2016年のNHK大河ドラマは、主演が「倍返し! 」で一躍国民的俳優となった堺雅人氏、脚本が売れっ子の三谷幸喜氏と期待が膨らんでいる。そのタッグで展開されるのが、真田幸村(信繁)など真田一族に着目した『真田丸』だ。そこで、真田一族の"聖地"を紹介したい。
上田 - 徳川を2度撃退した真田の聖地
NHK大河ドラマ『真田丸』の主人公である幸村は、歴史ファンの中でも注目度が高い人物だ(ドラマでは真田"信繁"の名前が用いられるが、今回は一般に知られている"幸村"を用いることにする)。戦国随一の猛将としてもともと人気が高い武将だが、特に近年では「戦国BASARA」や「戦国無双」など戦国時代を舞台にしたアクションゲームの主役となり、人気投票などでも常にTOP3を争うほどである。
圧倒的な知名度と人気を誇るだけに、各地の真田ゆかりの地も観光客誘致に気合が入っている。お城や神社仏閣など従来の観光地に加えて、最近では真田まつりなどのイベントを開催し、女性向けのオリジナルお土産を展開している自治体も数多い。前編では、真田一族の"聖地"として真っ先に挙がる信州上田と真田郷(どちらも長野県上田市)を"真田巡り"してみよう。
上田は幸村の父・真田昌幸が築いた城下町で、徳川軍を2度にわたって撃退した一族栄光の土地だ。北陸新幹線の上田駅に降り立つと、まずファンを出迎えてくれるのがロータリーに立つ真田幸村騎馬像。幸村の初陣をイメージしているとされ、采配を高々と振り上げ、幸村の代名詞である鹿角の兜をかぶっている。真田巡礼の出発地としてふさわしいスポットと言えるだろう。
難攻・上田城は守りにくい城でもあった
上田駅で幸村騎馬像と記念撮影を撮ったら、やはり上田城へと向かいたい。上田城は昌幸が築いた城で、1585年の第1次上田合戦と、関ヶ原合戦直前の第2次上田合戦の2回にわたって徳川軍を撃退している。城内には真田十勇士などののぼりがひるがえり、昌幸や幸村を祀る真田神社が建つなど聖地としての雰囲気にあふれている。
上田城の顔と言えるのが東虎口櫓門(やぐらもん)。門とふたつの櫓が建ち並ぶお城の正門だ。門をくぐった正面には真田神社が鎮座しており、本丸内は広々とした公園になっている。
この門と神社を見ると上田城へ行った気になってしまうが、見逃してもらいたくないのが、その南側に位置する尼ヶ淵と呼ばれる断崖だ。もともと上田城は千曲川沿いの断崖を利用してつくられ、この崖から攻めることはほぼ不可能という攻めがたく守りにくい城であった。駐車場のある南側から尼ヶ淵の断崖を見ると、上田城がなぜ徳川の大軍を2度も退けることができたのか、その一端をかいま見ることができるだろう。
2016年1月には東虎口櫓門のすぐそばに、真田丸大河ドラマ館がオープン。幸村の生涯が解説され、ドラマで使用される衣装やセットなども公開される予定だ。また、上田城二の丸にある上田市立博物館には、真田一族の甲冑や錦絵などが展示されている。せっかく上田城に行ったなら、この2施設にはぜひ足をのばしたい。
城下町の随所に真田家の面影あり
上田は城下町にも真田の面影を感じることができる施設が多い。お寺だと、城の西側にある「芳泉寺(ほうせんじ)」には、幸村の兄である真田信幸の妻・小松姫の墓がある。小松姫は信幸をよく助けた賢女であり、小松姫が死んだ時、信幸は「わが家のともしびが消えた」と嘆き悲しんだという。
城下町にある上田高校は、江戸時代の藩主館跡地に建てられている。建造物は表門しか残らないが、周囲をぐるりと囲む水堀や土塁は江戸時代のままだという。春には桜の名所としても知られ、上田駅から城へ歩くさいには立ち寄るといいだろう。
こうした史跡だけではなく、上田の街には六文銭があしらわれた看板やマンホールが点在したり、真田十勇士のキャラクターをたどるスタンプラリーがあったり、あちこちで真田を発見することができる。イベントも多く、街全体が「真田テーマパーク」になっているといっても過言ではない。
次回は、同じ上田市内にある「真田郷」を紹介したい。真田郷は真田一族発祥の地。上田駅から車やバスで30分ほどかかるため、交通の便がいいとは言えないが、聖地巡礼という点ではこのルーツの地は外せないだろう。
(文・写真/かみゆ歴史編集部 滝沢弘康)
筆者プロフィール : かみゆ歴史編集部
「歴史はエンタテインメント! 」をモットーに、ポップな媒体から専門書まで、歴史関連の編集制作を行う編集部。ジャンルは戦国、幕末を中心に古今東西を問わず、アート、カルチャー、宗教・神話、観光ガイドなど幅広く手がける。おもな編集制作物に『真田一族巡礼の旅ガイド』(KKベストセラーズ)、『日本の仏像巡礼名鑑』(廣済堂出版)、『日本の山城100名城』『春秋戦国500年の興亡』(どちらも洋泉社)、『戦国武将イラスト名鑑』(学研パブリッシング)、『廃城をゆく』シリーズ(イカロス出版)など
「かみゆ」