連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
アラサーは老後を迎えるまでに30年あまりあります。その時間を活用して、積立投資でコツコツと"自分年金"を作ることが、老後破産の回避につながります。自分年金作りの効率を上げるためには、運用にかかる手数料と税金という2つのコストを抑えることが大切です。
積立投資にかかる2つのコストに注意
アラサーであっても、老後の生活の柱は公的年金です。でも、その水準はだんだんに下がっていくことがほぼ確実なので、アラサー世代が老後破産しないためには、公的年金で不足する老後資金を自分で準備する必要があります。
その方法として有効なのが、投資信託を毎月一定額で購入する"積立投資"です。積立投資は短期間で大きな利益をねらうのではなく、時間をかけて利益を積み上げていくことを目指します。
コツコツと積立投資をしていく上で、重視すべき点があります。それは"コスト"。運用にかかるコストをできるだけ抑えることで、運用効率がアップします。コストには、手数料と税金の2つがあります。
手数料は、積立で買うファンド(投資信託の商品)を選ぶときのポイントの1つです。投資信託にかかる手数料には、購入するときの販売手数料と、保有している間に負担する運用管理費用(信託報酬)があります。
販売手数料のかからないノーロードのファンドであれば、手数料の分まで運用に回すことができます。運用管理費用はファンドの資産から差し引かれるので、費用が安い方が運用効率は高くなります。一般的に、インデックス型というタイプのファンドは、そうでないファンドより運用管理費用が低いので、積立投資をするならノーロードのインデックスファンドが候補になるでしょう。
コストとして意外に大きいのが税金です。投資信託の場合、保有している間に得られる分配金と、売却したときに得られる利益に約20%の税金がかかります。例えば、10万円の利益が得られても、そのうちの約2万円が税金として差し引かれて手取り額は8万円弱になってしまうのですから、20%ってすごく大きいですよね。そこで、税金がかからない制度を利用しましょう。
税金のかからない確定拠出年金を活用しよう
そこでおすすめしたい制度の1つが"確定拠出年金"です。専用の口座で投資信託を積み立てていき、60歳以降に引き出す仕組みで、運用中に得られた利益には税金がかかりません。
確定拠出年金には企業型と個人型があります。企業型は、確定拠出年金を導入している企業に勤めている人が利用できます。個人型が利用できるのは、自営業者や会社に確定拠出年金がない会社員で、今年からは公務員や専業主婦も利用できるようになりました。
特に企業型の場合、確定拠出年金に加入していても、制度の仕組みや税制メリットを理解していない人が多いようです。また、「運用のことはよくわからない」とか「元本割れはイヤだ」といった理由で、毎月の掛け金を預金や保険で運用している人もたくさんいて、何とももったいないなぁと思います。
預金や保険は金利が低く得られる利息はわずかなので、「利益が非課税」というメリットが生かせません。確定拠出年金は口座管理手数料がかかるため、低金利の預金や保険では、得られる利息より口座管理手数料の方が高くなりコスト割れする可能性もあります。ですから、確定拠出年金は、投資信託で積極的に運用するのがおすすめです。
2018年からは積立NISAもスタート
運用益が非課税になる制度にはNISA(少額投資非課税制度)もあります。これは、20歳以上の人なら誰でも利用できます。金融機関にNISA専用の口座を作ると、そこで購入した株や投資信託については、売ったときに得られる売却益や、購入して保有している間に受け取る配当や分配金が非課税になるという仕組み。来年から、積立専用の"積立NISA"もスタートする予定です。
もちろん、NISAと確定拠出年金は併用できます。確定拠出年金は積み立てたものを60歳まで引き出せないので、着実に自分年金作りができます。ただ、毎月の掛金には上限があるので、プラスアルファで運用したい場合はNISAを使いましょう。確定拠出年金プラスNISAで自分年金を作っていけば、老後破産を回避することにつながります。
※画像は本文とは関係ありません。
執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。