こんにちは。保健師の鈴木です。「がん」というワードは今やテレビ、雑誌、SNS……いろんなところで目にしますよね。がんの罹患数は男女ともに増加し続けており、1年で新たに診断されるがん罹患数の予測では2021年は100万件になると予測されています。日本人が一生のうちにがんと診断される確率は男性65.0%・女性50.2%と、2人に1人は何らかのがんになる時代となり、今や他人事ではありません。

そんな中増えているのが、20~30代での罹患が増加している「子宮頸がん」です。数は年々増加しており、年間約1万人が子宮頸がんに罹患しています。子宮頸がんは「若い世代のがん」なのです。

  • 2人に1人はがんになる時代。20~30代の「働く若者のがん」が増えている

子宮頸がん、別名「マザーキラー」

子宮のがんは大きく2つ、子宮体がんと子宮頸がんに分けられます。子宮体がんは子宮の奥にできるがんで、50~60代に多く、女性ホルモンなどが影響すると言われています。一方、子宮頸がんは子宮の入口の部分、子宮頸部という部分にできるがんで、「マザーキラー」と呼ばれています。妊娠や出産がピークになる20~30代で最も多く罹患するため、そう呼ばれています。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんは、ほとんどが「HPV(ヒトパピローマウイルス)」というウイルスが原因になります。性交経験があればほとんどの人が生涯で一度は感染するとされている、一般的なウイルスです。

すぐに体外へ排出されると問題はないのですが、感染した人の1割はすぐに排出されず感染した状態が続き、さらにその中でも数年~数十年をかけてがんになってしまう場合があります。そしてがんになっても初期のほとんどが無症状で、症状を自覚する時には既にがんが進行している傾向にあります。

また、HPVの中でも特にがんへの進行スピードが速いと言われているという「HPV16型・18型」種類のウイルスは、20 歳代の子宮頸がんの原因の約90%を占めるため、若い世代での感染は他の世代よりも早く進行する傾向にあるのです。

受診が必要な症状

子宮頸がんは進行するにつれて、「異常なおりもの、月経以外の出血(不正出血)、性行為の際の出血、下腹部の痛み」といった症状が出てきます。生理前後の下腹部痛などがある方は受診の目安がわかりにくい場合もあるかと思いますが、普段よりも強い腹痛や不正出血、性行為時の出血などの症状がある場合は躊躇なく婦人科を受診する必要があります。

子宮頸がんこそ、予防と早期発見が大切

予防方法は大きく2つあり、日本ではHPVワクチン接種と子宮頸がん検診を促しています。 HPVワクチン接種は、HPVの感染自体を予防するワクチンで、接種が進んでいる国では大幅にHPVの感染率が低下しており、子宮頸がんそのものを減少させる効果を証明している国もあります。ワクチン効果が発揮されるものとしては、性交渉の経験がなくHPVに感染していない女子で、日本でも対象年齢が12~16歳の女子に定期接種ワクチンとして接種を促しています。

子宮頸がん検診では、細胞診といって、子宮の入口の細胞をブラシのようなもので採取する検査を行います。私も何度か受け、(個人差はあると思いますが)痛みもなく簡単に終わりました。簡単に終わるため、この検査の効果はちゃんとあるの? と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかしこの検査、HPV感染後にじわじわと数年かけてがんになろうとしている細胞、すなわちがんになる前の細胞を発見することができ、子宮頸がんの死亡率を減少させる効果も立証されている検査なのです。20歳以上の女性であれば誰でも受けることができ、2年に1度の検査でがんと診断される前の病変に気づき、早期に治療に繋げることが可能です。

20代から必ずしてほしいがん予防

子宮頸がんは原因がはっきりとわかっており、予防ができるがんですが、日本の子宮頸がん検診の受診率はいまだ40%台で、さらに新型コロナウイルス感染拡大に伴い受診率は低下しています。 日々働きながら忙しい中、受診する時間を空けることが難しい方もいらっしゃると思いますが、例えば、会社の定期健診の際に可能であれば一緒に受けてみたり、2年に1度だけ自分の身体を労わる「検診デー」を決め受診後に自分にごほうびを与える、など年間予定に入れてしまうのも良いかもしれません。生涯付き合っていく自身の身体のために、かかりつけの婦人科を作っておくことも何かあったときに相談しやすいでしょう。受診するほどじゃないけど気になる症状がある場合は、会社内などの看護師や保健師、産業医にも気軽に相談してもらえると、医療職の立場から受診が必要か一緒に考えることができます。 予防できたはずのがんの発見が遅れて治療の選択肢が狭まる状況になると、さらに治療への時間もとられ、生活や仕事、子育てにも支障が出てしまう、そうならないためにも20歳からの定期的な検診で早期に発見し、早期に治療していきましょう。

参考文献
1)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録HP)
2)産科・婦人科の病気「子宮頸がん」(公益社団法人日本産婦人科学HP)
3)ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~「子宮頸がん」(厚生労働省HP)
4)「有効性評価に基づく 子宮頸がん検診ガイドライン更新版」ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
より