災害は自然災害だけではありません。敷地内、家の中にも実は危険がいっぱいあるのです。内閣府では2020年7月31日付で「高齢社会白書」を公開しました。それによると、高齢者に限らず実に多くのトラブルが家の中で発生しているのが分かります。住宅内の事故の発生率は当然ながら高齢者がいくらか上回るものの、65歳未満の住宅内での発生比率も全体の3/4近くに及びます。

暮らしの中にはどんな危険がある?

住まいの中には、実はいろいろな危険があるのです。もちろん建築関連の法律で建物の中の危険を防止する規定がいろいろ定められています。しかし住み手の家具の配置や選択を間違えれば、新たな危険を生み出しかねません。

最近は、有害な化学物質の発生しない建材が作られ、昔ほど健康被害が話題に上ることはなくなりました。安全な建材を作ることはさほど難しくありませんが、保管に注意が必要です。有害物質を含む建材と同じ場所に保管すると、有害成分が移ってしまい意味がなくなります。そのために別の場所に保管する必要があります。住まいに置き換えれば、建材は安全なものを使っても、家具などにその配慮が無ければ、効果は薄くなるということになります。

下記は考えられる主な住宅内の事故とその箇所です。住まいの作りや設備によっては、そのほかにもいろいろあると思います。

転落 階段・窓・バルコニー
転倒 段差・コード・階段
ケガ 地震時等のモノの落下、モノの角、刃物
火事 漏電・キッチン・その他
水の事故 バスタブ・洗濯機
ヒートショック 家の中の温度差
化学物質等による健康被害 内装材・家具・防蟻処理
窒息 誤飲等

不注意な家具の配置は転落の元

腰窓、バルコニー、吹き抜け等の手すりに面して家具などを置くことは避けましょう。小さな子供は椅子などに乗って、窓や手すりから身を乗り出します。大人でも、マンションのサービスバルコニー(エアコンの屋外機等を設置するためのバルコニーで、人が出入りするものではない)部分のサッシにベッドを置いてあり、酔って帰ってベッドからバルコニーに出て転落した事故がありました。

しかし、狭い部屋で窓に接して家具を置かざるを得ないケースが多いと思います。2階の腰窓に椅子やベッドを配置する場合は。窓枠に手すりを追加してください。屋上バルコニーなどに屋外家具を置く場合は手すりから離して設置してください。住宅展示場の家具を配置する際は、そうした危険のないように気を配っていました。しかし、そうした気遣いのない展示場も多くあり、子供づれで見学するときは子供から目を離さないでください。

基本的に幼い子供一人でバルコニー等に出すのは問題です。上階の住人が子供をバルコニーで遊ばせ、子供が手にしていたコップをバルコニーから投げ捨てて、マンションの玄関外にいた私の目の前で割れて、破片が跳ね返った経験があります。子供の背丈であれば目に刺さった可能性もあります。バルコニーのサッシには目を離さざるを得ないときなどに備えて、子供の手が届かない位置に補助錠をつければ安心です。

アイランドキッチン・対面式キッチンは要注意!

キッチンは危険がいっぱいの場所です。火もあり、刃物もあります。内閣府の高齢者白書によると、65歳未満の場合、事故発生場所の40%弱がキッチンで発生しています。高齢者のキッチンでの発生率は20%未満で反対に居室での事故が40%以上と多くなっています。特にオープンなアイランドキッチンなどは若い世代に人気ですが、子供やペットには危険が多いレイアウトとなります。

チャイルドロックを活用しよう

浴槽などはわずかな水量でも危険だそうです。災害に備えて、浴槽に水をためたままの家庭も多いと思いますが、子供にはとても危険です。ユニットバスや洗濯機、その他家電製品には、チャイルドロックを活用しましょう。使っていないときは元栓を閉めたり、プラグを抜いたりすることを習慣づけることも大切です。

コンセントは多めの方が安心!

高齢になればなるほど、電気に頼ることが多くなります。最悪ベッド中心の生活になれば、ベッド回りにどれほどのコンセントが必要になるでしょうか。電話・TV・ラジオ・PC・電気毛布・手元照明・スマホ充電…と色々必要です。ある程度からだを動かせるのであれば、ポットやトースター、電子レンジ、小型冷蔵庫などがそばにあると自分で簡単な食事は作れます。そのためのコンセント(アース付きを含む)も必要となってきます。

また、洗濯機、エアコン、冷蔵庫などのための特定のコンセント以外は、床から20㎝程度のところにあります。しかし、フリーの多目的なコンセント以外は、机の上等の位置にある方が便利なケースも少なくありません。なるべく配線距離を短く、タコ足配線にならない工夫を新築時、リフォーム時に考えておきましょう。

屋外も危険がないかチェックしよう!

戸建住宅であれば、門から玄関までをチェックしてどんな危険があるか考えてみましょう。アプローチ周りだけでなく、敷地をぐるりと回ってチェックしてみましょう。最近はサッシやシャッターが外壁から飛び出しています。角はかなり鋭利なものですので、腰窓などのエッジは子供の頭の位置になることも考えられます。走り回って頭に当たらないか…など、屋外の危険を調べてみましょう。マンションの場合も同様に、親がまずは建物周辺、共用部分をチェックして回りましょう。

家具等の転倒対策については過去のレポート「住まいと安全とお金(21) 耐震リフォーム(4)」を参照ください。