連載『「老後破産」を回避せよ! - アラサーから始めるマネー対策』では、FPの馬養雅子氏が、貧困により老後の生活が破綻する「老後破産」をどのように回避すればよいのか、アラサーのうちからできる対策法をご紹介します。
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最近マスコミでよく取り上げられている「老後破産」。高齢になってお金に困り、苦しい生活を余儀なくされるというのはショックですよね。若いとき幸せでも、年をとってから貧しくて惨めだと悲しいもの。逆に、若いときに苦労しても老後が幸せなら人生への満足感があるでしょう。
だからといって、若いうちから「老後のためにお金をためなきゃ」と欲しいモノもガマンし、節約にのめり込むのも問題。若いときには若いときにしかできないお金の使い方もあるのです。
また、「安心して老後を過ごすには○千万円必要!」などという記事などを信じ込むのもダメ。50代の人ならともかく、20~40代の人が老後を過ごすのに必要な金額など、今から予測できるものではないからです。
とはいっても、日本の人口が増えないかぎり、今の現役世代の人たちが受け取る公的年金の水準が現在より低くなることはほぼ確実です。したがって、公的年金だけで不足する老後の生活費を現役時代のうちに準備しておく必要があります。
ただ、老後を迎えるまでにはお金のかかるイベントもいくつかあります。例えば、子供の教育費やマイホーム購入など。そのためには、こうしたイベントにかかるお金の準備を先にしなければなりません。つまり、人生で必要になるお金から順番に、計画的に準備をしていく。そうすれば、老後資金の準備もゆとりをもってできるわけです。
「貯蓄」は老後破産を回避するために不可欠
計画的な資金準備に欠かせないのは貯蓄です。貯蓄体質を身につけることが、老後破産を避けるための第一歩といえるでしょう。
逆に老後破産につながるのが「借金」です。いったんお金を借りると、それを返すのに時間がかかり、返済が終わるまで貯蓄ができません。そのぶんためられる金額が少なくなり、人生全体の資金繰りが苦しくなります。
貯蓄がないから借金してしまう、借金するから貯蓄ができないという負のスパイラルにおちいると、老後を迎える前に破産してしまうことも考えられます。だから、借金は絶対に避けるべき。借りていいのは住宅ローンだけです。
人生には想定外の出来事も起こりえます。病気やケガ、失業などでまとまった出費があったり収入が一時的に途絶えたりしたときでも貯蓄があれば借金せずにすみます。貯蓄は将来のためにも、想定外の出来事に対処するためにも欠かせないのです。
貯蓄ゼロの「おめでた婚」は危険?
こうして考えると、人生において避けたいこともいくつか見えてきます。例えば、貯蓄ゼロの「おめでた婚」、返済能力以上の住宅ローンの借り入れ、子供に教育費をかけ過ぎることなど。住宅ローンや教育費はともかく、貯蓄ゼロの「おめでた婚」がなぜいけないのでしょうか。
「おめでた婚」でも、夫婦それぞれにある程度の貯蓄があればOKです。でも貯蓄ゼロの二人が妊娠をきっかけに結婚するのは「おめでた」くありません。共働きなら結婚してから貯蓄をスタートさせることも可能ですが、女性は出産をきっかけに仕事をやめざるを得ないことも多いのが現実。そうなったとき、夫は2人の扶養家族を抱えることになります。1人の収入では家族3人の生活費をまかなうのが精一杯で、貯蓄するゆとりがなくなってしまうでしょう。
そうならないためには、シングルのときからお金をためておくことが大切です。もし貯蓄ゼロでおめでた婚してしまった人は、少ない金額でもいいのでとにかく毎月貯金すること。そして、出産後できるだけ早く仕事に就いて収入を増やすことを考えてください。
執筆者プロフィール : 馬養雅子(まがい まさこ)
ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)、『明日が心配になったら読むお金の話』(中経出版)など著書多数。オフィシャルホームページ「あなたのお金のアドバイザー」。