連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。


日本経済は高度成長時代からバブル期を経て、緩やかな下り坂に入ったといえるでしょう。その下り坂で転ばないために必要なのが、お金に関する「リテラシー」です。

お金について「わからない」とか「面倒くさい」と言う人はたくさんいます。高度成長時代やバブル時代はそれでも何とかなりました。でも、今はそんなことはいっていられません。

老後破産を回避するお金の「読み書き能力」とは? (画像はイメージ)

最低限身に付けるべき金融リテラシー

現役世代の収入が昔ほど増えなくなっている一方で、「節約できない支出」は確実に増えてきています。「節約できない支出」とは、税金・社会保険料のこと。国の財政は少子高齢化で厳しくなっていて、それをカバーするためには税金を増やしたり社会保険料をアップさせたりせざるをえません。消費税は税率の引き上げが予定されており、年金保険料、健康保険料、介護保険料も少しずつアップしています。こうした負担は今後、増えることはあっても減ることはありません。

そんな中で、日々の家計を管理しながらマイホームの購入費や子供の教育費を工面し、老後破産しないための自分年金づくりをしなければならないのですから、「どんぶり勘定」や「行き当たりばったり」では絶対にムリ。お金ときちんと向き合って、管理していくことが不可欠です。そのために必要なのがお金に関する「リテラシー」です。

リテラシーというのは、日本語にすると「読み書き能力」。金融リテラシーとは具体的にはどんなことを指すのでしょうか。金融庁の金融経済教育研究会が「最低限身に付けるべき金融リテラシー」として挙げているのは次の項目です。

【最低限身に付けるべき金融リテラシー】
・適切な収支管理(赤字解消・黒字確保)を習慣にする
・ライフプランを立てて必要なお金の準備をする
・金融取引では契約内容や相手が信頼できるかどうかを確認する
・ネット取引は対面取引と違う点を理解する
・金利(単利、複利)、インフレ・デフレ、為替、リスク・リターン、金融経済情勢などに応じて金融商品を選ぶ
・金融取引のコストを把握する
・自分に必要な保険や必要額を理解する
・住宅ローンは、ムリのない額を借り入れて返済計画を立てる
・カードローンやクレジットカードを無計画・無謀に利用しない
・金融商品はハイリスク・ハイリターンであることを理解する
・資産形成では資産分散、時間分散、長期運用が大切であることを理解する
・金融商品の利用では専門家などの知見を活用する

これを見てみると、お金に関する知識だけでなく、それを生活の中に生かす能力が必要とされていることがわかります。また、この連載で老後破産を回避する方法として繰り返し述べてきた、

・支出をコントロールして計画的に貯蓄する
・住宅ローン以外の借金はしない
・投資信託を時間をかけて(長期)積み立て(時間分散)で買っていく

も含まれています。

金融リテラシーを身につけるには?

アラサーは金融リテラシーについて学校で教わらなかった人が多いでしょう。だとしたら自分で身につけなければなりません。そのためのツールはネット上にいろいろあります。

例えば、金融広報中央委員会のサイト「知るぽると」にある「お金の知恵シリーズ」、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会のサイトにある「くらしとお金のワークブック」などに一度目を通しておくとよいでしょう。「知るぽると」にある「金融リテラシークイズ」から入ってみるのもいいかもしれません。一度身につけた金融リテラシーは一生モノ。老後破産を回避するのにも役立ちます。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。