好きな女子には、つい意地悪をしてしまう……。幼稚園、小学校低学年の男の子に多い愛情表現かなと思います。
しかし、好きな女の子に意地悪をしたり、憎まれ口をきいてしまったり、必要以上にキツい口調になってしまったりする男子は、小学生に限らず、大学生も、社会人になっても多い。
残念なんですけれど、私は言いたい。こういう愛情表現は、女の子にはまったく通じない場合が多い、と。
先日、某IT企業で働く知人のAくん(32才)が、彼の仕事上の知り合いであるとても美人なEちゃん(26才)と話をしているところを、私はたまたま見てしまいました。
「っていうかさ、こんなことに3時間もかけてどうするの?」
と、仕事のことで注意をするAくん。それに対して、事情を説明するEちゃんに対して、「……ごめん、経過説明はもういいや。それで、その話のゴールはどこにあるわけ? ぜんぜんゴールが見えないんだけど」
と、彼女の話を途中でさえぎるAくん。
ひえ~っ、その話のゴールはどこに? って、そんな冷たい言い方をしなくてもいいじゃないの、私は内心ひやひやしてしまいました。女の子というものは、会話をしながら、相手の肯定的な対応や、やさしい相づちに安心して、自分のアタマの中を、いつもとは違うやり方で、スピーディに整理できる特技があるのです。
話を途中でさえぎってしまうと、せっかく整理していたものが混乱してしまうことだってあるのです。
案の定、Eちゃんはシーンと黙りこくってしまって、しばしの沈黙の後に、
「遅くなってしまって、すみませんでした。これからは、もっと迅速に対応します」
と彼に謝って、その場を立ち去ってしまったのでした。
彼女がいなくなってしまってから、私はAくんに言いました。
「ねぇ。どうしたの? いつもは、私がどんなにトンチンカンな質問をしようと、恥ずかしいくらい何も知らなくても、聞けば何でもやさしく教えてくれるのに。『この話のゴールはどこに』って、あんな冷たい態度をはじめて見た。かわいそう、いい子なのに」
すると、Aくんは、顔を赤らめて、
「……いや、そんなに冷たい態度でしたか?」
「冷たいよ。冷たい、冷たすぎる。男同士じゃないんだよ、相手は女の子なんだから。あんなに冷たくされたら、私だったら明日から会社に行けない」
と、からかい半分で彼に言うと、今度はAくん、赤かった顔がサーッと白くなっていきました。はっ、これはもしかしてラブ? まさか、好きな子には意地悪しちゃう男子心? ようやくそこのところに気づいた私は、
「好きならさ、やさしくしなくちゃダメだよ」
とストレートに言ってしまっていました。彼も油断をしていたらしく、
「えっ、やっぱりそうですかね?」
と、自分の気持ちを打ち明けてしまったわけです。そんなスナオな彼に、私はついついあれこれ言ってしまいました。
「そりゃ、そうだよ。冷たくしてたら『私のこと、アタマ悪いとか思ってるんだろうな。やだな、次に会ったらまた怒られるかも。しんどいな』って、敬遠されちゃうよ。男の人だって、好きな女の子に冷たくされたくないでしょ? ホメられてやさしくされて、うれしい気持ちになりたいでしょ。女だって同じなんだからね」と。
好きな女性にやさしくするってむずかしいことかもしれません。だからといって、好きな女性に意地悪しても、何もいいことはありません。嫌われてもいいから、自分に強い印象を持ってほしい。にくまれてもいいから、オレのことを覚えてほしい、というのだったら、目的は達成できるかも。
けれど、好きな人に意地悪をしても、相手の女の子からは、「私は嫌われている」「あの人に会うと、間違いを犯してはいけない、と緊張して疲れる」「あの人といると精神的にしんどい」と思われてしまうだけです。
彼女との出会い、彼女と知り合えたこの気持ちのゴールが「彼女から敬遠されること」ではないはずです。
彼女にも自分と同じように親しみを持って、やさしい気持ちで接してほしい、もし、チャンスがあるなら恋愛に発展してほしい。そんなゴールを目指しているのなら、意地悪で冷たい態度はやめにして、今すぐにやさしい男子に変身してほしいなと思います。
やさしくって、どうすればいいんだ? と悩んでしまう方も多いかもしれませんが、そんなにむずかしく考えなくても大丈夫です。 彼女の話を最後までキチンと聞いてあげて、その上で、
「それじゃ、ここのところはどうする? こうしてみるのはどうかな?」
と提案してあげる。おはよう、お疲れ様と相手の目を見て、アイサツをしてあげる。
ガムやあめ、缶コーヒーなどのおやつを「これ食べる(飲む)?」と言って差し入れてあげる。一緒に外を歩く機会があったら、常に車道側を歩いてあげる。
階段を下りるときは自分が先に、階段を上がるときは自分が後ろを歩くようにする(いずれの場合も、万が一女の子が転んだときに助けになるように)。
移動時、仕事に必要な重い荷物は、女性に持たせず自分が持つ。
そんなことがさりげなくできるようになれば、それだけでもじゅうぶんに「やさしい」男になれるものなのです。照れくさいかもしれませんけれど、大人の男としての格好よさは、好きな子に意地悪するのではなく、やさしくするところにあるんだ! と思って、ぜひがんばってみてほしいところです。
酒井冬雪です。ときどき、意地悪されてうれしそうな(に見える)女の子もいるかもしれないけれど、そういうのが刺激と思えるのは最初だけで、長く付き合っていくとやっぱりやさしさって大事だなと気づくものです。自分がやさしくしないと、やさしさで返してもらえないしね。というわけで、私も今、まさにこれから、やさしい女として生きていきたいと思います。では、またね。