「決断力」や「行動力」という言葉を聞くと、これらの力をあげるための秘訣を知りたいと思いませんか? これまでの過去を振り返って、決断力や行動力に自信がないという人も大丈夫。うまくいく方法があるんです!
タイミングを逃さない「ロジカル選力」
「仕事も結婚も」などと、人生は毎日が選択の連続です。一つひとつの選択をうまく選びたいのはもちろんですが、「失敗したくない」という気持ちの方が強いのではないでしょうか? その失敗やリスクを怖がるあまり、選ぶこと自体に尻込みしてしまい、「決められない」「行動できない」と足踏みしている人が多くいるように思います。
例えば、私は企業へ女性活躍やダイバーシティのサポートをさせていただいていますが、積極的にチャンスをつかみにいかない人がいます。せっかく昇進の打診をもらっても、「私なんて……」や「できる自信がない」と尻込みする女性がとっても多いのです。もったいないですよね。
また、女性男性に関わらず、「結婚したいんだけど……」と言いながら、婚活を後回しにしている人にも多く会います。「忙しいから……」「今は仕事に集中したいから」「結婚って本当に必要なのかなって考えちゃって」など、もっともらしい理由を言うのですが、よくよく話を聞くと、「結婚できないかもしれない」という怖さから行動できていないのです。つまり、「逃げている」という“事実”から本人が目を背けている“真実”が見えてきます。
今や人生100年時代。長い人生を焦らなくてもいいのですが、「タイミング」というものはあります。ウジウジ悩んだまま様子見をして、時間ばかり流れてしまい、もうそのチャンスは二度と来ないなんてことが起きたら、きっと後悔してしまいますよね。
だからこそ人生をしっかりデザインして、チャンスを逃さないことが重要です。しっかりタイミングを押さえて選ぶためにも、「ロジカル選力」を磨いていきましょう。
「ロジカル選力」の磨き方
前回、直感や感性を磨く「エモ選力」についてお話しさせていただきました。確かに、直感は一瞬で答えを見出せるとても頼もしい力です。
しかし、楽天の三木谷氏は「直感的に考えたことを理論に落とし込むようにしています。うまくいく要素といかない要素について、直感で感じたことを理論的にフレームワーク化する」と話しており、直感と論理的検証をセットにしています。また、棋士の羽生氏も直感を「論理的思考が瞬時に行われるようなもの」と定義されているように、論理と直感はお互いに補強し合って、パワフルな判断や選択ができるようです。
国立精神・神経センター神経研究所の本田学氏がインタビューで「『理性』は、情動や感情に直線的に支配された行動が成就しがたい時、『急がばまわれ』の言葉通り、それにネガティブなフィードバックをかけて成功性を高める機能を持っています。従って、『理性』といえど感情と同様にあくまでも情動の補助回路だといえます」とおっしゃっているのが、まさにその説明となるかと思います。リスクを減らし、成功の確率をあげるのが、ロジ選力です。
つまり人生の岐路など、大事な選択の時こそ、直感にプラスしてロジカルに考えて選ぶ力が必要だということです。しかし、仕事の場では当たり前に、論理的に考えてロジカルに選んでいても、プライベートになったら、ぷっつりと思考ストップしてしまう方が多いように思います。
まさに、私自身がそうでした。過去になんとなく婚活した時と、「絶対結婚する!」と決めて、仕事と同様にプロジェクトを進めるように婚活をしたのとでは、全然結果が違います。私はこれを「婚マーケ」(結婚マーケティング)と名付けました!
