連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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今のアラサーが高齢者になったときも収入の柱となるのは公的年金ですが、その水準は、今の高齢者が受け取っている年金の水準より低くなると見込まれます。公的年金だけでは老後の生活費はまかなえないので、「自分年金」を用意しておく必要があるわけです。でも、だからといって、アラサーの人が個人年金保険に加入するのはお勧めしません。

そもそも「個人年金」とは?

個人年金保険というのは、民間の保険会社が販売している貯蓄型の保険です。加入したときから毎月あるいは毎年保険料を払って、65歳など契約時に決めた年齢から一定期間、年金を受け取る仕組みです。一見すると「自分年金」づくりに向いているように見えます。また、昔は個人年金が「おトク」な時代もありましたが、今は全く違います。

「老後が心配だから個人年金」はNG!

個人年金保険は、加入者が払った保険料を保険会社が運用します。保険会社は、どのくらいの利回りで運用できるかを計算して保険料を決めます。この利回りを予定利率といいます。予定利率は、加入したときのものが保険契約が終了するまでずっと適用されます。かつては予定利率が高い時期もありましたが、今は過去最低レベル。30歳で契約して65歳から年金を受け取る契約だと、この最低レベルの利率が35年も適用されることになってしまいます。

「それなら、予定利率が上がったときに加入し直せばいいじゃない」と思うかもしれませんが、個人年金保険のような貯蓄型の保険は、途中解約すると、返ってくるお金(解約返戻金)が払い込んだ保険料の総額を大きく下回ります。つまり、解約するとソンなのです。

「年金保険料を払わない」のは絶対NG

「国の年金は当てにならないから年金保険料を払うのをやめて、個人年金保険に入ろう」なんていう人を見かけますが、そんなことは絶対にしてはいけません。

公的年金の財源が厳しいことは確かですが、破たんして将来受け取れる年金がゼロになるということはまずないと考えてよいでしょう。もし国の年金が破たんするような状態になったとしたら、民間の保険会社が扱っている保険だって契約どおり年金が支払われるとは思えません。

それに、公的年金の財源は、加入者の払った保険料が半分で、残り半分は税金です。一方、個人年金の財源の保険料だけ。払った保険料に対する年金の受取額の割合は、ある程度長生きすれば公的年金の方がずっと高くて「おトク」なのです。

だから、公的年金の保険料はきちんと払って、しっかり年金を受け取れるようにすることが大切。会社員は年金保険料を払いそびれることはありませんが、自営業の人や20歳以上の学生、アルバイトやフリーターの人などは、国民年金の払い忘れや滞納がないようにしてください。払い忘れや滞納で年金が受け取れなかったり、受け取る年金額が少なくなったりすれば老後破産に直結します。

自分年金の基本は「貯金」

自分年金づくりに話を戻すと、基本となるのはやはり貯蓄です。預金なら世の中の金利が上がれば預金金利も上がるし、老後資金だけでなく、それより前に必要になる住宅費や子供の教育費などどんな目的にも使えます。ただ、現状では預金金利も過去最低レベルなので、それと併行して、運用することも考えたいものです。

運用で自分年金を作るのに最も適しているのが「確定拠出年金」。毎月掛け金を払って、自分で選んだ金融商品で運用していく仕組みです。原則として60歳まで引き出せませんが、その間の運用で得られた利益は税金がかからず、60歳以降に年金あるいは一時金で受け取るときも税金の優遇があります(確定拠出年金については、また改めてご説明しますね)。

自分年金づくりは大切ですが、お金の使い道が固定されてしまう個人年金保険は若い人には向きません。預金をメインにして、運用もプラスすることを考えましょう。

執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。