このコラムを読んでしまう読者の方は、いつも、

「そもそも……彼女(恋人)っていなきゃいけないものなのか?」という思いが胸の中にちらちらとあったりする。そんな方が多いのではなかろうか、と思います。……私自身、何度も言っていますが、若いころから、彼氏がいなくても特に気にしたこともなく、また「やばい、彼氏いないからつくらなきゃ」というようなことを考えたりしなかったタイプです。自分の周りをみると、女性でこういうタイプはわりと少数派のような気がしますが(自分がそういう性格なので、恋愛話で盛り上がってくれる友人を好む傾向も大ですが)、男性ではわりと多数派かと思います。

というわけで、某家電メーカーの研究所に勤務する知人O氏(44才、独身)に、

「彼女つくろうとか、結婚しようとか最近、考える?」

と図々しく聞いてみました。すると、彼は腕を組んでうーんと考えていましたが、

「いやー、2年前に彼女と別れて以来、浮いた話はないんだけど。まあ、ボクの場合……そうじ、洗濯、料理もキライじゃないし。彼女がいてもこっちが家事する状態だから、ひとりでも生活には困らないんだよね。それに、若い女性は苦手だから、彼女はどうしても自分と同年代の人がいいんでしょう。同年代で独身っていう女性を探すのもけっこうタイヘンなんだよ。たまに実家に帰省すると、母親からは『孫の顔が見たい』とか言われちゃうけど、それがイヤだから実家にも3年ぐらい帰ってないし。姉貴が親の近くに住んで甥も姪もいるんだから、それで大丈夫だと思うし。今じゃ会社でも『あ、この人は独身で通す気なんだ』と思われてるみたいだし。最近は、男も女もそういう人ふえてるからね。だんだんプレッシャーがなくなってきたんだよね。そこへきて、一年ぐらい前からネコを飼いはじめちゃったから。なんていうか『彼女よりネコのがかわいいな……』みたいな気持ちになってきちゃった。まずいよね」

と、イロイロ教えてくれました。それから、「年を重ねてだんだん、何を基準にして付き合ったり結婚したりすればいいのかわからなくなってきた。なんていう、待ちの姿勢がよくないのかもね。年が近い、いい人が来てくれればありがたいんだけどね」

と、冷静に自分を分析……という感じで話してくれたのでした。

そう、恋愛の困ったところは「彼女がほしいな」「彼氏がほしいな」と思ったからといって、自分が好きになれる人がパッと目の前にあらわれるわけでもない。それから、その気持ちが叶うかどうかもわからない、というところ。こんなふうに不確かなところが、

「それでも、彼女ってつくらないといけないの?」「恋愛って、しようと思ってできるものでもないよね」「はあ、やれやれ」とため息をつかずにいられないゆえんです。

独立心旺盛で、知的で、精神的にもタフな男性ほど「そこまでして恋愛したいとは」と考えてしまうのもいたしかたがないことといえます。

それでは、女の子はどうなのか? と考えてみましょう。たとえば、恋愛消極派同士でも、 「あまりにも彼氏がいない状態が長くつづくと……精神的にも緊張感がなくなるよね」「面倒くさがりに拍車がかからない?」「身なりにかまわなくなるというか。恋愛してる子に比べてお肌の色ツヤもよくない気がする」「女としてどうかと思うよね?」「あんまり彼氏がいなさすぎても、だんだん不安な気持ちになったりするからフシギ」

というような話をしたりするわけです。

また、恋愛でつらい気持ちにならなくていいぶん、たいしてうれしいこともないというのも、生活にハリがないなあと思ったりもします。いろんな気持ちを経験できないっていうのも、それはそれで残念だなと考えたりするわけです。

恋愛に積極的な女性は、考えなくてもそういったことを何となく本能的に理解していて、「今、好きな人がいるの~」と、楽しく、たくさん恋愛をしているのではないか、という気がしないでもありません。

というわけで、まあ恋人というものは、できれば「いた」ほうがいい。もしくは、いたことがあるほうがいい。恋愛は経験しておいてもいい、という気持ちになるのかもしれません。

男性同士は、友だち同士で個人的な感情のことや、恋愛の話をほとんどしない人が多いと思います。恋愛については、聞かれないから話さないし、対話がないから、友人の意見(良い悪いは別にして)を聞く機会もあまりない、話すのも照れくさいし……という人が多いはずです。

男同士で「そもそも彼女(恋人)はいたほうがいいのか?」問題について話し合うのは照れくさいと思いますが、あなたの周囲にいて信頼できる女性とだったら話し合ってみるのも、自分では思いつかないような意見や発想を知ることができておもしろいと思います。また自分で自分の気持ちを書いてみるというのも、気持ちが整理できたり、時間の経過とともに自分の心境の変化に気づけたりできそうです。

「そもそも、彼女って……」と定期的にこの問題について考えてしまう生真面目な方は、ぜひ一度、この問題についてだれかと話してみてほしい。

そうすると「そうか、そういう考え方もあるのか?」と、気持ちが柔軟になるような意見や、少しだけど納得できる意見が聞けて参考になるのではないかと思います。

恋愛する前に、まずは「そもそも」と考え、意見交換してみる。これもまた、遠回りなようですが、恋愛に近づく一歩です。知り合いの方から、意外で斬新な意見が出てくることを期待しましょう。


酒井冬雪です。本当に……将棋をはじめてみました(※前回参照)。基本、何をやっても「小学生男子か?」と言われる(あきれられる)直情型です。向いてなさそうだ……と思ったけど、おじいちゃん、おばあちゃんに励まされたので、もう少しがんばってみたいです。では、またね。