それまでは、毎日合コンに行っても、誰一人として電話番号を聞いてくる人もいなかったのですが……ロジ選択に変えてから、100発100中でデートに誘われるようになりました。そして、彼もいない状態で「私は今年中に結婚します!」と宣言してから8カ月後には入籍をしました。今では私のマーケティング研修の鉄板ネタではありますが、「選択」の威力の成果です。
ここで、私の著書「最良を選べる人になる」でもご紹介している、誰でもすぐ使える「ロジ選力」のフレームをご紹介しましょう。
ここで取り上げているのは、ライフスタイルの違う仲良し4人組で旅行に行く場合の、行き先を選択するステップです。
(Step1) 選ぶ目的をはっきりさせる
(Step2) 必要な情報を得る
(Step3) 良い選択肢をつくる
(Step4)選択肢を評価する
(Step5)選ぶ
この「影響度マトリクス」は、Step4の選択肢の評価をする時に、簡単だけど頼もしいツールです。ポイントは、評価項目(条件)に「重みづけ」をすることです。重みづけとは、条件がいくつかあった場合にどれも同等な重みを持たせるのではなく、優先順位をつけることです。その優先順位を、「10点満点としたら、何点くらいの重要度?」と考え、重みづけをするのです。
例えば、子どもが小さい私の場合、今最も重要なことは、移動が楽なことです。しかし、ある人にとっては、価格が安いことがもっと重要かもしれないし、日本語が通じることが重要かもしれないし、海があることが大切かもしれません。つまり、重みづけは、「目的を達成するために最も影響度の高いこと」を明確にすることであり、価値観や大切にする感覚や感情も含んできます。そういう点で、この重みづけができる影響力マトリックスは、最終的に数字で重要度が明らかになる論理性がありながら、エモの部分も含めての論理性である点が、使いやすく気に入っています。
そして、最後のStep5.では、「プロコンリスト」を使い、未来をシミュレーションしながら、メリットもデメリットも想定して全部書き出します。やり方はシンプルです。紙を取り出し真ん中に線を引きます。左側にメリット(良い点)、右側にデメリット(良くない点やリスク)を書き出します。
大切にしたい条件を考えて、選択肢を評価し、絞り込んだものの最後の最後でもう一歩選ぶ勇気がなく、背中を押して欲しいという時は必ず訪れます。そのような時は、最終的にGOサインを出すかどうかを勢いで決めるのではなく、合理的に納得したうえで決められるのが、このプロコンリストの利点です。
例えば私の友人は、外資系金融の営業だったのですが、長く付き合っている彼氏が転勤族かつ、「家のしきたり」が色濃く残る地方の本家の長男だったので、結婚に迷っていました。
「子どもが欲しいから、彼と結婚するのか、他の人を探すのか、もう決めなきゃいけないギリギリの年齢だから」と悩んでいたためプロコンをすることにしました。彼女にとっては、大好きな仕事を辞めなくてはいけないかもしれない、もしかしたら田舎に引っ込んで長男の嫁としての重責を担うかもしれない、という悩みどころの多い選択です。
そうして次に会った時、とってもスッキリした顔で報告をしてくれました。「すべて書き出してみて、メリットの方が少し多かったから、結婚してもいいと決めたの」と長い春の結末としての選択を、別れではなく結婚にしたのです。
このように、冷静にデメリットやリスクを考え、その際に選んだ結果を具体的にシミュレーションすることで、「これはいける!」と行動に移す自信を得られたり、進めることが怖いと思っても、デメリットやリスクが見えていれば、対策を考えたり、乗り越えられたりするのです。だから、決断力や行動力がない……と悩む人も大丈夫。Stepに従って、選んでみてください。
エモ(感覚)+ロジ(頭)選力は、人生の荒波を乗り切る「サバイバル力」です。経験や知恵、生存本能としての感覚や感情のすべてをフル活用しながらも、冷静な判断を下し、心から私が幸せだと感じられる選択をしてくださいね。 自分を一番幸せにできるのは「自分」だから。ぜひ自分を幸せにする、最良の選択を!
執筆者プロフィール : 杉浦莉起
(株)DELICE(デリィス)代表
ワーク&ライフ エッセンシャリスト(※)/ブランド価値プロデューサー
「もっと素敵なワーク&ライフへ変えるパートナー」として、ダイバーシティ&女性活躍の企業研修や講演、プレミアムな体験価値を届けたい企業の商品・サービスのブランディングサポートを行う。
また、女性バランス力ブランド「The LADY.」を立ち上げ、女性のキャリアx健康(女性ホルモンの影響)の啓蒙活動や、ワーク&ライフ エッセンシャリストの発信も行う。2児を育てるワーキングマザーでもある。
上智大学外国語学部卒後、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)にてCELINEの宣伝広報、P&GでSK-II、パンパースなどブランドコミュニケーション戦略に携わり、最優秀社員賞など多数受賞。
著書に『いつでも最良を選べる人になる~後悔しない選び方レッスン』(ディスカバー21)『1年で成果を出す P&G式10の習慣』(祥伝社)、『がんばりが評価される女性の仕事術』(クロスメディア)『イケダン育成術』(文藝春秋)ほか、多数。
※ ワーク&ライフ エッセンシャリストとは?
本質・上質・私にとって最良を選ぶことで、ワーク&ライフと、自身のブランド価値を、もっと素敵にカスタマイズしていく人
いつでも『最良』を選べる人になる 後悔しない『選び方』のレッスン
現在は、「今日は何を着るか」「何を食べるか」といった簡単なものから、病院や学校の選択、働き方、生き方まで、すべて自分が自由に選ぶことができる時代となっている。自分なりの選択ややり方で、人生をカスタマイズしていくことができるが、一方で多様な選択肢の中から選ぶことに迷いを感じたり、ためらったりする人も少なくないという。同書は、そのような時代の中で「本当に自分が手に入れたいもの」「自分にとっての最良」を選択できる方法を解説している。
杉浦莉起 著
メーカー:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2018.8.26
紙の書籍:1,512円
電子書籍:1,120円
紙+電子書籍セット:2,073円