スポーツ全般が不得意な私が、運動をする場合、まずは動きについて解説をしてもらわないと、カラダが動きません。

なんでしょう、ラジオ体操みたいに、

「腕を前から上にあげてノビノビと背伸びの運動~」と、カラダの動かし方をことばで解説してもらわないと、どう動いていいのかわからないという……。

ですから、運動を教えるのに、

「見ててくれる。こうやって……こう! ね、できるでしょう」

というように「見せて」教えるタイプに当たってしまうと、ひえー、どうしようとあせってしまいます。

考えてみると、スポーツだけでなく、わりと何事に関しても、アタマで考えてから入る傾向があるような。

家電を買っても、とりあえず、取扱説明書をひと通り読んでしまうし、レシピを覚えて完成までの手順をシミュレーションしてから料理をするし……。

あれこれ考えてからでないと行動にうつせないというか、パッと行動してみて、後から考えるということがなかなかできないような気がします。

アタマが納得してから行動する、行動してから考えてみる、どちらにもいい面はありますが、こと、人間関係に関していうと、圧倒的に後者のほうがいい場合が多いのはたしか。

特に、恋愛に関しては、かまえてしまう前に行動したほうがいいに決まっているのですが、どうしてもそれができない、という人は多いかもしれません。

*  *  *

以前、私が会社勤めをしていたとき、先輩の女性と一緒に、会社のイベントの仕事をしていたことがありました。

そのとき、どういう経緯か忘れたのですが、まったく別の会社で働く、私の同級生だった友人男子も、一緒にそのイベントの仕事を担当することになったのです。

すると……初対面のときから、先輩と友人男子がピッタリ意気投合してしまい、あっという間に仲良くなっていました。

先輩女性も友人男子も、ふたりとも異性にモテるし、恋愛を気軽に「楽しみ」としてとらえているタイプだったので、ふたりの仲がいつ恋愛関係に発展してもおかしくないように思えました。そう考えると、私のアタマの中では、困ったシチュエーションが次々と浮かび上がりました。

これから、仕事で3人でいる時間が長いのに、ふたりが付き合いはじめたらどうしよう。

付き合うのはいいんだけど、ふたりが私にそれを隠そうとしたら……どうしよう。自慢じゃないけど、社内で隠れて社内恋愛しているカップルを全組言い当てられる自信とかある私なのに。そりゃ、無表情だし、気付かぬふりをするのは得意よ。でも、親しいふたりに対して気付かぬふりをするのは、けっこうゴーモンなんですけど……。

フツウの仕事仲間のような素振りをみせながらも、そこまでするか? というような痴話ゲンカを目の前でされたらどうしよう。

ふたりの関係がうまくいってなくて、気まずく重い空気の中で、仕事とは別に、ふたりの仲介役みたいなことをするハメになったらどうしよう。

昨日、あんなことやこんなことをしたんだな、という雰囲気を漂わせている(そういうことも、わかりたくないのにけっこうわかってしまう悲しいサガだった)ふたりを見て、私ひとりが照れたり、どぎまぎしたり、あやしい行動をしちゃったらどうしよう。

私のあやしい行動のせいで、友人男子から、

「こいつ、実はオレのこと好きだったんじゃないの?」

とか勘違いされたら……イヤーッ。

っていうか、仕事中とはいえ、超おじゃま虫だよね、私。どうしよう、いやだ、面倒くさい。困るわーっ。

というわけで、翌日、3人で集まったときに、ふたりに向かって、

「あの、お願いがあるんだけど、ふたりが付き合うことになったら、私に隠したりせずに、話してくれないかな?」

と頼み、あれこれモンモンと考えた問題をすべて打ち明けました。

「そういうのを全部、素知らぬふりするのはつらいんで、できれば付き合ってることは隠さないでほしいんです」

すると、先輩女性は大爆笑し、友人男子からは、

「……昨日ひと晩で、どこまで話がすすんでるわけ? オマエの想像力というか、いらぬ心配にビックリだよ」

とあきれられたのでした。

*  *  *

ここまで余計なことを想像はしなくても、勝手に自分の思い込みで、

「オレがこんなことを言ったら、こんなふうに誤解されてしまうかもしれない……。それは困る!」
「ここで、こういう返事をしたら、みんなに△△ちゃんを好きと思われてしまうかもしれない」

というように、あれこれ考えすぎて行動にうつすどころか、女の子と話すこともままならない。

「おはようございます」とかわいく言われたあいさつひとつにさえも、

(これは、オレに向けられたアイサツなのだろうか? もしかすると、トナリの席の先輩に向けられたアイサツかも)

などと考えてしまって「おはよう」のひと言を返せないといったことにまでなってしまいます。

たしかに、かまえすぎるきらいはある。そんなフシがあるな、という人、きっと多いはずです。

まずは準備をしてから行動を起こす、それはステキなことです。

けれど、こと人間関係に関しては、考える前に言ってみる。準備しないでやってみてもいいと思います。笑われたり、あきられたり、恥ずかしい思いをすることもあるかもしれません。

けれど、自分にとって「恥ずかしい」ことも、相手にとっては「おもしろい」だったり「打ち解けた」「話しやすくなった」にツナがることが多いものです。

友だち付き合い、女の子との会話などは考えてからではなく、とにかく反射的に返してしまってほしい。

もしかすると、恥をかくかもしれないけど、そうなってもいいやと思える、気楽さを持ってみてほしいものです。

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こんにちは、酒井冬雪です。今週の「理系のための恋愛論」は、火曜日配信で「特別対談」ページの大サービスです。対談相手の浅田紗也佳さん、とってもかわいいだけでなく、性格もいい。浅田さんの経営する塾「マナビバ」は駒場東大前です。まずは、自分の性格、行動パターンを心理テストで分析→自分に合った方法で勉強をする…という画期的なシステムの塾。私が子どもだったら、やり直したいくらいです。浅田さんのファンになっちゃった方は、編集部までメールください(笑) では、またね。