今回は『理系のための恋愛論』対談企画をお送りします。コラムのスタートは2000年、連載回数は実に300回以上。モテる男、オンナ心がわかる男を増やすべく、著者・酒井冬雪が数々のエピソードを引き出してはアノ手コノ手で恋愛レクチャーを披露してきました。でも、たまには一人語りではなく誰かと語り合いたい……ということで、女性ゲストを迎えての"理系男子語り"です。お迎えするのは、独自の特性分析システム「KATS」に基づいた社員研修や教育研修で注目を集めるソフィアヒューマンインテリジェンスの代表取締役 浅田紗也佳さん(学生時代に起業して、いま23歳!)です。(編集部)
対談者プロフィール:浅田紗也佳
1985年石川県生まれ。株式会社ソフィアヒューマンインテリジェンス代表取締役。大学在学中(2007年)同社設立。一人一人の特性を最大限に活かすための童話を使った独自の特性診断KATSを開発。それをコアに学習・就活・研修・恋愛(結婚)の特性別サポートツールを展開し、結果につながる実践ツールとして好評。学習分野では直営塾「マナビバ」で実践して効果を出している。雑誌プレジデントファミリーほか様々なメディアで紹介。
──過去の『理系のための恋愛論』の対談では男性ばかりでしたが(※)、今回はなぜ女性を?
酒井 男の人の目線から恋愛を語ると「え〜?」と思うところがけっこうあるので……。モテる男がオンナ心をわかっているかというと、そんなことはないんです。黙っていても女性が寄ってきちゃうから、なにも考えないで付き合ったりして。でも相手からは付き合ううちに「面白くない」とか「顔がいいだけじゃん」とか言われて去られて、それでもまた次がくるからモテてるような気がするけど、かえってモテる人のほうが女心をわかっていない。モテる男は、年をとってくるとすごい年下からしかモテなくなってきちゃったりね。思い当たるフシがあるんですけど(笑)。
※岡田斗司夫氏、土屋賢二氏。
浅田 最近だと、いわゆる草食系みたいな人たちって、モテゾーンに入りつつあるような気はします。
酒井 私もモテると思う。
浅田 でも、その良さを本人がわかっていなくて、かつ出し方をわかっていないんです。
酒井 出し方って?
浅田 その人が誠実でまじめでコツコツやる理系タイプだとしますよね。でも、そのことを良さとして出せばいいのに、モテる人はこういう人だと決めつけてるんです。「前向きで積極的でズケズケと行ったほうがモテるんだ」という勝手な概念を作り上げて、それを飾ろうとして無理して……。女の人から見たらわかるじゃないですか。「がんばってるけど、ちがうよね」っていう無理してる感とかを出しちゃうと、逆にモテないゾーンに走っちゃう。その人の素のまま行ったほうがいいんです。相手もその素の部分がその人の良さだと思って惹かれているのに、あえて違う方向に行っちゃうと、女性には印象が悪かったりします。
酒井 草食系男子はそれが自然にできてる?
浅田 それが自然にできてる人は"モテる草食系"なんです。でも、素を「良さ」として自然に見せられない草食系男子は、ガラじゃない仮面をつけて間違った方向に行っちゃう。
酒井 勝手な「モテる男像」に?
浅田 積極的でどんどん前に行って、「俺についてこい」という感じに見せてしまったり。
酒井 確かに私たちのちょっと上のバブル世代の人って、「男子がリードしてよ」的なのが──建前上でも──モテたんだけど、今って女の子自身もそういう人を敬遠するきらいがあると思う。「自分勝手じゃない?」「自己中じゃない?」って。年をとって思ったのは、かえって草食系男子みたいに、一緒にカフェに行って1時間くらいダラダラしゃべってくれる男の人がいい(笑)。
浅田 飾っちゃダメですよね。
酒井 飾らないで、かつ"自分の良さ"を良さとして身につける術を覚えてほしいですね。
──わかりますけど、それをいったいどうすれば……。
酒井 まず、そもそも行く相手が間違ってたりしない?
