男性にとって、彼女の親やきょうだいと会う、話をする、というのは、なかなかつらく、苦しく、タイヘンなことかと思われます。しかし、娘を持つ親は親で、
(うちの娘、どんな男の子と付き合っているのかしら?)
(ダメんずっていうのかしら……。まさか、そういうひどい彼氏じゃないでしょうね?)
(もしや、エッチなことなどしているのでは? なんと言って聞けばいいのかわからないし……。心配だわ)
とあれこれ悩んで、胸を痛めているものなのです。
たとえば、私の知人のUさん(女性、45才)には現在大学2年生のキレイな娘さんがおります。その娘さんに最近、はじめて彼氏ができたそうなのですが、先日、娘さんがとうとう朝帰りをしたというのです。
「朝帰りするくらいだから、やっぱり……彼氏と……そういうことをしているのよね。ニンシンでもされたら心配だから、一度その彼をうちに連れてきなさいって言ったら、『どうせ、付き合いを反対するだろうからいやだ。連れてこない』って言うの。それから、2カ月経つんだけれど、家にはあまり帰ってこないし、私はぜんぜん眠れないわ」
と、このように世の娘たちのお母さんは、彼氏の存在をとても心配をしているのです。
「この間、娘が久しぶりに帰ってきて、たまたま着替えてるところを見ちゃったんだけど、カラダのあちこちにあざやキズができてるのよ。顔にはケガがないのよ。暴力を振るわれてるんじゃないかと思って問い詰めたら、やっぱりそうだったの。もう、どうしていいかわからないわ」
けっきょく、両親の必死の説得で、時間はかかったものの、娘さんはその暴力を振るう彼氏と別れたそうです。
その後、Uさんはこんなことを言っていました。
「あーあ、うちの娘も、今度彼氏をつくるときは、Wくん(21才、理系学生)みたいな男の子にしてほしいわぁ」
Wくんというのは、Uさんの勤める医療機器メーカーでアルバイトをしている、Uさんと私の共通の知り合いの男の子です。私はうん、と力強くうなずきました。
「うん、ホントに。Wくんだったら安心だよね。浮気なんて絶対しないだろうし、やさしいし誠実だし、彼女ができたら、何でもいうこと聞いてあげそう」
すると、Uさんの部下の女の子たち(20代前半)が、とても驚いて、
「ええー、あんなチャラ男っぽい外見なのにですか?」
「あの茶髪で、しかもロン毛ですよ。けっこう遊んでそうじゃないですか?」
「っていうか、私たちの前ではあんまりしゃべんないし、何を考えてるかわかんないし」
「しゃべんないのも、仕事場ではそういう面を見せないための手かも」
と、Wくんへの評価があまり高くない……というか、外見がいかにも今どきの若いコなので「遊んでるに違いない」と思っているようなのです。
しかし、Uさんと私のように、親目線(オバサン目線ともいう)で見ると、彼は「超安全パイ(失礼な言い方でごめん)」に見えます。
「だって、あのコって、土日はボランティアで中学校のバスケのコーチしてるのよね」
「そうそう、練習と試合で休日はつぶれて何もできないみたい」
「だいたい、いくら若くたって、飲んで遊びほうけてたら、カラダがなまってるわよ」
「そもそも、フェロモンのかけらもないっていうか、女の子の匂いがまったくしないし」
「ああいう子は、彼女ができたらちゃんと一途になるのよ」
「絶対、彼女にやさしいですよね。でも、ああいういい子に限って、ちょっとイジワルな女の子を好きになってひどい目にあったりするんですよね」
「……ホントにねぇ」
男の子を見る目は、年とともに肥えるというか……。とにかく親目線は、外見の地味さやハデさなどに惑わされないのであります。それではどこを見ているのかというと、やっぱりいちばんは「目」です。
目にはやさしさや愛や誠実さ、もしくはイジワルさや邪悪さや不誠実さがあらわれます。また、女の子より男の子のほうがより性格がわかりやすく目にでる(ウソをつけない性質のせいか)のです。
その上、女性は年を取ればとるほどリサーチ上手になり(相手を油断させるためか?)、どんなに無口な男の子からでも話を引き出すことが可能になります。
「目」を見たときの直感と、高いリサーチ能力……この2つが合わされば、男の子を見て人柄を「見間違う」確率は低くなるというわけです。
なんていうと、これから彼女の親にアイサツをしなくてはならない……。クリスマスやお正月といった機会に、はじめて彼女の家族と会う……という男性は余計にドキドキして緊張してしまうかもしれません。
でも、大丈夫。基本的に親目線(特にお母さん)は「若い男の子にやさしい」のです。 キチンとアイサツができて、食事の仕方がキレイで、いつものように彼女にやさしく接していれば、それだけでじゅうぶん及第点。 親というものは、最悪の場合……金髪でロン毛でピアスの穴が7コも8コも、ヘタをすれば顔にも開いている、パンツ丸見えの腰パンの男の子から「ちゎーっす」と言われるとか、悪いほうへと考えて悲観的になったりしていますから、フツウの……パンツが見えていないちょっと茶髪(もしくは黒髪)の男の子がきてくれれば、それだけでホッとしたりできちゃうのです。
この冬、彼女の親にはじめて会う……という男性は、髪を切って、お風呂に入って、穴のあいていない靴下をはいて、清潔感をかもしだしてしっかりアイサツできれば、それでOKだと思います。あまり気負わずにがんばってほしいです。
酒井冬雪です。個人的には、男の子の金髪・腰パンは、似合っているならけっこう好きかも。考えてみると、私もピアスの穴はいっぱい開いてるし、人のことをどうこう言えない……。妹から「そろそろ年齢を考えて服の趣味を変えるべきでは?」と言われているし、来年はちょっとイロイロ考え直したいと思います。では、風邪など引かないよう、家に帰ったらうがい・手洗いをしてください。またね。