直感力やセンス(感性)がある人を「羨ましいなー」と思ったことはありませんか? スイスイっと最適な解を選んで、優れた結果や良いものを得られたりしていそうですよね。
直感力は鍛えられる
『楽天』の創業者で、代表取締役会長兼社長でいらっしゃる三木谷氏はかつて、「僕はいつも『右脳と左脳のキャッチボール』と言っていますけれども、直感的に考えたことを理論に落とし込むようにしています。うまくいく要素といかない要素について、直感で感じたことを理論的にフレームワーク化する。イマジネーションをきちんと理論にする。理論からイマジネーションは生まれないけれど、イマジネーションから理論にすることはできる」とおっしゃっています。
新しいことを生み出し、大きな成果を上げていく過程で、「直感力」は大きく影響をするようです。永世7冠を達成し、国民栄誉賞を受賞された棋士の羽生善治氏も、まさにそのままのタイトル、『直感力』(PHP新書)というご著書を出していらっしゃいます。だから、「直感力」ってやっぱりすごいんだなと思う一方で、優れた「直感力」は選ばれし人の特別な能力で、普通の人にはないもの、生まれ持った能力で鍛えることはできないものと思っていませんか?
直感力も、センス(感性)も磨くことができます!
しかも、その方法はとても簡単です。羽生氏も、「直感とは“神の啓示のように降ってくる”ものではなく、『論理的思考が瞬時に行われるようなもの』」と経験の積み重ねの先にあるものとして、鍛えることができるとおっしゃっています。
直感力を上げるには?
直感力を上げるにはまずは、自分の感情に素直になって、しっかりとその感情を感じることです。例えば、「喜怒哀楽」のそれぞれを考えた時、最近すべての感情を味わって人はどれくらいいるでしょうか?
「感情」を味わうというすごく根源的なことが、実は最近は難しいのではないかと思うのです。ポジティブ信仰で、「怒っちゃダメ、落ち込んじゃダメ」と思いがちな人が増えている気がします。しかし大切なのは、いつまでもグジグジと落ち込み続けないとか、イライラをそのまま他人にぶつけてまき散らさないとか、感情のアウトプット(言動)が、きちんとマネジメントされ、コントロールできるかということです。感情自体を悪者にしてはいけないのではないかなと思います。
実は、感情は私たち人間にとって、生きるためにも、また「判断」のためにも、なくてはならないものです。なぜなら、私たちは、五感を通して体内外の情報を脳に送っています。それらの情報は、生物が生命を維持するために「快・不快」という尺度で、有害か無害かを判断し、体にフィードバックされます。つまり五感は、生きるための基本作用なのです。
また、脳の中の感情を処理する部分に損傷があると、日常の意志決定すらうまく処理できないことや、大脳辺縁系に損傷を受けた人は、うまく意志決定ができないということも、研究でわかっています。
だから、しっかりと「感情を働かせる」、「感情を感じる」ことは大切なのです。このように、感情や感性をしっかり働かせて選ぶ力を、拙著「最良を選べる人になる」の中では「エモーショナルに選ぶ力」ということで「エモ選力」と呼び、磨く方法(つまり、直感力やセンスをアップする方法)とご紹介しています。
では具体的に、感情を味わう練習をしてみましょう。「喜怒哀楽」を考えた時、最近「哀」の悲しい気持ちになっていないなあ、と思ったら、泣ける本を読むとか、泣けるお気に入りの映画を見るとか、いわゆる、涙活をすることができます。
「楽しんでないなあ」と思ったら、思いっきり「楽しい!」と思えること、趣味に没頭したり、旅行に行ったり、友達とバカ騒ぎしたり、「楽」を意識的にしてみたらいいのです。
そうやって、「感情」とうまく付き合えるようになってきたら、「選び上手」になるために、次のステップへ。それは、「好きリストを増やそう!」です。
実は「好き」という感情も「喜怒哀楽」と同様、退化しているように感じます。例えば、企業でリーダーシップ研修などをさせていただく時、ビジョンを描く前段として、「欲出し」をしてもらうことがあるのですが、2~3個しか書き出せないという人も割といるのです。
感情と同様、「欲」も悪者にされがちな感情ですよね。自分だけ貪り取るような「強欲」は良くないですが、「美味しいもの食べたい」、「楽しいことしたい」、「もっと成長したい」、「もっと幸せになりたい」、「もっと周りの人を幸せにしたい」というのも欲です。人生を豊かにする健全な欲だと思うのです。だから、この「健全な欲」を刺激するために、自分の「好き」を知り、増やすことを推奨しています。具体的には3つのステップです。
(1)好奇心のアンテナをたてる。情報収集力をアップさせましょう。
(2)“キャピモード”を全開にする。「好き~、楽しい~、嬉しい~」という感情を思いっきり味わいましょう。
(3)好きのリストアップ。自分の好きに出会ったら書き留めましょう。絶対に選択に失敗しない、「定番リスト」ができあがります。
「エモ選力」とは、感性や「快」の感覚や感情をたよりに選ぶ力です。脳の大脳辺縁系という「生きていくために必要な本能や感情をつかさどる機能」がある部分が働き、選択することができます。
この「選ぶ力」をうまく使えるようになると、
毎日がワクワクと楽しくなります!