浅田 ありますね。その女の子に向かって行っても、相手はあなたのことをイイと思わないかも……。
酒井 そう。まじめな感じの男子なのに、「ViVi」とか愛読してますみたいなイケイケな女の子にばかり行っちゃったり。そういう人が多い。
浅田 恋愛で相性が合うケースは2種類あると思うんです。ひとつはまったく同じ性質の人。意気投合して、空気みたいに一緒にいられる──空気系の人です。もうひとつは、性質が真逆の人。この場合、お互いに補完する形でマッチングするわけです。それ以外だとあまり惹かれ合わないから、行かないほうがいのに、行ってしまったり。素を出さずに、相手に合わせて同質を飾ってしまうと、相手も最初は同質と思って始まった関係なのに、すぐに「あれ? ちょっとちがう?」と気づかれてしまうことが多い気がします。
酒井 女の人って、同質とか真逆とか見極める目が高い。でも、男の人は一括りに"女の子"になっちゃって、その中で「美かそうじゃないか」と考えやすい。そのへんの見る目がないなと思うことはあります。以前に取材した理系の男の子なんですけど、その子は下北系ファッションでおしゃれ好き。でも、女の子とは「うまくいかない」と言ってて、聞いてみると、派手な子が好きなの。自分と同じ下北系の子を好きになればいいじゃんと言うと、「それはイヤなんですよ」だって。食わず嫌い?(笑)
浅田 (同質系の子に)行ってみると、意外とイイ感じに思えるかもしれないのに。
酒井 だから、私なんかだと、その人の先が見えちゃってイヤなんです。女の子も若い頃はこだわりのせいで失敗するけど、そういう失敗は中高生で終わらせる。二十歳くらいになると、自分と似てる人とか真逆の人とかを選んでいるのに、男の人は下手するといつまで経っても女性の見方が変わらない。30過ぎてもとかね。
浅田 同質か真逆かを見極めるのが難しければ、まず自分を飾らないこと。寄ってきてくれた人がいたら、そこを否定せずに受け入れて、自分の素を上手に出していければいいと思います。誠実さがないとか、そういう要因があったら別ですけど、根本的に"飾った自分"を出していることが問題な気がします。"理系"であるとか関係なくて、本当は"モテられる"はずなのに、それを知らないだけかもしれません。
──では、同質か真逆かを見極めるにはどうすればいいのでしょうか……。
酒井 におい?(笑) 「どうすれば見極められるの?」って男の人から言われても、「だってわかるじゃん、一目見れば」としか答えられない。
浅田 女の人的にはわかるんです。
──はぁ……。
酒井 女の人は、よく周りを見てるんですね。周囲の動きをつかむアンテナがあったとして、普通の女の子なら平均してアンテナが7、8本立っている。対して、男の人は1本立ってるかどうかくらい? 女の子ですごいのだと10本とか立っちゃってるから、それに太刀打ちしようというのはプレッシャーかもしれない。でも、もうちょっと常に周りを見るようにすれば、自然と相手を見極められるようになると思う。
浅田 ちょっと就職活動の話になりますが、人事の方って"見抜く"じゃないですか。学生は「人事から見て、求める人間ってこうだろう」と勝手に思っていて、マニュアル本にあるとおり積極的な自分を演じたりしますよね。本当はそういう性格とは真逆なのに着飾ってしまう。でも、人事の方は、無理してるかどうかはすぐに見抜きます。そういう学生さんは続かないかもしれないって。
酒井 就職活動も、恋愛と似た部分はあると思いますね。
浅田 恋愛でも就職活動でも、素のままのほうが安全なんです。もしかしたら、相手は「誠実で、まじめで、きちんとやる人」を求めているかもしれない。勝手な「モテ像」をつくらないことが大事。あなたが今モテない原因だと思っていることも、実は「モテる要因」かもしれないわけです。生真面目で寡黙で臨機応変が苦手でも、それは「まっすぐで誠実」という最大の恋の武器かもしれないんです!
酒井 ところで、浅田さんはどんなタイプが好きなの?
浅田 私は同質系が好きなんだと思うんです。ただ、真逆系に憧れつつ、同質系といると安心する感じです。草食系に行きやすいタイプですね。相手に対して「物足りないな」とは思っても、憧れは憧れとして、同質系と一緒にいるほうが安心します。
酒井 どういうのが同質系?
浅田 思考的には理系型。コツコツと積み重ねて、冒険とか危ない橋を渡るようなタイプじゃない人ですね。そういうタイプを好みそうには見られないんですけど。酒井さんは真逆系ですよね。
酒井 私は真逆に行っちゃうのよねえ。最近は、同質の人がよかったかもって、この年になって思ったりもしますけど(笑)。よくないことなんだけど、真逆の人といると、「私のことわからないだろうな」と思って安心しちゃう。どうせ理解してもらえないのだから、「そのまま知らないでいて」って。そういう"ホッとする感"みたいなのを真逆系には感じるんです。女心はフクザツね(笑)。
──「理解してほしい」という気持ちはないんですか?
酒井 あんまり理解してほしくないんですよね。
浅田 わかったフリをされたくないとか?
酒井 わかったフリとか、そういう顔をされたくない。だから、「知らない」「わかんない」って言われたくて真逆の人、かな。「大変だよねー」と適当に言って終わらせてほしいから。
浅田 そういう男性にちょっと腹立ちつつも?
酒井 「わかるよ」とか言われると余計つらくなっちゃう。まぁ、最近は年とともに、理解してくれるほうがよかったとか思ってるんだけど(笑)。「ちょっとわかってもらいたかったな」って(笑)。でも、一般的には長く一緒にいるなら同質系を選んだほうがいいと思いますね。
浅田 真逆系は補完系と言えるので、ふたりが一緒にいるには、互いが違うことを理解しあわないとダメ。「あの人は自分と真逆だから、いつもこう考えるのか、自分にはできないなぁ、スゴイ!」というように納得できることが大事です。そういう理解ができれば、真逆の人とも長く続くんだと思います。理解できないまま続けていくと、「この人なんでこうなのか」「信じられないわ」となって終了してしまうかも。
(中編につづく ※5月20日11時掲載予定)
(構成:編集部 写真:石森亨 撮影場所:オメガスイーツ 神保町プレスルーム)