連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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人生には予測のできない出来事がつきもの。大きな事故や重篤な病気が老後破産につながることもあります。そんなときに備える方法の一つが"保険"です。
とはいえ、あれもこれも心配とばかりにいろいろな保険に加入すると、保険料の負担が重くなって十分な貯蓄ができず、老後資金が不足するということも考えられます。そこで、アラサーにとって必要な保険、必要でない保険は何なのかを見ていきましょう。
アラサーにとって必要な保険とは?
予想外の出来事が起こって多額のお金が必要になったとき、貯蓄でそれをまかなうことも可能です。でも、お金が貯まるまでには時間がかかるので、お金が必要なとき貯蓄では不足することも出てきます。
それに対して保険は、あらかじめ受け取れる金額が決まっているので、必要なときに多額のお金が用意できるというメリットがあります。ただし、保険は保険金が受け取れる条件が決まっていて、それ以外の目的にお金を使うことができないことが多くなっています。例えば、医療保険は入院したり手術を受けたりしたときにしかお金を受け取れません。お金の使い道が縛られてしまうというデメリットもあるわけです。
そういった点を踏まえて、保険別に◎(必要度が高い)、○(必要)、△(どちらともいえない)、×(必要なし)をつけてみました。
死亡保障の保険(終身保険・定期保険):◎の人と×の人がいる
死亡保障の保険は、必要な人とそうでない人がはっきり分かれます。必要なのは、その人が亡くなったときに経済的に困る人、いわゆる扶養家族がいる人です。したがって、シングルの人には基本的に不要。結婚していても共働きならなくても構いません。
逆に必要なのは、子供がいる人です。特に子供が生まれたばかりのときに一家の大黒柱に何かあったら、その子が成人するまでの養育費や生活費を残さなければなりません。ですから、子供が生まれたらすぐに、死亡保障の保険に加入しなければなりません。
共働きで子供を育てている人は、夫婦どちらかが亡くなっても生活費や子供の教育費が負担できるなら、保険は不要ですが、1人の収入では足りないようなら、その分を保険で手当します。
死亡保障の保険のうち、終身保険は貯蓄性があり保障が一生涯続きますが、そのぶん保険料はとても高くなっています。死亡保障が必要なのは子供が成人するまでなので、その期間だけ、掛け捨てで保険料の安い定期保険を利用するのが賢いやり方です。
医療保障の保険:△
重い病気で長期に入院したりすると医療費がかかって貯蓄が減っていく、ということを心配する人もいると思いますが、日本の公的医療制度はとても手厚くて、病院で治療を受けたり入院したりしたときの医療費の自己負担額は原則として3割ですみます。そのうえ、1カ月の自己負担がどんなに高額になっても、大抵の場合は約9万円を超えることはありません。さらに、加入している健康保険組合によっては、1カ月の自己負担額がもっと少なくてすむこともあります。
ですから、医療費が大きな負担になるということは実はあまりないのです。ただ、入院すると食事代がかかり、身の回りのものなどを買うこともあします。また、個室などを利用すると差額ベッド代がかかることもあるので、そうした出費に備えて「入院1日あたりいくら」という形で保険金が受け取れる保険会社の医療保険に入っておくことも考えられます。ただ、その場合も会社員・公務員であれば1日当たりの給付金は5,000円で十分です。
働けなくなったときの保険:○
老後破産につながるのは病気やケガそのものより、それによって働けなくなり収入が途絶えることです。こうした状況に備える保険として、損害保険会社の所得補償保険があります。勤務先を通して加入できることがあるのでチェックしてみて。
最近は生命保険会社もこのタイプの保険を出してきていますが、例えば「働けない」というのがどのような状態を指すのか、精神疾患も対象になるのかどうかなど、保障の内容がまちまちです。十分比較検討してよいものが見つかり保険料がそれほど高くなければ、加入してもよいかもしれません。
個人年金保険:×
老後が心配だからといって、個人年金保険に入るのはNG。詳しくは第17回「老後が心配だから個人年金」はNG!をお読みください。
介護保険:×
将来、要介護になったときにお金がかかるのが心配だから保険会社の介護保険に入っておいた方がいいかも、と考える人もいるかもしれません。心配な気持ちはわかりますが、要介護にならないかもしれないし、なったとしてもどのくらいお金が必要か、今の段階ではわかりません。なので、介護の費用も含めて、老後資金として貯蓄しておけばよいでしょう。
自動車保険:◎
車に乗る人にとって自動車保険は必須です。交通事故の加害者になると、1億円以上の損害賠償を求められることもあります。そうなったら一生かかっても払い切れません。法律で加入が義務づけられている自賠責保険だけでは補償額が不足するので、任意の自動車保険にも必ず加入しておきましょう。
終わりに
そもそも保険にはどんなものがあり、それぞれどういうものなのかがわかっていない人もいると思いますが、ここに挙げたものを覚えておけばOKです。その上で、自分に必要なもの、そうでないものを知って、必要なものだけに加入するようにしてください。
※画像は本文とは関係ありません。
執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。