理系男子に共通していえるのは、男性ばかりの環境に置かれている……ということだったりします。ずっと男子校に通っていた。学校は共学だったが、進路のおかげで男子ばかりのクラスに配属されてしまった。職業が、研究分野が、どうしても体力的に男子向きなので、必然的に職場も男性ばかりになってしまった。

女性をあまり身近に見ていない。周りに女性がほとんどいない、そうなると、女性とどのように接していいかわからなくなってしまう。特に、外見がハデだったり、いかにも、女の子女の子したおしゃれな女性を見ると、どうしていいかわからなくなる。そんなふうに感じる人は多いはずです。

しかし、私が思うに、見かけがハデでも、中身は案外かわいかったり、性格がストレートでサバサバしていたりする人はとても多いもの。いずれにしろ、女の子とうまく接するのは「慣れ」の問題のような気がします。


某電機メーカーの研究所で働くSくん(28才)は、学生時代、友人にすすめられて、個別指導塾でアルバイトをしていました。あるとき、ふと、なつかしい気持ちをになって、何年かぶりにバイトしていた塾に顔を出してみると、まだ異動にならず残っていた顔見知りの講師もいて、

「おお、久しぶりだな」

と温かく迎えられ、そして、

「ちょうどいいタイミングで来たね。Sくんが大学受験を受け持っていたAさん、覚えてる? ついこの間、彼女が就職が決まったって報告にきてくれたんだ。Aさん、S先生は元気ですか? って聞いてきてね。会う機会があったら渡して欲しいって手紙を預かってたんだ」

と言われました。へえ、あのAさんも、もう来春には就職かぁ、時の流れの早さに驚きながら手紙を受け取って帰ったSくん。

家に帰ってから、Aさんの手紙を開封してみると、大学受験でお世話になったこと、無事に就職が決まったことへの感謝の気持ちがつづられていました。そして、手紙の最後に「もし、よかったらご連絡ください。待ってます」と、彼女のメールアドレスが書いてあったのです。

すっかりうれしい気持ちになったSくんは、すぐにAさんにメールを出しました。すると、即座に返事がきて、何回かメールのやりとりをする間に、気が付いたら、ふたりで会う約束をしていたのでした。

1週間後、待ち合わせ場所で腕時計をながめながら、時間ピッタリだとホッとしていたSくんの前に、

「先生、お久しぶりです!」

と女の子が声をかけてきました。Aちゃん? だよね、Sくんは驚いて、口がポカンと開いてしまいました。高校生のときは、真っ黒な髪を後ろでひとつにひっつめて、いつも節目がち、ずっと女子校に通っているせいか、Sくんの前ではいつも緊張しているようで、勉強のこと以外は話さない、地味な女の子だったAちゃんが! 髪をくるくる巻いて、キレイにお化粧して、かわいいスカートをはいた……ほとんどギャルといっていいような女性に変身していたのです。

彼女のあまりの変ぼうぶりに、ボーゼンとして言葉もでないSくん。昔とは逆に、Aちゃんのほうが気を遣って、Sくんにイロイロと話題をふっている始末です。シドロモドロのSくんを尻目に、その上Aちゃんは、

「あっ、ちょっとここに寄ってもいいですか?」

と言って、茶髪の巻き髪の、つけまつ毛と派手なジェルネイルの店員さんがたくさんいる洋服屋さん(ブティック……?)にズンズン、入っていってしまったのです。メッタにふれあったことのないタイプの女性に囲まれて、Sくんが固まっていると、店員さんが話しかけてきました。

「こんにちは~。お兄さん、彼女の付き合いですか~?」
「あ、はい。いえ、彼女ではなくて」
「ええ、どういうこと? 彼女じゃなかったら何? 友だち以上恋人未満みたいな?」
「いや、そういうのでもなく。あの、彼女が高校生のときに、ボクがいる予備校に通ってきていて」
「ええ! っていうことは、お兄さんって、先生とかなんだ。超アタマいい系?」
「いや、そんなに、アタマよくないです」
「でも、高校生に勉強教えられるんでしょ。それってアタマいいじゃん。すごいんだね、マジで。今も先生してるわけ?」
「いや、学生時代に予備校でアルバイトしてただけだから」
「うっそ、すごいじゃん。じゃあ今は、先生じゃなくてエリートビジネスマンって感じ? すごい、仕事とかできそうだもんね。マジで」
「いえ、そんなこともないです」
「いや~ん。照れちゃってかわいい。彼女、幸せだよね。こんなかわいい彼氏で」
「いや、だから、彼女じゃなくて」

助けを求めるように、目線でAちゃんを探すと、彼女は口元に笑いを浮かべながら、テロテロしたセーター越しにSくんを見ているのでした。

非常に緊張を強いられる会話を何とかこなし、Aちゃんと一緒にお店を出たSくん。Aちゃんが、

「すみませんでした。ああいうお店にはあんまり入らないですよね」

と笑い半分、申し訳なさ半分であやまってきました。しかし、Sくんは突然さとったのでした。

「いや、何ていうか、すごく勉強になったよ。それに、あのハデな店員さんとの会話を無事にやりとげただけでも、自分はがんばった! と思えたし」

「……先生って、おもしろい人なんですね」 あんなに地味で印象の薄かったAちゃんが、こんなにキレイに今どきふうな女の子に変わったのも、自分がそれまで興味のなかった分野に取り組んでいったからではないか? 自分ももっと、イロイロな分野に興味を持っていかないといけないなぁと、Sくんは思ったのでした。


このように、ハデそうなタイプの女性も、話してみれば意外と楽しい子だったり、真っ直ぐで悪意のない子だったりすることは多いものです。しかも、ハデに見える女の子とフツウに会話ができたりすると、

(なんだ、オレもなかなかやるじゃないか)とか、
(ふうー、すごいがんばった。オレってえらい)と自信が高まったり、達成感があったりするものです。

というわけで、この冬はぜひ、自らをそういった厳しい環境(女性の店員さんが多いブティック、美容院、スイーツショップなど)に置いてみて、イロイロなタイプの女性とお話してみてほしいと思います。きっと、新たな発見があるはずなので。


酒井冬雪です。最近、「どうぶつの森」にハマってます(今さら……と言わないで)。見かけは超マジメ、ボーイッシュな友人Mは、ローンも返済せずに、小さい家で、バンバン家具や服を買って遊びまくり。それにひきかえ私は、街へも行かず服も買わずに必死にローンを返して、貯蓄をし……て……大きい家に家具もロクにないという。Mから「ゲームなんだから、遊び心を持とうよ。しかし、性格がでるね、ハハハ」と言われました。そう、誰からも言われたことはないけれど、私はマジメです。では、またね。