をかけて、じっくり資産を殖やしていく投資方法です。運用の途中で保有資産が順調に殖えるときもあれば、マイナスになるときもあります。
積み立て投資のメリットである「複利効果」や「ドルコスト平均法」は、投資期間が長いほど有効です。保有資産が殖えたり減ったりしても、焦って利益を確定したり損切りをしたりすると、積み立て投資のメリットを最大限には活かせません。
積み立て投資は、長時間をかけて資産をコツコツと殖やしていく投資であることを理解したうえで始める必要があります。
■積み立て投資をするうえでの注意点
積み立て投資を始めるときは、以下の3点に注意が必要です。
・余剰資金のすべてを投資に回さない
・分散投資をする
・安易に保険を解約しない
▼余剰資金のすべてを投資に回さない
余剰資金のすべてを、積み立て投資に回すのはおすすめできません、余剰資金のすべてを投資に回し、資産のすべてを投資信託のような金融商品で保有すると、以下のような事態が発生した場合に、運用資産を取り崩さなければならなくなってしまいます。
・病気やケガになって医療費の支払いが発生した
・会社が倒産して失業した
・家具や家電が壊れて買い替え費用が発生した
医療費の支払いや収入の減少が発生しても、積み立てた資産を取り崩すことのないように、緊急予備資金をいくらか現金で積み立てておきましょう。
▼分散投資をする
投資をするときは、ひとつの商品だけに集中投資するのではなく、株式や債券、不動産などさまざまな投資先に分散投資しましょう。
投資先によって、リスクとリターンが異なります。分散投資をすると、ひとつの投資先がマイナスになっても、他の投資先の運用成果でカバーできます。
そのため投資の初心者は、最初から株式の個別銘柄を購入するのではなく、ひとつの銘柄で分散投資が可能な投資信託を購入するのがおすすめです。
また「○○歳になったときに300万円必要になる」のように、資金が必要になるタイミングや金額が決まっている場合は、預貯金や保険のような元本確保型の商品で準備する方が良いでしょう。
▼安易に保険を解約しない
投資に充てる資金を確保するためだからといって、よく検討せずに加入中の保険を解約するのはおすすめできません。安易に保険を解約すると、リスクに対処できない恐れがあるためです。
例えば、医療保険に加入しており、毎月3,000円の保険料を支払っていたとしましょう。
医療保険を解約すると、最大で毎月3,000円の投資資金を確保できます。しかし病気やケガで入院したり手術をしたりした場合に、医療費の自己負担分を毎月の収入や貯蓄から支払わなければなりません。
毎月の収支が赤字であり、十分な貯蓄がない方は、たとえ数十万円の自己負担であっても大きな痛手となるでしょう。
日本の公的医療保険制度は優れていますが、民間の医療保険が不要であるとは言い切れません。医療保険の解約を検討する際は、病気やケガで治療が必要になった場合に、収入や貯蓄で医療費を支払えるのかを考えることが大切です。
加入している保険を適切に見直した結果、削減できた保険料を投資に回すのであれば、問題ないといえます。しかし保険で備えるべきリスクがあるにもかかわらず、すべての保険を解約して投資に回すのは避けるべきでしょう。
投資に充てる原資を確保するときは、安易に保険を解約するのではなく、他の支出を削ったりご自身の収入を増やしたりなど、さまざまな方法を検討することが大切です。