連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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アラサーも気になる「老後破産」。この言葉を見聞きするたびに、将来のことが何となく心配になりますよね。でも、「破産」というのはお金の問題ですから、お金で解決できる、ともいえます。当然ながら、お金があれば破産しなくてすむわけです。
では「老後破産しないためにはいくら必要なの?」といことになるわけですが、残念ながら30年以上先のことを予測するのは難しく、現時点で「いくら」という答えを出すことはできません。老後破産しないために今からできることは、できる範囲でコツコツお金をためていくことです。
「貯蓄」の本当の目的とは?
貯蓄するのは、老後に使うお金をためるためというより、その手前にあるお金のかかるイベントを借金することなく乗り越えるため。その結果として、老後のためのお金も準備できることになります。
また、若いうちからコツコツお金をためることは、貯蓄の額を増やすことだけが目的ではありません。もう1つ大切な目的があるのです。それは「お金を自分でコントロールする力」を身につけることです。
このシリーズの第2回で、貯蓄のポイントは「先取り」というお話をしました。収入からいろいろなものを支出して残りをためるのではなく、収入からまず貯蓄して、残ったお金で支出するのです。先取り貯蓄なら計画的にお金がためられます。そしてそれは、お金を自分でコントロールするということでもあります。
「お金がためられない人」がやるべきこと
入ってきたお金を支出して残りをためるというやり方でも貯金はできるかもしれません。でもそれは、無計画に支出をしているということです。「先取り」の場合は、貯蓄したあとのお金で支出するわけなので、決まった額の中で計画的にお金を使っていく必要があります。つまり、自分で支出をコントロールしていかなければならないのです。
お金がためられない人というのは、ためられないという以前に、支出をコントロールできていないのです。欲しいものがあったら何も考えずに買ってしまうという体質では、お金はためられません。ですから、ためられない人はまず、支出をコントロールすることを身につける必要があります。「1カ月に使えるお金が○円だから、ランチは1回○円くらいまでにしよう」とか「今月や出費が多かったから、月末までは買い物を控えよう」というように、予算の範囲内でどうやりくりするかを考えながらお金を使うことが、計画的な貯蓄につながるのです。
先取り貯蓄をするためには、毎月いくら貯蓄するか決めなければなりません。今、支出より収入の方が多くて毎月お金が残る人は、その金額に少しプラスアルファした額にするとムリなく先取り貯蓄ができるでしょう。 毎月収支がトントンという場合は5,000円あるいは1万円くらいから始めて、少しずつ増やしていくのがおすすめです。最初から貯蓄額を高く設定してしまうと、使えるお金が足りなくなって、せっかくためたものをとり崩すことになってしまうからです。最初はムリしないことが大切です。
また、5,000円とか1万円とか、キリのいい金額にこだわらないこと。「1万円はちょっとキツいから最初は8,000円から」とか「1万円よりもうちょっと頑張れそうだから1万2,000円」というように、フレキシブルに決めましょう。
先取り貯蓄の目標額
目標としては、手取り月収の15~20%程度を貯蓄したいところ。実家住まいの人なら30%以上ためられるはずです。それを、第2回で紹介したとおり、財形貯蓄や自動積立定期預金で積み立てていけば、いつのまにかお金がたまっていきます。それと同時に、支出をコントロールする体質が身につけば、お金に振り回されることがなくなり、老後破産のリスクも小さくできるはずです。
執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。『図解 初めての人の株入門』(西東社)、『キチンとわかる外国為替と外貨取引』(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。