グローバル人事塾がさきごろ、人事担当者向けに採用をテーマにしたイベントを開催。国内大手企業の採用責任者4名が登壇し、自社の採用の取り組みと採用の未来について解説した。

前回のリクルートに続き、今回はソフトバンクの採用を紹介したい。

ソフトバンクが試みる攻めの採用

登壇したのは、ソフトバンク 人事本部 採用・人材開発統括部の源田泰之氏だ。源田氏は、新卒採用のES選考において、人工知能「IBM Watson」を活用する取り組みを中心に話をした。

  • ソフトバンク 人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長 源田泰之氏

源田氏:ソフトバンクは「投資会社に変わったのか?」と言われることがあるほど、積極的に海外の企業への投資を行う一方、学生さんには携帯電話の会社というイメージが強いようですが、本当はそうではありません。

源田氏によると、2018年新卒社員は約400名、中途社員は年々採用を増やし、今年は300名程度採用する計画だそうだ。中途採用の強化の理由は、新規事業の展開に伴い、さまざまな専門性やスキルを持った人材が必要になるからだという。

源田氏:新規事業の比重が増えている分、中途社員の割合も増えています。

もう一つのキーワードは「ユニバーサル採用(※)」だ。ソフトバンクでは通年採用を行っている。
※新卒・既卒は不問、募集期間は通年、入社時に30歳未満であれば誰でも応募ができる

こうした背景から、ソフトバンクは「応募者数の最大化(母集団形成)」による従来の採用から方針転換をしている。

  • 採用手法の変化

源田氏:今までの採用手法だと、ソフトバンク=携帯電話のイメージが強く、学生さんが想像する仕事内容と、例えば新規事業の実際の仕事内容にギャップが存在しました。このため、リアルなソフトバンクの仕事を伝えることが大事であると考えて、採用手法を変えました。

採用母集団の変化

結果、応募者数はこれまでの9割程度に減少したが、同社が欲しいと考える学生とのコミュニケーションをより強化したことで、「なんとなく応募する学生」が減少したと源田氏は推測する。

源田氏:母集団が減ると、選考工数も減りますから、その浮いたリソースを欲しい人材へのアプローチに使うことができています。

このあと、源田氏は具体的な採用方法について説明した。それは特別な方法ではなく、「学生団体へのアプローチ」や「大学の研究室へのアプローチ」などを行い、「ソフトバンクのリアルな働き方」を伝える手法だという。これに加えて、少しユニークな活動も行っているそうだ。

源田氏:一つ目は「No.1採用」です。導入して8年目になり、テクノロジーやスポーツなど、何かの分野で1番の実績を持つ人が対象で、面接などはなくプレゼンによる選考を行うというものです。二つ目が採用直結型の「就活インターン」です。「就活インターン」の特徴は、実際の業務環境で就労体験をしてもらうということです。例えば、PCや携帯電話、社員証も提供し、期間内は社員と同様に働いてもらいます。

  • 就活インターンの実績

源田氏によると、就活インターン経由で採用した学生の離職率は低く、またハイパフォーマーの出現率が高いそうだ。これもリアルな仕事を体験してもらい、ソフトバンクでの働き方を確認してから入社していることが起因しているのかもしれない。

地方創生インターン

なお、ソフトバンクでは通常の就活インターンとは別に「地方創生インターン」も行っている。これは企業色をほぼ出さず、ICTを活用した地方の課題解決策を考えるというものだそう。そのため、ソフトバンクには興味がなくても、地方創生に興味を持つ学生が参加するプログラムとなっている。

源田氏:一回のプログラムに対して1,500程度の応募があります。このインターンでは、インターン生がICTを活用した地方自治体の課題解決策を市長に提案し、採択されると市の予算でその提案を実現するというものです。去年は兵庫県と京都府の廃校活用に向けたイベントが実現しました。年間2件程度の提案が自治体に採用され、予算をつけて実現されています。

また、これ以外にも、グローバル採用や技術力などを評価する「ハッカソン採用」も行っているそうだ。

AIによる採用活動の効率化

様々な角度で多様な人材に接する採用活動のため、業務の効率化は必須となる。ここで紹介されたのが、IBMの「Watson」(以下、ワトソン)の活用だ。ソフトバンクは2017年5月29日から、新卒採用のES選考でワトソンを活用している。

源田氏:ESの内容はいわゆる作文で、これをワトソンでジャッジしています。ワトソンが合格基準に満たしていないと判断したESについては、改めて人の目でもチェックする仕組みにしていますが、ワトソンによる判断と人による判断のずれは極めて少ないです。

  • ワトソンを用いた選考

この導入により、ESの選考工数は1/4にまで圧縮できたそうだ。またワトソンという一つの評価軸による、より公正・公平な評価の確立と業務効率に寄与したと捉えているとしている。

次回はメルカリの人材戦略について紹介する。