連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。


マネーに関する講演をしたり、個人の方のご相談を受けたりする中で、アラサーの人から「親に介護が必要になったときのお金を準備しておいた方がいいですか?」と聞かれることがあります。

50代以上の人が介護の心配をするのはともかく、若い世代でも介護を気にしている人がいるのですね。そこで今回は、アラサーと介護について考えてみます。

アラサーと介護について考えてみよう(画像はイメージ)

介護にはどのくらいのお金がかかる?

高齢者介護の問題は新聞、テレビ、ネットなどいろいろなところで取り上げられるので、いやでも目に入ってきますよね。アラサーの親世代は今はまだ元気でも、将来介護が必要になるかもしれず、そうなったら介護そのものや、介護にかかるお金がどうなるか、気になる人もいるでしょう。

ただ、公的介護保険の仕組みや介護の実情がよくわかっていないために、必要以上に心配している人もいるようです。そこで、そのあたりをざっと見てみましょう。

日本には介護の必要な人を社会全体で支える仕組みとして、「公的介護保険」があります。40歳以上の人が保険料を払い、原則として65歳以上で「介護が必要である(要介護)」と認定された人が、介護保険のサービスを利用できます。サービスを利用した場合は、その費用の1割あるいは2割を自己負担します。

では、65歳以上で介護の必要な人はどのくらいいるのでしょうか。65歳~69歳の人で見てみると、介護が必要な人は男性2.5%、女性2.0%と、ごくわずか。年齢が上がるとともに比率はアップしますが、80歳~84歳でも男性17.9%、女性27.3%と3割以下です。85歳~89歳になると、男性32.5%、女性48.8%となり、このくらいから介護の心配が現実的になってくるといえるでしょう。

要介護度は1~5までの5段階あり、介護の必要性が最も高いのが要介護度5です。介護が必要な人のうち、要介護度1と2がそれぞれ約20%。要介護より介護度の低い要支援1、2と合わせると全体の6割を占めていて、半数以上の人は介護度が比較的軽いといえます。

高齢になっても介護を必要としない人がいるし、要介護度の低い人も多いということは、知っておいていいでしょう。

アラサーが介護に関わるときに覚えておくべきポイント

それでも、アラサーが介護に直面する可能性がないわけではありません。そんなときのポイントは2つあります。

1つは、「親の介護は親のお金でする」ということ。現役世代は子供の教育費や住宅ローンの負担もあるし、自分の老後資金も貯めなければなりません。そんな中で親の介護費用をまかなうのはムリ。むしろ親の方が、比較的手厚い公的年金を受け取っていたり、ある程度の貯蓄もあったりしてゆとりがあるケースが多いはず。介護にはそのお金を使いましょう。アラサーが親の介護費用を負担すると、自分が老後破産することになります。

もう1つは「介護離職しない」ということ。以前にも書きましたが、介護のために仕事を辞めてしまうと収入が途絶えることになり、自分の老後資金が貯められなくなる上、公的年金の額も減ってしまいます。介護離職は老後破産に直結するので、絶対に避けるべきです。

介護する人を支援する仕組みとして、介護休業、介護休暇という国の制度があります。それとは別に、介護のための休暇や短時間勤務、在宅勤務などの制度を独自に設けている会社もあります。そういう制度はもらさず使いましょう。 介護離職しないためには、介護を自分一人で抱え込まず、きょうだいや親戚のほか、ケアマネージャーなどの専門家の手を借りて、チームで取り組むことも大切。公的介護保険のほか、自治体が独自に設けている高齢者向けのサービスなどもあるので、使える制度や手段はフル活用しましょう。

そうすれば、介護する人自身の肉体的・精神的な負担が軽くなり、老後破産を回避することにもつながります。

※画像は本文とは関係ありません。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。