こんにちは。産業保健WEBメディア「サンポナビ」編集長の飯塚です。ワクチンの接種が進みつつありますが、今年の夏もマスクをしながら仕事をすることが必要になりそうです。今回は熱中症の危険性と予防について紹介します。
■多い年は年間1,000人以上、熱中症による死傷者が発生している
暑い日が出てくるようになりましたが、熱中症対策はできていますか? 熱中症は誰もがなりうる可能性があります。そして毎年、熱中症による死傷者が発生していますので、「たかが熱中症」と、軽く考えてしまうことは非常に危険です。
特に、記録的な猛暑日が発生した2018年では、1,000人以上の方が熱中症等で搬送されています。
■気温・湿度だけでなく「WGBT値」にも注意
暑さの対策として、まず気になるのは、ニュースや天気予報等で示される気温や湿度の数字だと思います。しかし、もう一つ、熱中症の予防で注意したいのが「WGBT値」というもの。WGBT値とは、「暑さの指数」であり、単に気温だけでなく、人体の熱収支に与える影響の大きい湿度や熱射などの要素を含んだ指標です。
このWGBT値は、25以上で「警戒」、28以上で「厳重警戒」、31以上で「危険」という指針になっており、言い換えれば「暑さの危険度」がわかるようになっています。WBGT値は環境省の「熱中症予防情報サイト」で確認することができますので、外出時にチェックしておきましょう。
■熱中症の症状には3つのレベルがある
「熱中症になったかも」と思う時、身体のだるさや筋肉の痛みを感じると思いますが、症状が進むと命の危険があります。熱中症の主な症状には、めまいや失神、筋肉痛や頭痛をはじめ、ひどくなると意識障害、内臓機能の異常にもつながってしまうため、十分な注意が必要です。
熱中症の重症度には3つのレベルがありますので、覚えておきましょう。
・Ⅰ度:めまい、失神、手足のしびれ、気分の不快、筋肉痛、筋肉の硬直
・Ⅱ度:頭痛、吐き気、嘔吐、倦怠感、虚脱感
・Ⅲ度:Ⅱ度の症状に加え、意識障害、けいれん、手足の運動障害、高体温、肝機能異常、腎機能障害、血液凝固障害
■熱中症予防のために~その1
コロナ禍における熱中症で特に気を付けたいのは、マスクをしたまま外で活動することです。マスクの着用中は口元が湿っぽくなることで、喉の渇きに気づきづらくなってしまうといわれているため注意が必要です。厚生労働省では、他者と2m以上の距離を確保できる場合は、無理せずマスクを外すことが示されています。
また、リモートワークが続き「おうち時間」が長引く傾向にある昨今では、暑さに慣れること、つまり「暑熱順化」が上手くできていないことで、熱中症になりやすくなってしまうといわれています。一般的に、暑熱順化には1週間程度の期間が必要だとされていますので、夏本番になる前に、少しずつ暑さに慣れていきましょう。
■熱中症予防のために~その2
熱中症を防ぐためには、前述したような「熱中症の危なさ」を知っておくのと同時に、適切な予防を行うことがとても大切です。屋外であれば日差しを避ける工夫をし、適度に休憩をとること。屋内であればエアコンを適切に使用することなどが挙げられますが、共通して大切なことは「水分補給」です。1日に必要な水分はコップ8杯(1,600ml)といわれていますので、水分を補給する際にも工夫をしてください。
また、水を飲むことで一時的に喉の渇きは収まりますが、発汗と同時に塩分も不足しますので、「喉の渇きを感じる前に水分を補給する」「外出前には必ず水分をとる」「水分補給時には塩分もとる」といったことが大切になります。
以上、熱中症の予防について紹介しました。働く人にとって辛い時期が到来しますが、職場において熱中症への理解を深めることも重要ですので、衛生委員会で取り上げることも有用になります。