保健師の吉野です。近年、健康経営などの言葉が注目され、健康に対する社会人の意識も高まっているように感じます。そこで今回は、健康管理の基礎である健康診断についておさらいしましょう。
健康診断の受診率は70%
厚労省(※)の調査によると、20~40歳の男女の約3割の方は健康診断を受診していません。きっと今この記事を読んでいただいている方の中にも、該当する方がいるのではないでしょうか?
産業保健師(企業にいる看護職)をしていると、たくさんの言い分を聞きます。「健康だから大丈夫」「面倒くさい」最近多いのは、「病院に行ったら新型コロナに感染するリスクがあるので、今年は健診を受けません」私はそんな3割の方に言いたいのです。「後から病気が見つかって治療をする方が、よっぽど大変です!」と。
(※)厚生労働省「国民生活基礎調査2019」
健康診断は何のためにある?
健康診断は、病気の早期発見のために行います。身体には自覚症状が無くても、密かに進行する病気はたくさんあります。私も企業の保健師をしていて、健康診断でがんが見つかった事例を何件も見ています。その度に「早期発見できて良かった」と健康診断の大切さを実感します。気付いた時には時すでに遅し、ということにならないよう、毎年身体の状態を確認する必要があります。
健康診断は法律で定められている
企業に所属をしている場合、最低でも1年に1回、健康診断を受ける機会があります。 企業には、社員に対して定期健康診断を行わなければならない義務があるからです。それに対して社員は、企業が行う健康診断を受けなければなりません。
自費で健康診断を受けると何万円もかかるところを、無料で受けることができるので、とってもお得だとは思いませんか。
健診結果の取り扱い
会社は社員皆さんの健康診断の結果を確認する義務があります。詳しく言うと、産業医という会社に居る医師が、社員の健康診断の結果を確認しています。その結果、「今すぐ治療をしなければならない」社員や、「このまま就業をさせておくと重度の病気を招く危険がある」社員に対しては、就業停止の指示を出す場合もあります。
また、「治療をした方が良い」社員に対しても「受診勧奨」を行います。受診勧奨は、必ずしも産業医からされるわけではなく、保健師や人事から行われる場合もあります。
健康診断でよく見つかる病気
受診する項目によって発見できる病気は異なりますが、法律で定められている受診項目でよく見つかる病気は以下の3つです。
・高血圧
高血圧とは、血圧が正常値より高い状態のことです。高血圧の原因は、動脈硬化・肥満・飲酒・喫煙など様々です。高血圧が続くと、血管の壁は硬く脆くなります。硬く脆い血管は、破けやすく詰まりやすいのが特徴です。心臓や脳の血管が突然破ける・詰まることで、取返しのつかない大きな病気を引き起こします。
・脂質異常症
脂質異常症は、血液中の脂質の値が基準値から外れた状態のことです。乱れた食生活や、運動不足が原因で引き起こされます。脂質異常症は、動脈硬化を促進させる主な原因の1つです。気軽に測れる血圧と違い、血液検査をしなければ気づけないため、急に言われても実感の湧かない方が多いのではないでしょうか? 放置すると心臓や脳の大きな病気を突然引き起こすため、早めの治療が大切です。
・高尿酸血症
高尿酸血症は、血液中の尿酸の濃度が高い状態のことです。よく耳にする「痛風発作」は、血液中の尿酸が結晶化し、その結晶を処理する際に、関節に痛みを引き起こすものです。放置すると繰り返したり、腎臓にも影響を及ぼします。
どの病気も、いつ爆発するか分からない爆弾を抱えているような状態です。「今までなんともなかったのだから大丈夫」という言葉をよく聞きますが、未来はどうでしょうか……。
会社から受診勧奨を勧められたとき
健康診断で「要再検査」「要精密検査」などの判定があれば、健康診断の結果を持って早めに医療機関を受診しましょう。健康診断を受けた医療機関でももちろん良いですが、主治医や自宅の近所の医療機関でも問題ありません。今後通院することも考えて、通いやすい医療機関を選ぶのが良いでしょう。
受診しなければ罰せられる、というわけではありませんが、放置しても悪化する一方なので、早めに受診した方が治療にかける時間や費用を抑えられます。
身体の異変に敏感になろう!
健康を保つためには、自分の身体の状態を意識し、身体の異変に敏感になることが大切です。そのきっかけとして、健康診断は自分の健康状態と向き合うよい機会です。 「何もなくて良かった」「もっと早く受診すればよかった」ということはあっても、「もっと遅く受診すればよかった」ということはありません。後悔することがないよう、健康診断は必ず受診するようにしましょう。