瞬時に選べる、選択のスピードが上がります!
「直感力」が上がります!
直感力が上がると、いい結果を得ることができます。「Science Daily」には、イスラエル・テルアビブ大学のこんな調査結果が掲載されています。
「AかBか」、「北か南か」のような問題に対して直感的(エモ選択)、論理的(ロジ選択)グループに分けて、その正解率を比較。その結果、圧倒的に良い成績を残したのは「直感的に回答を選択したグループ」で、その正解率は90%近くだったそうです。
しかし私は、エモ選力の本当のパワーは、瞬時に選べるスピードよりも、成果を一気に導く直感力よりも、「毎日を楽しくする力」だと思っています。
先にご紹介した2つのワークをするだけでも、その力はぐんぐん上がっていくはずです。なぜなら、感情を結果ではなく、「自分から欲しい感情を取りに行くことができる」ようになるからです。何かが起きた結果、落ち込んだり悲しんだり怒ったり喜んだりするだけではなく、「楽しい気分になりたい」と思えば、そのような選択をすればいいだけ。そんな感情を味方にする選択も、エモ選力を磨いていけばできるのです。
だから、エモ選力を磨けば、毎日をもっとハッピーにするのはもちろん、今よりもっとハッピーな生き方、働き方、そして未来を実現できること間違いなし!です。
執筆者プロフィール : 杉浦莉起
(株)DELICE(デリィス)代表
ワーク&ライフ エッセンシャリスト(※)/ブランド価値プロデューサー
「もっと素敵なワーク&ライフへ変えるパートナー」として、ダイバーシティ&女性活躍の企業研修や講演、プレミアムな体験価値を届けたい企業の商品・サービスのブランディングサポートを行う。
また、女性バランス力ブランド「The LADY.」を立ち上げ、女性のキャリアx健康(女性ホルモンの影響)の啓蒙活動や、ワーク&ライフ エッセンシャリストの発信も行う。2児を育てるワーキングマザーでもある。
上智大学外国語学部卒後、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)にてCELINEの宣伝広報、P&GでSK-II、パンパースなどブランドコミュニケーション戦略に携わり、最優秀社員賞など多数受賞。
著書に『いつでも最良を選べる人になる~後悔しない選び方レッスン』(ディスカバー21)『1年で成果を出す P&G式10の習慣』(祥伝社)、『がんばりが評価される女性の仕事術』(クロスメディア)『イケダン育成術』(文藝春秋)ほか、多数。
※ ワーク&ライフ エッセンシャリストとは?
本質・上質・私にとって最良を選ぶことで、ワーク&ライフと、自身のブランド価値を、もっと素敵にカスタマイズしていく人
いつでも『最良』を選べる人になる 後悔しない『選び方』のレッスン
現在は、「今日は何を着るか」「何を食べるか」といった簡単なものから、病院や学校の選択、働き方、生き方まで、すべて自分が自由に選ぶことができる時代となっている。自分なりの選択ややり方で、人生をカスタマイズしていくことができるが、一方で多様な選択肢の中から選ぶことに迷いを感じたり、ためらったりする人も少なくないという。同書は、そのような時代の中で「本当に自分が手に入れたいもの」「自分にとっての最良」を選択できる方法を解説している。
杉浦莉起 著
メーカー:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2018.8.26
紙の書籍:1,512円
電子書籍:1,120円
紙+電子書籍セット:2,073円