連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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これまで、老後破産を回避するためには「先取り貯蓄」と「支出のコントロール」が大切だというお話をしてきました。収入からまず貯蓄をして、残ったお金で支出するという流れを作れば、自動的に、そして計画的にお金がたまっていきます。結婚したら、それを夫婦2人でやっていくことになります。今回はそのための方法をご紹介します。

結婚したら、家計はどう変わる?

シングルであれば、収入も貯蓄も支出も、すべて自分1人のもの。でも、結婚するとそれが「1人のもの+2人のもの」になります。「1人のもの」は結婚前にためたお金と「お小遣い」、2人のものは「家計」と「2人でためるお金」です。

結婚したら、自分のお金と2人のお金の両方を管理していくことになるわけです。大変なようですが、最初にしっかりルールを作ってしまえば、あとは1人のときと同じように、自動的・計画的にお金がたまっていきます。

ルール作りの前に必要なのは、「お互いのお金の状況」を明らかにすること。結婚したらまず、お互いの収入、貯蓄額を相手に伝えます。カードローンや奨学金など、借金がある場合も隠さないことが重要です。それぞれのお金の状況がわからないと、貯蓄や支出に回せるお金の額が決められないからです。それに、あとになって「貯蓄がゼロだった」とか「借金があった」ということが発覚すると、2人の関係にヒビが入ることにもなりかねないので、すべてオープンにすることが大切です。

結婚したら、家計はどう変わる?

「家計用の口座」を新設しよう

結婚前の貯蓄や借金は、本人自身のものなので、貯蓄はキープし、財形貯蓄や自動積立定期預金をしている人はそのまま続けましょう。借金は本人ができるだけ早く返済するようにします。

1人のときと違うのは、夫婦それぞれの給与振込口座とは別に、家計用の口座を作る点です。新規に作ってもいいし、どちらかの使っていない口座を利用するのもよいでしょう。

そこへ、毎月一定額を夫婦それぞれが入金して、まず毎月決まった額を貯蓄します。家賃や光熱費などはその口座から振り込んだり引き落としたりし、食費や日用品などの買い物には、その口座から引き出した現金を使います。光熱費や食費をクレジットカードで払う場合は、その口座をカード代の引き落とし口座にするのが理想。

つまり、生活費はすべて家計用口座で管理するわけです。そうすれば、家計簿をつけなくても支出額が把握できますよね。

ただ、大きな支出があると、その月はいつも2人が入金している額では足りなくなることもあるので、家計口座とは別に、特別費の口座またはサイフを用意します。特別費として考えられるのは、旅行や帰省の費用、年払いの保険料やNHKの受信料、季節ごとのクリーニング代、冠婚葬祭にかかるお金など、毎月あるわけではないけれど、年単位で必要になるものです。

これらが年間でどのくらいあるか計算して、12で割った額を家計費から毎月取り分けておくか、ボーナスで準備します。こうしておくと、ある月だけ支出が多くなって赤字になるということが避けられます。

残りはそれぞれの「お小遣い」に

家計に入れた残りのお金は、それぞれの「お小遣い」。昼食や飲み会の費用、化粧品や美容院代などはそこから支出します。何が家計費で何がお小遣いかなどは、2人で話し合って決めればOK。要するに、家計用の口座やサイフを作って、貯蓄や生活費の支出を管理していけばよいのです。二人がいくらずつ家計に入れるかは、それぞれの収入に合わせて決めます。収入や支出が変動したときは、それに合わせて変更しましょう。

カップルによっては、例えば夫が家賃を払い、そのほかの支出は妻が支払う、といった形をとっているかもしれません。この方法だと、夫が家計の支出に無関心になったり、家計費と妻の小遣いの区別が不明確になりがち。今、このやり方をしているカップルは、家計用口座の形にすることを検討してみましょう。これまでお金を管理するルールがなかったカップルも、改めてルール作りを考えてみてください。

このシリーズの第3回に書いたとおり、独身時代と結婚して子供が生まれるまでの期間は、人生の「ためどき」。ここできちんとお金のルールを作り、しっかりためておけば、そのあとの人生のゆとり度が高まります。そのためには、お金のことを2人で話し合って決め、2人で管理していくことが大切です。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。