今回は住まいと防災がテーマのシリーズですが、災害にはいろいろあります。その地域の固有の災害もあれば、敷地に弱点があるケースもあります。その中で、「地震」は日本の災害の代表格で、ほぼどの地域にも被害を及ぼします。そのために今回は地震をテーマに、住まいの取得を考えるにあたって、災害リスクを少なくするにはどうすれば良いかを考えてみましょう。
建物と違って地盤の良し悪しは見た目にはわかりにくいこともあり、残念ながら総じて関心が薄いように感じています。しかし地盤に問題があれば、その上にどんな堅固な建物を建てても全く意味がありません。そのために今回は地盤の問題を中心に地震に強い住まいを考えてみましょう。
地震が発生して地盤が強い衝撃を受けると、今まで互いに接して支えあっていた土の粒子がバラバラになり、地盤全体がドロドロの液体のような状態になる現象のことを液状化といいます。液状化が発生すると、地盤から水が噴き出したり、また、それまで安定していた地盤が急に柔らかくなったりするため、その上に立っていた建物が沈んだり、傾いたり、地中に埋まっていたマンホールや埋設管が浮かんできたり、地面全体が低い方へ流れ出すといった現象が発生します。
当然、地盤が弱ければ地震が起きなくても不動沈下の原因となります。谷や海の埋立地、盛り土の土地、もともと海抜の低い地域などは、原則として何も対策を講じなければ、その上の建物は間違いなく砂上の楼閣になってしまいます。どうしてもそうした土地に住まなければならないのであれば、地盤がどのような状況であるかを正確に調べて必要な対策を講じることが大切です。
地盤の強さとは
下図は戸建て住宅の一般的な基礎の形を示しています。基礎の下に敷く割栗石等は、地盤を強化するためのものでしたが、現在は地盤調査を行い、その結果に応じた基礎とするために必要性が薄くなり、簡略化される傾向にあります。赤の矢印が基礎を支える地盤の強さを示しています。地盤の強さが不足しているときは、基礎の幅を広くして補います。矢印一つの力が1tとすると、図の地盤は5tの力で基礎を支えていることになります。地盤の強度が弱く、矢印一つが800kgしかなければ、基礎の幅を広くして、矢印を7本にすれば、同等以上の基礎を支える力となります。
地盤が極端に弱い時は、基礎の幅を隣の基礎とつなげて(ベタ基礎)、建物の配置全体に連続させます。ただし、基礎そのものの重さも増えますので、地盤の強さもその分必要となり、イタチごっこのようになりかねません。
そのために極端に地盤が弱い時は、杭を打ったり、地盤を固めるものを注入したりと、地盤を補強する方法を検討します。どの方法を選択するかは、その敷地の地盤の状態や地質、支持地盤までの距離などによって判断します。
※参考: 土間コンクリートは基礎ではない
床下をコンクリートで覆うケースはありますが、上から見た感じではベタ基礎と区別がつかない場合もあります。勘違いされているケースもかなりあり、注意が必要です。土間コンクリートは簡易なメッシュ状の鉄筋は入っていますが、構造体ではありません。
地盤補強の方法
下記に示す地盤の補強方法は主なもののみで、この他にもいろいろあります。広く表層改良する場合は別として、補強は基礎の下に行うものですので、建替えなどで建物の位置が変われば、その都度補強が必要となるかもしれないことも想定しておかなければなりません。また表層改良はセメント系固化材などで固めますので、その後地下室等は掘りにくくなります。
低地等で自然な軟弱地盤のケースの他に、盛り土、海・谷・河川等の埋め立て、廃材・産業廃棄物の埋設など人工的な軟弱地盤も少なくありません。盛り土をした土地は建物を支えるに十分な耐力がないだけでなく、周辺の土地への影響も少なくありません。
昨年、土盛りが原因の熱海の土石流が大きな被害を発生させたことが話題になりました。規模如何にかかわらず、安易な土盛りは先々のリスクを大きくします。
見えない部分だけに注意が払われないことが多いのですが、砂上の楼閣にならないように、住むべき地域を選定するか、適切な補強を施して災害リスクを小さくすることが、命と財産を守る第一歩です。