ここでいったら、たぶんうまくいくのかもしれないけど、でも、面倒だし(イロイロ考えるとマイナス要素もないことはないし)、やっぱりやめておこう。
というふうに、恋愛に発展しそうな関係があるにもかかわらず、前に進むというか、もうひと押ししてみる的なことができなかったような経験のある方、最近はきっとふえているのではないかと思います。
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私の友人男子のY(32才、某重工業メーカー勤務)は、とてもさわやかな外見に、かわいい笑顔と168センチの身長ときゃしゃな体格、決して人の悪口を言わないという稀有な素質の持ち主で、女性から反感をもたれずに生きてきたタイプの男性です。
なにしろ感じがいいので、けっこう女性からはモテるようなのですが、どうしても付き合うまでには至りません。
つい最近も、Yくんと同じ会社の総務部でで働く27才のKちゃんと何度かデートをして、もしかしたらいよいよ付き合っちゃうのではないか? という関係になっていたようなのですが、その後どうなったのか聞いてみると、、
「いや、彼女とは付き合ってませんよ」
と言います。
Yくんに「どうして、付き合わなかったの?」と詳しく話を聞いてみると、彼はこんな説明をするのでした。
Kちゃんは美人でちょっと気が強く、年上からも年下からも人気があり、モテていた。だから、自分と彼女が何度かデートをしているというウワサは、あっという間に社内(自分と彼女が所属している部署やお互いの同期)に広まってしまった。
すると、自分に対する態度がおかしくなった先輩がいた。ちょっとさぐりを入れてみると、その先輩はKちゃんに好意を持っていることがわかった。
その先輩はとてもいい人で、自分も尊敬している相手だったので、つい、
(Kちゃんのことが原因で、先輩との関係が気まずくなるのはイヤだなぁ。だったら、自分は身を引いて、先輩とKちゃんがくっついたほうがいい)
と思ってしまったというのです。そして、次にKちゃんと会う約束をしたときに、先輩のことも一緒に誘って、というようなことを数回繰り返し……本当にふたりをくっつけてしまった、というのです。
思い起こせば、彼のこれまでの恋愛は、こんなふうに、うまくいきそうになったけれど、ライバルが出現して身を引いたという結末が多いのです。
そういう結末が多いのだけれども、かといってデートしたり、出かけたりする女性が何年もまったくいないわけでもなく、いったい恋愛に対してやる気があるんだかないんだか? 周囲にいる友人は疑問に感じることが多いのでした。
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こういう恋愛(実際にはそこまでに至っていないのですが)をする男性(実は女子にもけっこういる)をよーく見てみると、
- 人に好かれる外見をしているので、実は本人はそんなに恋愛に貪欲なわけでもないのに、異性が寄ってきてしまう。
- 誰にでも愛想がいいけれど、実はけっこう頑固なところがあり、心を開く相手を選んでいる。
- 何事にも「ほどほど」「フツウ」を好むので、ほとんどの人がやっていることにはひととおり手を出しておかないと気が済まない。恋愛もほとんどの人がフツウにやっていることのひとつ、と考えて、異性と出かけたりする。
こんな感じの人が多い気がします。ですので、前に進もうかなと思っても、
(本当に、この人に心を開けるだろうか。よくよく考えてみると、デートから帰ってきてから「疲れた」と思ったことがある)
(かわいいなと思ったから、何度かデートしてみたけれど、想像と違ってあまりおもしろい子ではなかったかもしれない)
(ここで、もうひと押しして恋愛関係になっても、本当にうまくいくだろうか。後悔するようなことはないだろうか)
といったことをあれこれ考えてしまうのです。
誰からも好かれ、あまり反感を買わないタイプの人は、たくさんの人と話をし、どんな人とも付き合い、話を聞ける傾向があるので、自分で思っている以上に人を見る目が肥えていたり、相手を見る目が厳しくなっていたりします。
ですので、自分でも知らないうちに「こういうタイプの人はこういう恋愛に向いている」「こういうタイプは自分には合わないかも」といった分析ができていたりするのです。
自分でもあまり自覚がないまま、高い分析能力を発揮していたりするので、結局、恋愛がなんだか面倒になってしまったり、先が見えてしまったり(見えたような気になったり)する傾向もあるようです。
というわけなので、特にモテないわけでもないのに、どうもいざとなると身を引いてしまう、あとひと押しがいけない、という人は、まず、来るもの拒まずではなく、自分の好きなタイプをはっきりと自覚してみるようにしましょう。
それから、次はこうなる……と予測して面倒くさがったりせず、まずは実際の行動にうつしてみる。考える前に、恋愛に飛び込んでみるのもいいかもしれません。別に今後もずっと、恋愛なしで生きていきたいのなら今のままでいいのですが、もし、
「このままだと、オレ、いつかはさみしくなるかも」
と予想する自分がいるのでしたら、もう少しだけ前に進んでみてもいいと思います。自分の予想がはずれることだって、あるはずですので。
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酒井冬雪です。とはいえ「こうなるんじゃないか。ああなるかもしれない」と予測を立てる(妄想ともいう)のも、恋愛の楽しみのひとつといえます。私もどちらかというと、自分の心の中だけで楽しめるタイプです。でも、実際に恋愛に飛び込むと、ほとんど予測が外れることが多かったりして。人の恋愛に関しては勘も当たるのに、自分のことはけっこう当たらないものです。では、またね。