水分は「1日2リットル以上」摂ったほうがいいの?

健康な体にとって水分補給は欠かせない。しかし、ダイエットのために「1日2リットル以上」と決めて水分を摂取している場合、体にとってプラスの効果ばかりなのだろうか。

今回は、ダイエット中の適切な水分量と、水分の過剰摂取で起こる水毒について、医療法人社団一信会 ティーアイクリニック 理事長の田原一郎医師にお聞きした。

水分で基礎代謝をアップ!

まず、ダイエットが成功するかどうかにも関わる「基礎代謝」について説明しよう。基礎代謝とは、生命活動を維持するために必要で、何もしなくても生理的に消費されるエネルギーのことを指す。

なお1日の消費エネルギーには、基礎代謝のほか、運動や仕事など体を動かすことによって消費される「生活代謝」、食事中や食後の体温上昇によって消費される「食事誘導性熱代謝(DTI)」がある。

この基礎代謝を上げることが、脂肪が燃えやすい体をつくるポイント。1日の摂取カロリーが1日の消費カロリー(エネルギー)より多ければ「太る」、両カロリーが等しければ「体重キープ」、摂取カロリーより消費カロリーが多ければ「やせる」と考えられるからだ。

そして、水分補給も基礎代謝に関係する。「水を飲むことで基礎代謝が増加します。それに伴って脂肪の燃焼効率が上昇するので、ダイエット効果も見込めます」と田原医師。

ダイエットに適した「硬水」の注意点

では、体質や水の種類によっては勧められない場合もあるのだろうか。

一般的な基準では、水中に含まれるミネラル(マグネシウムとカルシウム)の量を示す硬度によって、硬度100ミリグラム/リットル以下の水は「軟水」、硬度101~300ミリグラム/リットルは「中硬水」、硬度301ミリグラム/リットル以上は「硬水」と分類されている。日本の水のほとんどは軟水なのに対し、ヨーロッパや北米などの水は硬水が多い。硬水は、ダイエット中に不足しがちなミネラルを補うほか、便秘改善や脂肪吸収を抑える効果も見込めるため、ダイエットに適しているといわれる。

しかし田原医師は、硬水を取り入れる際の注意点も指摘する。「マグネシウムの含有量の多い硬水は、胃腸障害を引き起こす原因となります。胃腸の弱い方や抵抗力の弱い赤ちゃんや成長期のお子さんなどは、硬水を控えるのが望ましいと思われます」。

過剰摂取が引き起こす「水毒」とは

近年、水分の摂りすぎによって生じる「水毒」も話題になっている。水毒とは、東洋医学(漢方)の考え方で、体内に余分な水分がたまり、排せつされないことによってさまざまな症状が起こることを言う。

その原因について、「水分の過剰摂取による体の冷えは血管の収縮の原因になり、腎血流量(腎臓を流れる血液量)の低下につながります。それによって適切な水分の代謝力が落ちてきます」と田原医師。

そして、「理想的な水分の割合は体重の約70%。それ以上になると体がむくむようになり、血液中のナトリウムイオン濃度が低下します。ナトリウムイオン濃度が低下すると疲労感、頭痛、嘔吐(おうと)、神経過敏、けいれん、昏睡(こんすい)などの症状の原因になります」と続けた。

冷水に注意、一度に大量に飲まない

最後に、ダイエット中の水分補給についての注意点、適切な取り入れ方をお聞きした。

「一般に人の体に必要な水分量は1.5~2リットルですが、普通に食事をしたり、お茶を飲んだりしていることを踏まえると、過剰摂取は避けるべきです。さらに、体を冷やしすぎる冷水の摂取には要注意。また、一度に大量摂取すると胃腸に負担をかける原因になりますので、少しずつ摂取することが望ましいでしょう」。

「水分を摂ることは体に良い」という認識があると、摂りすぎによるリスクが抜け落ちてしまうかもしれない。特にむくみが気になる人は、1日の水分摂取量を見直してみるとよいだろう。とはいえ、水分補給は健康にもダイエットにも欠かせないので、体質に合わせて上手に取り入れることが大切だ。

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記事監修: 田原一郎(たはら・いちろう)

医療法人社団 一信会 ティーアイクリニック 理事長

平成11年に日本医科大学医学部を卒業後、日本医科大学附属病院 第一外科に勤務。平成19年より平成立石病院や都内美容クリニックなどで実績を積む。 平成24年に医療法人社団 一信会 ティーアイクリニックを開院。同クリニックが監修する糖質制限食専門レストラン「TI DOCTORS RESTAURANT(ティーアイドクターズレストラン)」のオーナーも務める。


医学博士
日本医科大学大学院 分子生物学分野
学位論文;Systemic Cancer Gene Therapy Using Adeno-associated Virus Type 1Vector Expressing MDA-7/IL24
アメリカ遺伝子治療学会にて講演後、Molecular Therapy(Impact Factor 7.149)掲載
日本外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医